第10話(最終回) ベニアコウ
スカイツリーに東京タワーを重ねても、まだ届かない千尋の海底から、紺碧の海面を割って花開く、真紅の大輪。目にした者を虜にする究極の深海ターゲットが「魔性の紅」ことベニアコウ。ここが深海釣師の終着駅だ。


ベニアコウの釣場

現状遊漁が行われる釣場を紹介。水深は北海道~東北北部で700m、これ以南では1,000m前後にアプローチする「究極の深海釣り」。

北海道浦河~静内沖
青森県津軽海峡
岩手県小本沖
千葉県白浜沖
相模湾(城ヶ島西沖~真鶴沖)
静岡県初島~富戸沖
静岡県御前崎沖(駿河湾)


タックルと仕掛

「スカイツリー+東京タワーの天辺からピンポイントに仕掛を下し」着底まで十数分、巻上は裕に30分以上。殆どの釣場で1日の投入が僅か4回という釣りのスケールとボウズ覚悟のスタンスは正に深海釣りの頂点であり究極として過言ではない釣り。その水深と最大数十㎏にもなるエキストラの存在を踏まえてタックルも「最強&最大級」ながら長時間を要する巻上にはデリケートな部分が存在。単に硬い、強いでは不充分だ。

ロッド

500~700号と最大級のオモリを使用するが、単に錘負荷をクリアするだけでは不充分。水深1,000mの海底を叩くアクション、本命のみならず深海アナゴのアタリすらも確実に伝達する敏感な穂先、数十kgにも達する大負荷に負けない強度と粘り、口切れさせないしなやかさ。これら条件を兼ね備えたグラスチューブラー素材、2m程度の深海専用ベニアコウ・ヘビータックルアコウダイ対応ロッド。
アルファタックル適合モデル
ディープインパクト カイザーR
ディープオデッセイ モデルR
ディープインパクトTERUスタイル RT-Ⅱ

リール…1,000mラインの釣りではPE10~12号1,600m以上のラインキャパシティが必須ゆえ、最大級電動リールが基本。ベニアコウは口周りが脆く荒天時や中間地点での一際激しい抵抗の際に口切れのリスクがあり、巻上力のみならずドラグ性能も重要な要素となり、ミヤエポックの9サイズ以上をセレクト。
糸巻量が多い機種は高切れなどライントラブルに対しては安心な半面、スプールの幅と重さにより糸巻量が少ない機種よりも仕掛の降下速度が遅くなる傾向は否めない。これが釣果を分けたケースも少なからずあるため敢えて9サイズを選択、予備リール若しくは巻替用ラインを持参するスタイルもあり。
北海道や東北北部の水深700m前後では9サイズに10号1,600mで全く問題ない。

仕掛…
関東周辺(水深1,000m)…
幹糸40号3~4m、ハリス24号1.2~1.5m、捨て糸16号1.5~2m、鈎ムツ25~28号の胴突8(~10)本がベーシック。鈎数やスペックが大きく異なる場合は船の指示に従うが、鈎数に関しては

①現状キンメやアコウダイの様に一時に多数が連なるケースは殆ど期待できない
②幅広く探る目的の本数設定ならば幹糸間隔を長く取り仕掛全長を合わせれば同意である

事から「鈎数を抑えて仕掛の着底の早さと捌き易さの優先」が得策と考える。鈎数10本以下なら乗合船でも2組を交互に使う事で一日の釣りに対応可能だが、縄切り禍などのロストを踏まえ投入回数分(通常4組)の持参が基本。 上端にはミヤエポック「ヨリトリWベアリング」等の大型ヨリトリ器具。錘は船宿指定号数を使用するが、700号など製品がない場合は同号同形状の2個を抱き合わせビニールテープを巻き付けて固定。錘の環をPEや補修糸で縛って輪を作り、ここに捨て糸を接続する。

アルファタックル 既成仕掛
DEEPMASTER深海仕掛 ベニアコウ8本枠付

北海道~東北北部(水深700m)…
アコウダイ(メヌケ)仕掛に準ずるスペック。関東周辺の水深1,000m仕掛と比較して各ラインが細め、短めの設定となる。 幹糸24~30号1.2~1.5m、ハリス14~16号60~70cm、捨て糸14号1m、鈎ムツ22~25号の胴突5~8本。 沈船根にアプローチする船では「幹糸下半分はハリスと同程度の号柄とし根掛り処理に配慮」を推奨するケースもあり。仕掛上端にはミヤエポック「キャラマンリングⅡ型」等のヨリトリ器具。錘は素材指定がない場合、海底に残っても環境負担の少ない鉄製「ワンダーⅠ」を推奨する(特に沈船ポイント)※ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。

集魚ギミック

発光体は有効なギミックだが、過剰なアピールはソコダラ類を筆頭としたエキストラを先に引き寄せるので「匙加減」を意識する。水中灯はミヤエポック「フラッシュカプセルLE-S夜光」を基本に、宙層での横槍(シマガツオやアブラソコムツ)が顕著な場合は発光パターンが選べるルミカ「クアトロ 」のレッド(赤色発光)を選択。ヨリトリ器具直下に「万一本体が破損しても仕掛の回収には影響のない」ブランコ式でセットする。
空鈎の場合はヤマシタ「パニックベイトアコウL」やニッコー化成のイカゴロエキス配合「スーパータコベイト6インチ」を鈎1~2本置きに配す。ヤマシタ「マシュマロボールL」は鈎サイズ(重量)を考慮し2個で使用。タコベイトや深海バケのカラーとリンクさせるのが基本。

深海バケ…藤井商会「フジッシャー毛鈎」は青紫、橙が鉄板カラー。他に濃緑や白(蛍光紫)、北方海域では紅色(赤)やピンクも必需。関東周辺では筆者がベニアコウ用に開発を依頼したムツ28号、北海道~東北北部ではムツ22~23号がお勧め。

エサ…エサ持ちとエキストラのアプローチを抑える意図から、スルメイカの短冊が基本。16~20サイズ(8kg 箱に16~20杯の最大サイズ)をツボ抜きして胴を開き、縦方向に5枚目安でカットした大振りの短冊が基本。グルタミン酸をタップリ振って一昼夜冷蔵して味付け&余分な水分を除き、頭側縁の中心線上端にチョン掛けで使用。他に小型ヤリイカ一杯掛け、サーモン皮の短冊など。
但し岩手県小本沖の沈船根ではやや小振りなサンマの半身(船上で下して使用)が鉄板餌。イカ短冊は△とされる。

疑似餌…ニッコー化成「ロールイカタン150cm」を25~30cmにカットし単体で使用。全8色からヒットカラーを見付け出す楽しみも有り。

その他のギミック
サメ被害軽減装置 「海園」

サメやエイの電気感知器官であるロレンチニ瓶(ロレンチーニ器官)を電流で刺激し、回避行動を促す器具はこの釣りにも有効。製品の耐水圧を踏まえて巻上開始後残りライン700mを切った所で「海園Ver.2」のカラビナを道糸にセット(引っ掛ける)して海中に投入するのがお勧めだ。
また取込時には巻き上げた「海園Ver.2」を再度海面下に沈めた状態にして仕掛を手繰る事が船縁でのサメ禍回避に繋がる。

磁石板
回収した仕掛を順序良く並べ、移動中若しくは次回投入後に掛枠に巻き込めば2組交互の使用で1日の釣りが可能。持参の場合は鈎数に応じた長さをセレクトする。



実釣テクニック
関東周辺では水深の関係もあり一日4(~5)投が基本だが、一部短いスパンで7~8回の船も。
仕掛が短くやや水深の浅い東北~北海道では6~7投が通常。リールのドラグは糸巻フルの時点でロッドを介さず直接スプールからラインを引き出す状態で3kg程度に設定。ウネリで船が上がった際に巻上げがスローになる位がベストチューニングだ。

投入は船長の合図に従い艫、若しくは舳先より順。掛枠使用が基本だが、船や釣人の技量により「船縁に仕掛を並べて」が可能な場合もあり。
何れのケースも仕掛が全て海中に入るまでリールはフリーにせず、クラッチを繋いでおく。ヨリトリ器具等の重量で道糸が先に海中に入って起こる手前マツリや仕掛投入直後のバックラッシュを防止する配慮だ。
ヨリトリや発光体は竿先でブラブラさせず、手元まで引き寄せておく事で枠から放出された鈎が引っ掛かるなどのトラブルが防げる。ヨリトリ器具ホールドクリップなどを活用しスムーズな投入を心掛けたい。

仕掛が海中に入った時点でスプールをサミングしつつリールをフリーにし、バックラッシュに注意しながら海底まで錘を落とし込む。水深1,000mでは着底に10分~15分程度を要する。途中船が前進、後退する事で宙層でラインのリリースがストップ又はごくスローになる場合があるが、そのまま待てばスプールが回り出しラインのリリースは再開される。但し糸フケが出たままでストップ、若しくは極端に遅くなった降下速度が維持される場合はアブラソコムツやバラムツ、シマガツオが鈎掛りしたサイン。海底まで仕掛が下りずオマツリの原因にもなるので早々に巻き上げる。

アブラソコムツやバラムツは20kg超でも当初は比較的スムーズに上がって来るが海面に近づくに従い激しく抵抗。海面でも大暴れするので、処理には充分に注意する。
無事錘が着底すればラインは大きくフケる。ラインの弛みを最小限にすべく錘が海底を離れるまで最高速を設定し瞬動ボタンで巻上げる。電動で巻くのは錘が海底から離れる際に竿先の曲がりが一瞬大きくなり、やや戻るのを的確に視認するため。最高速で巻くのは短時間で糸フケを除く意図に加え、錘が海底を離れる瞬間にモーター音が一瞬高くなるのを聴覚で確認できるから。

錘が海底から離れたらクラッチを切って再度着底、1~2m程度巻いて船の上下で錘が海底をトントンと叩く状態を維持してアタリを待つ。
的確なロッドセレクトならば他と一線を画す本命のアタリはもちろん、エキストラのアプローチもリアルに伝達される。ベニアコウのアタリは明確でシャープな「キレ」があるがムネダラやキタノクロダラは本命と同等、若しくは上回るサイズでもやや「鋭さ」に欠け、相模湾の最多エキストラであるイバラヒゲは前出2種のアタリを小さくしたイメージ。ホラアナゴ類は悪戯するような煮え切らない動きとして竿先に現れる。数十kgのアブラボウズはロッドを海面に突き刺し、少なくとも10m以上のラインを引き出して行く。

アタリ後の操作は仕掛は送らずに立てたまま、ポイントの潮が効いていなければラインを張り気味で効いているならやや弛み気味(錘を底に着ける)、錘を着底させ船の移動分ラインを送る…など、船や釣場、潮況より指示が異なるため、必ず船長に確認する事。

巻上げは船長指示に従い順番、又は一斉が通常だが、本命確信やアブラボウズのアタリは船長に一声掛けて巻上OKの船もあり。ヒット時の巻上は中~中低速が基本だが、根掛りなどで錘の無い場合はオマツリを回避すべく、若干スピードアップする。開始後暫くと、水深の中間地点周辺で巻上が滞るような抵抗が見られれば期待大。
「浮かぶ魚」が鈎掛りしていれば海面に近付くに連れてラインの進入角度は次第に浅くなり、巻上げが終わって手にしたラインに錘の重量は感じられず、程なく仕掛が浮き始める。

最大20kgを超すムネダラは海面まで上げても腹を返さないが、数㎏~大型は十数㎏になるキタノクロダラを筆頭にイバラヒゲ、ヒモダラ、オニヒゲなどのソコダラ類は何れも「浮く魚」。慣れるとアタリの時点でおおよそ見当が付くとは言え、この時点ではまだ100%安心も、否定もできない。期待と不安が交差する瞬間だ。

仕掛の流れる先を見やる内、海中に白っぽい影が見えてきたなら本命。白が橙、そして緋色と次第に濃くなり、海面を割った瞬間に鮮やかな紅色が弾ける。上潮の早い際には数十m先に浮かび上がる事も。幾度と無くベニアコウを釣り上げたベテラン釣師や船長ですら興奮するクライマックスシーンを存分に堪能しよう。
紺碧の海面に咲いた大輪を愛でつつ、仕掛を磁石板に並べながら、ゆっくりと手繰り寄せる。船縁が高い場合はギャフを下顎に打つが、手が届くなら親指に指サックをはめ、「魔性の紅に敬意を表して」ハンドランディングするのが筆者流「TERUスタイル」。

次回投入は別仕掛で行い、並べた仕掛は鈎先の鈍りやハリス・幹糸・捨て糸の傷をくまなくチェック。必要ならメンテナンスして掛枠に巻き込む。着底までに10分余り、巻上は20分以上。時間はタップリある。「後悔先に立たず」とならぬよう、抜かりなく行いたい。
一回流したイカエサはそり返って「泳ぎ」が悪くなる。投入毎の交換が理想だ。何れにせよ、一本獲れば「勝ち組」。それだけの価値とロマンがこの魚にはある。


ベニアコウに役立つ!?ディープマスターのワンポイント

魔性の紅への最短コース「郷に入っては郷に従え」
「職漁専門の場所はガリガリの荒根も有るけれど、遊漁で攻める3箇所は比較的根掛りが少なく釣り易い場所」とは城ケ島西沖でベニアコウを狙う船長の弁。ここは職漁でも「下から3本までの鈎」がメインとなると言う。故にアプローチは仕掛を張り過ぎず常に錘が底を叩く、若しくは引き摺る位のイメージでアタリを待つ。
当日筆者が手にした8,5kgもこの釣法での一番下鈎。同じ相模湾でも「仕掛を立てて上を意識」と対照的な指示の釣場、船長もあるが「郷に入っては郷に従え」こそ緋色の大輪への最短コースなのだ。

「真鶴沖のベニアコウは上を釣れ!」
神奈川県真鶴沖では「仕掛を立てて、高目を釣る」カケアガリポイントのオキメバルやキンメダイ釣りを髣髴させるスタイルを指示する船がある。捨て糸を4.5mと長く取り更に底から1m以上切った状態でアタリを待つ。
アタリ後は仕掛を立てたままの状態で追い喰い&巻上の合図を待ち、この間に糸フケが出たら順次巻き取る。低いタナを釣ったり、仕掛を送り込んだりすると「クロッチョ」ことイバラヒゲがズラズラと連なるので要注意。捨て糸が短い場合はそれなりの高さを維持する(底を切る)事が必要となる。

水中灯は2種用意すべし。
暗黒の超深海を探るベニアコウ狙いに、水中灯は必需品。超深海=最大級と考えがちだが、筆者が鈎数8~10本の仕掛に使用するのは基本的に「フラッシュカプセルLED-S/夜光」。これ以上のサイズは意図的にアブラボウズを狙う以外はエキストラが多くなる傾向ゆえ使用しない。
因みに春先の相模湾にはシマガツオが回遊。S/夜光でも、仕掛を止められる事がしばしばある。水中灯を外すのが最もイージーな対処だが筆者愛用のフジッシャー毛鈎やマシュマロボールが威力を発揮し切れなくなる可能性があり、光源無しは極力避けたい。
先ず「フラッシュカプセルLED夜光」を同程度光量の赤色発光ルミカ「クアトロ」レッドに交換。状況を踏まえて発光パターン(高輝度点滅・ゆらぎ回転・ホタル点滅・常灯の4種。アピールが強い順)を選択して宙層の厄介者に対処する。


南房のベニアコウは蛍ムラベイトが◎
千葉県南房のベニアコウ釣りでは以前から「橙色のタコベイト」が秘策とされてきたが、近年は蛍ムラが◎で赤色が○、橙はイマイチの△で、夜光はソコダラばかりでNGだと和田港の船長。
「でも、喰わない時は全く喰わない」ので全鈎に蛍ムラを配すのは危険だ、とも。この辺りは深海バケと共通する部分。タコベイトは2~3本おきに実績カラーをメインに配色し、深海バケ同様に状況に応じたカラーチェンジや増減が得策だ。

鉄板餌はサンマ半身。関東とは異なる岩手県小本沖
サンマがマダラの餌として鉄板中の鉄板なのは第3話でも解説したが、同目に分類されるソコダラ、チゴダラ類もこの餌には極めて反応が速い。マダラの項で記した鈎掛けなら水深1,000mを上げ下げしても餌落ちしない事は実証済みでサイズ的にもベニアコウにマッチするが、関東周辺ではエキストラのアプローチが早過ぎて選択肢から除くのが通常だが。

例外なのが岩手県小本沖。「ここではサンマの半身が一番、イカはあまり良くない」と船長が断言する沈船根は関東周辺に比べソコダラの数が極めて少なく、強い臭いと表皮の光でアピール度の高いサンマ餌が圧倒的優位。船上で用意された「鮮度の良いやや小振りのサンマ」を3枚に下して使用するのが基本(表皮の輝きが良いとされる)だが、味付加工を施せば店舗購入のサンマでも遜色ない(以上の!?)釣果が期待できる。但しサイズ感は船用意の半身と合わせる(大き過ぎたら整形する)のがベター。
仕掛や釣法も同様だが、セオリーや自己の経験に固執せず「ご当地スタイル」をベースに据えた上で更なる工夫を施す事が重要だ。


ベニアコウ料理

アコウダイより遥かに脂が乗った身肉は刺身より鮨が喜ばれる傾向。因みに生食には大型よりも身の肌理(きめ)が細かい小型(3~4kg)がベター。 鍋(水炊き)も絶品。身肉の脂肪でポン酢がドレッシング状態になるので「替え」を用意しておく。 煮付け、焼き物、漬け物(味噌漬・粕漬・さごはち漬等)も合う。何れも蕩けるような脂肪の甘さとメヌケ類共通のしっかりした白身が絶妙のコンビネーション。尾の周辺は皮付きの唐揚も美味。大型魚ゆえ捌くのが大変と思いがちだがアコウダイよりも骨がかなり柔らかく大型を「兜割り」するのもそれほど難しくない。

握り鮨3種盛
材料:柵・鮨飯・濃口醤油・味醂・山葵・練辛子・天然塩・スダチ
調理

  1. 硬めに炊き上げた飯に鮨酢を合せ、鮨飯を作る。飯台に広げ、冷ます。
  2. 柵は鮨ネタ用に切って身を3等分する。
  3. 1/3は山葵で普通に握る「握り」。
  4. 1/3は煮切り(濃口醤油と味醂を1:1で合わせて加熱、沸騰直前に火を止めて冷ます)に数分漬けて握るのが本式だが、醤油と味醂を同割した即席の割り醤油でも可。山葵で握れば「漬け握り」、辛子なら「島寿司風」。
  5. 残り1/3は表面を焼いた「炙り」。専用のガスバーナーがあれば握りの表面を炙るだけで完成。焼き網やテフロンフライパンを使うなら表面をサッと焼いて握る。天然塩を振り、スダチを絞って食す。

西京漬け
材料:切身/西京味噌/味醂/日本酒/塩
調理

  1. 切身に軽く塩を振り、3時間冷蔵する。
  2. 西京味噌500gに酒・味醂各50ccを加えて練り上げ、味噌床を作る。
  3. 切身の水気を拭き取り、味噌床に漬け込む。直接漬け込んでも構わないが、味噌・ガーゼ・身・ガーゼ・味噌の順に挟んで漬け込めば味だけが染込み、焼く時に味噌を落とす手間が省ける。
  4. 2〜3日漬けると食べ頃。味噌床から出して(直漬けは味噌を洗い落とし、水気を拭いて)1枚ずつラップに包み、冷蔵、または冷凍保存。

煮付け

材料:切り身や兜の半割を鍋サイズや供する状態を踏まえて選択/濃口醤油/日本酒(又は味醂)/砂糖/粗挽き黒胡椒(根生姜でも可)
調理

  1. 醤油1:酒(又は味醂)4:砂糖1/3を合せて良く混ぜ、粗挽き黒胡椒を加えて強火で煮立てる。煮魚の汁には根生姜の薄切りを加えるのが一般的だが、本種やキチジ(キンキ)、アブラボウズなど脂の強い魚には粗挽き黒胡椒の相性が良くお勧め。味醂を使う場合は砂糖の量を減らすが、各調味料の割合はあくまで目安。魚の脂に弾かれない濃い目の煮汁を意識するが、最終的には各自の好みで調整する。煮汁は多目の方が焦げ付きなどの失敗が少ない。
  2. 汁が煮立ったら灰汁を掬い、魚を入れて煮る。
  3. アルミホイルで落し蓋をする。煮汁が上側まで回り、かつ吹き零れない様に火力を調整。灰汁を除きながら10分程煮る。調理時間は魚のサイズや形状により調整する。
  4. 崩さないように皿に盛付けて供する。

ベニアコウという魚
本項では「日本産魚類検索 全種の同定 第三版」の分類に従い「スズキ目メバル科のオオサガとサンコウメヌケの2種を指す」として話を進めるが、現状両種は微妙なポジションにあり、将来的には同一種とされる可能性もあ

オオサガ
Sebastes iracundus
国内の分布:北海道オホーツク海沿岸、北海道~千葉県銚子沖の太平洋沿岸

サンコウメヌケ
スズキ目メバル科 Sebastes flammeus
国内の分布:北海道~茨城県の太平洋沿岸

※「国内の分布」は文献に因るが、筆者は千葉県銚子以南~静岡県駿河湾まで自身の採捕、和歌山県沖では釣果画像で「ベニアコウ」の棲息を確認済み。
●水深700~1,000mに分布し大型は10kg以上に成長。その味覚と希少性からメヌケ類中最高値で取引される超高級魚。現状これより深い海域に遊漁のメイン足り得る魚が存在せず、名実共に「究極の深海ターゲット」と呼ぶに相応しい魚。

千葉県以南ではベニアコウの呼称が一般的だが、北海道~東北ではマメヌケ若しくはコウジンメヌケ(荒神メヌケ)と称される。全身が一様に赤く定型・定位置の斑紋はない。ただし「墨」と称される不定形・不定位置の黒斑を有する個体があり。額棘がなく眼窩下縁も無棘。現状2種の識別点とされるのは口腔内の色。白ければオオサガ、黒ければサンコウメヌケとされるが筆者がこれまで北海道から駿河湾まで複数の釣場で多数確認してきた「ベニアコウ」に口腔内の黒色がやや薄い物はあっても「白い」は一個体もない。

本来はウスメバルやアコウダイの様に群れを成すが、現在遊漁可能なフィールドは「ボウズ覚悟」「型を見れば御の字」が実状。特に10kg級は「幻」的存在と言える。
オオサガはそのサイズや棲息水深などから長らく「ベニアコウ」であり、サンコウメヌケは水深500~600mの岩礁で漁獲される希少種とされてきたが、この定説が覆されるのは04年5月。筆者が静岡県石廊崎沖で釣り上げた12kgのベニアコウが「日本産魚類検索第2版」に基づき、研究者よりサンコウメヌケと同定される。「決め手」は口腔内が黒かった事。「幻の魚」サンコウメヌケを釣り上げた事は少なからず嬉しかったが、同時に釈然としない部分も。

先ずは背鰭の黒斑。古い図鑑には背鰭に1黒斑のあるサンコウメヌケの写真や絵が掲載され、これが特徴でもあると表記されているが、筆者の個体には黒斑は無い。この点は「近年必ずしもこの画像は使用されていない」とされ、確かに新しい図鑑は黒斑の無い個体の画像も使われている。黒斑に関しては分類の大元となる「タイプ標本」が背鰭に「墨」を有する個体だったためで同定には意味を成さないと知る。

次にサイズと採集水深。文献と比較するとこの個体はあまりに大きく、1,000m以上は「倍」も深い。この点も「サイズや棲息水深はあくまで目安」とされる。これまで見て来た魚達の事もあり、ここまでは納得するが、最大の「引っ掛り」が「オオサガ」の存在。93年以降、現在までに筆者は北海道から駿河湾まで、多くの釣場と市場・店舗でチェックしてきたが、口腔内の「黒味」が若干淡い物こそあれ「白い」個体は皆無。文献に従えば「ベニアコウ」は全てサンコウメヌケとなるが、ならばオオサガは何処に?
糸口を探すべくメヌケ漁師を訪ねる。「ホンメヌケことサンコウメヌケは大きくても3kg。水深500~600mでしか獲れない。色はコウジンメヌケことオオサガと似ているが、金、又は銀掛っている。目は飛び出さない。腹の中は黒い。」これは従来の文献と概ね一致する内容。

ここで筆者が仕掛ける。南房総白浜沖の水深1,000mで採集した「目が抜けていない」6kgの個体画像を取り出し「これはどちらですか?」と問う。先の話に基づけば、サンコウメヌケとしては有り得ない水深とサイズ。しかし水深とサイズを伏せた魚単体の画像ではその姿のみから判断するしかない。果たして。漁師は「これはサンコウメヌケ」と断言する。
そして仮説が立つ。水深1,000mの「ベニアコウ」は遊漁の歴史が長い南房総でも「若魚は何処にいるのか」が謎とされて来た。水深500~600mに棲息する、とされるサンコウメヌケこそがオオサガの若魚ではないのか。

そんな折。京都大学の甲斐嘉晃博士より、ロシアの魚類学ジャーナルに「サンコウメヌケはオオサガのジュニアシノニム(異名同種)である」とする論文が掲載されたとの情報が。仮説は正しかったのか。この情報は同年「日本魚類学会」HPにも掲載されたが、論文が発表されたからと言って、それが全て認められるとは限らない。当時から「遠からぬ将来、魚類検索第三版が刊行される」との噂が有り、「国内最高権威」のジャッジを待つ事とした。

予定から遅れる事2年の13年3月。待望の「日本産魚類検索 第三版」が手元に届く。真っ先にカサゴ目を探すが…見つからない。スズキ目に変更されたのだ。更にメヌケ類は新設されたメバル科に「移籍」している。期待と不安が交錯する中、「メバル科」のページをめくる。果たして「ジャッジ」は…
「現段階の研究ではまだ両者が同種である、とは言い切れないため、従来のまま「オオサガ」「サンコウメヌケ」の2種を有効とする」の内容。統一を期待する半面「決着付かず」の可能性も少なからず有りそう、と覚悟はしていたが…今後の研究に期待したい。

ベニアコウ釣りのエキストラ達
メインターゲットも大型だが、脇を固めるエキストラも大型中心。アブラボウズ・バラムツ・アブラソコムツの3種は第9話「アブラボウズ」編を参照頂くとして、本項ではタラ目の7種とミズウオの「他の釣りでは滅多にお目に掛れない」魚たちを紹介。

イバラヒゲ
タラ目ソコダラ科 Coryphaenoides acrolepis
国内の分布:北海道オホーツク海沿岸・北海道~相模湾の太平洋沿岸・土佐湾
●相模湾のベニアコウ釣りで最も数多く釣れるソコダラ。体は一様に黒く、各鰭、口腔、鰓腔も黒い。 腹鰭8~9軟条 「またクロッチョだよー」悲鳴にも似た?ボヤキの声を追いかけてポン、ポン、ポン!と浮き上がる漆黒の魚体。いわゆる「黒提灯」に船長も苦笑い。神奈川県ではトウジンを筆頭としたソコダラ類を「チョウタロウ」若しくは「チョウタ」と呼ぶ地域があり、ソコダラ類でも特に「色黒」のイバラヒゲは、黒いソコダラ=黒チョウタロウ、略して「クロッチョ」。

相模湾ベニアコウポイントで最も多く鈎掛りするソコダラだが、同じベニアコウ釣場でも駿河湾ではソコダラ類は後述のオニヒゲ、ヒモダラ、キタノクロダラが少々程度。本種に至っては「見た事無い」状態だが、19年にNHKで放送された駿河湾2,000mの海底映像には本種がソコボウズと共にウヨウヨ群れる様子が。深海はまだまだ未知だらけと再認識させられた次第。
画像は外観のやや異なる2個体。一方は背鰭が長くやや違和感を感じるが、実物を同定した京大の甲斐嘉晃博士より「確かに背鰭が長いが、イバラヒゲの背鰭長は頭長の60-93%程度の変異がある。両個体とも頭長より背鰭が短く、別種ではない」とのコメントを頂いている。

オニヒゲ
タラ目ソコダラ科 Coelorinchus gilberti
国内の分布:北海道~土佐湾の太平洋沿岸・東シナ海大陸棚斜面部・九州~パラオ海嶺
頭部下面は無鱗。丸い肉質皮弁や黒色絨毛状皮弁を有す。
●ベニアコウ釣りで時折姿をみせる「灰黒色のトウジン」。頭部下面は無鱗。水深700m以深に多いが、福島県沖450mでも採捕経験あり。
鼻の尖ったトウジン属は国内で24種が報告されているが何れも外観が酷似。専門家も魚体写真だけでは正確な同定は困難と言われるが、本種は特徴的な「黒い」体色から比較的識別し易い種類。筆者がベニアコウ海域で遭遇した「鼻の尖ったソコダラ」は南房総で採集した「テングヒゲ」Caelorinchus productus(頭には堅くて強い隆起縁があり突出する吻の先端に鋭い棘を有す。体色は灰褐色、腹部は淡く青みを帯びる)一個体以外、全て本種。

ムネダラ
タラ目ソコダラ科 Coryphaenoides pectoralis
国内の分布:北海道オホーツク海沿岸・北海道~房総半島の太平洋沿岸・相模湾
●ベニアコウ釣りのソコダラ類では最大サイズ(大型は20kg超)の通称「怪獣」。体色は灰褐色で各鰭は黒い。口腔、鰓腔も黒く縁辺部は灰色。紐状の腹鰭軟条がない、下顎歯が1列(ヒモダラ2列)、背鰭軟条数7~9本(ヒモダラ12~14本)、腹鰭軟条6~8本(ヒモダラ9~10本)で近似種のヒモダラと区別される。
南房や東北の「お約束」として過言ではない本種。小で数kg、通常10kg前後。筆者が遭遇した最大は20kg超の、正にヘビー級。俗称の由来は、鋭い歯が並ぶその顔から一目瞭然だが、他のソコダラ類は釣り上げると鰾(うきぶくろ)が膨張し殆どの個体で眼球が突出するのに対し、本種は1000気圧近い変化を物ともせず、悠々と深海へと泳ぎ去るタフネス振りを見せ付ける。この辺りも「怪獣」たる所以か!?

ヒモダラ
タラ目ソコダラ科 Coryphaenoides longifilis
国内の分布:北海道オホーツク海沿岸・北海道~土佐湾の太平洋沿岸
●紐状に伸びた腹鰭外側の1軟条が和名の由来。胸鰭が長い。体は暗褐色。各鰭は黒褐色で、口腔、鰓腔は黒い。ムネダラとは紐状軟条の他、下顎歯列(本種2列、ムネダラ1列)と背鰭軟条12~14本(ムネダラ7~9本)、腹鰭軟条9~10本(ムネダラ6~8本)で識別可能。
ムネダラよりもやや小型種で数も少ないが、糸状に伸びた腹鰭軟条で識別は一目瞭然。ムネダラと同属ながら釣り上げた際には鰾(うきぶくろ)が膨張、他のソコダラ同様に浮き上がってしまう。

キタノクロダラ
タラ目チゴダラ科 Lepidion schmidti
国内の分布: 東北地方太平洋沖・房総半島沖・相模湾・三重県浜島
●1m、十数kgになる大型種。主にベニアコウ釣りで姿を見せる「超深海のお化けドンコ」。神奈川県三浦では「シゲダラ」の俗称も。小さな第1背鰭の鰭条が糸状に伸びる。腹鰭は糸状に伸びる2軟条。ソコクロダラと酷似するが、臀鰭軟条数39~42とソコクロダラより少ない点、上顎の鋤骨歯帯が逆V字若しくは三角形である点で識別される。

ソコクロダラ
タラ目チゴダラ科 Lepidion inosimae
国内の分布: 相模湾~土佐湾の太平洋沖・東シナ海・硫黄島海嶺

●キタノクロダラと酷似するが、臀鰭軟条数が49~55と多い点、上顎の鋤骨歯帯が正円形である点で識別される。相模湾以南に分布し1m、十数kgになる大型種。 特徴的な「糸状に伸びる第1背鰭条」を含め両種のルックスは酷似しており、識別ポイントは臀鰭の軟条数。糸状の背鰭を除けば外観は「ドンコ」ことチゴダラそのものだが、そのサイズたるや全長1m以上、十数kgにもなるヘビー級。本種が海面に浮かんだ姿に「アザラシ」を連想したと言う仲間も。若魚は水深500mのアコウダイ釣りでも採捕経験があるが基本水深1,000mでのエキストラ。数はイバラヒゲやムネダラと比較するとかなり少な目。

「この魚が釣れれば、本命も出る」確率は高いが、相模湾の古老漁師によれば「道具(仕掛)はポイントの近くには入っているが、『真っ芯』からは外れている証拠」とか。そのサイズからもベニアコウ並に明確なアタリ見せ、途中の抵抗と最後はガスが溜まって浮き上がる…本命同様のシチュエーションで釣人を「その気」にさせてしまう罪な奴でもある。真紅の大輪を夢見た釣人が褐色の大提灯を目にした時の落胆具合、心中お察しする。

カナダダラ

Antimora microlepis
国内の分布:北海道~相模湾(宮城県以南は少ない)
●体表は剥れ易い黒色粘膜に被われる。吻は三角に尖り、扁平。下顎に短い1本の髭を有する。第一背鰭は小さく、糸状に延長。尾鰭後縁が顕著に窪む。
初夏の相模湾ベニアコウ船。帰港後に同乗者から「キタノクロダラの子供を釣った」なる報告があり、確認したのが40cm程の本種(画像・褐色の個体)。
「釣った時は真っ黒だったのにヌメリが剥がれたら茶色くなった」の言葉通り、背鰭周辺には僅かながら残る黒い粘膜。キタノクロダラやソコクロダラは名に「黒」の字を冠してはいるが、釣り上げた時から体色は茶褐色。決して「真っ黒」ではないし、体表の粘膜が剥れて「黒から茶」に変色する事はない。

この個体で最も特徴的だったのは折り紙の「河童(or蛙)の顔」を髣髴させる、三角に尖った平たい吻。他の特徴と併せ本種と知れたが、どの文献にも「体表が黒い粘膜で覆われる」の記述は一切なし。

「釣れた時に声を掛けてくれれば良かったけどなぁ。」とチョッピリ落胆したが、この個体が「ズル剥け」でなかったら同定は難航したかも。

2年後、船長の「カナダダラが上がりましたよ!」の声に血相を変えて?駆け付けた筆者に釣人は「そんなに貴重な魚ですか?」と怪訝な顔。全身を包む漆黒の粘膜は「あの魚」と同種とは思えない程ながら、デッキに触れると簡単に剥れ落ちて墨状に付着。
これはマズいと撮影を早々に切り上げ、ビニールに包みクーラーへ。この日はもう1個体採捕が叶い「本命船中型見ず」もどこ吹く風の上機嫌で帰港した次第。

2個体は京都大学に寄贈し、㈱エンターブレイン発行の「釣魚1400種図鑑海水魚・淡水魚完全見分けガイド」にも画像掲載。図鑑著者の小西英人氏は解説執筆に際し複数の研究者に「黒い粘膜」の情報を求めるも返答は「これまで目にした『新鮮なカナダダラ』は全て底曳網採捕で茶色の個体。全身が黒い事は全く知られておらず、大変興味深い」なる内容。小西氏が納得できる回答は得られず、図鑑は「釣り上げた個体は全身が真っ黒である」の記述に留まった。

かつてロケで深海底曳き漁船に同乗した際、船に引き上げられた魚はどれも泥まみれ。勢い良く放水して汚れを洗い落としても殆どの魚は鰭がボロボロ、中には鱗が全て剥がれ落ちている種も。手指で触れただけでも粘膜が剥離してしまう本種は底曳網では「黒色」が全く残っていないであろう事は容易に想像できる。専門の研究者にも知られていなかった本種の「真の姿」を公開できた事は「ディープマスター冥利」に尽きるが、証明し切れていないのは何とも残念だ。

ミズウオ
ヒメ目ミズウオ科 Alepisaurus ferox
国内の分布:北海道南岸~南日本。
●駿河湾冬~初夏の打ち上げ魚(弱ったり、死んだりした深海性の魚が波打ち際や浅瀬で発見される)として知られる。「縄切り魚」の代表格であり、本種が釣れた際は以降もハリスや幹糸、ライト周辺のライン切れを覚悟する必要がある。
バショウカジキを髣髴させる巨大な紺色の背鰭とこれぞ深海魚、と言わんばかりの鋭く大きな牙状の歯。インパクトの大きいルックスは他の魚と見間違える事は先ずない。背鰭の後ろに脂鰭を有する。

水深900~1,500mに棲むが夜間は上層に移動・摂餌する。面構えのマンマの貪欲魚。その胃袋からは小魚、イカはもちろん、プラスチック片まで確認されている。そんな魚故、共食いもごくごく普通。静岡県富戸沖では釣り上げた本種が全く同じ形状をした15cm程の幼魚を吐き出した。
細長く身が少ない事に加えて身の殆どが水分で煮ると身が溶けて可食部分がなくなるとも。当然食用にならず商品価値は0。市場や店頭に並ぶ事もないが世間一般で知名度が高いのは、チョウチンアンコウやリュウグウノツカイ同様に図鑑や百科事典、博物館で「深海魚」の代名詞的存在として掲載・展示されているから。
インターネット等で見られるダイバー撮影の「浅海を泳ぐ本種」の多くは冒頭に述べた「打ち上げ魚」と思われるが、かつて神奈川県真鶴沖のコマセダイポイント(水深数十m)の縄切り魚が本種だった事も。「潮が極端に暗い」状況では摂餌に浮上した個体が日中も深海に戻らず浅所に居付くケースもある様だ。


第9話 アブラボウズ
30kgではまだ小型。大型は100kgを超す深海釣り最大級ターゲットは千尋の底から引き上げても腹を返さぬスーパータフネス。時に一時間にも及ぶ、脂ギッシュな巨大魚との手に汗握るビッグファイトが待っている。 近年スーパーディープジギングのビッグターゲットとしても注目されるが、本項では大型電動リールで最大級を狙う専門の釣り・アコウダイ(メヌケ)やベニアコウ船で混じる本種を狙う釣り・筆者提案ライトタックルの餌釣り3パターンを解説してゆく。


アブラボウズの釣場

専門の釣船が出る地域は限られるが、本項では「アコウダイ・メヌケ・ベニアコウ船で狙える」も含めて紹介。
は専門狙いの船がある釣場。

ヘビータックル
岩手県大槌沖
福島県小名浜沖 
茨城県平潟沖 
千葉県銚子沖~片貝沖
千葉県白浜沖
千葉県洲ノ崎沖
東京都大島沖
神奈川県城ヶ島沖
神奈川県相模海丘(大磯沖など)
神奈川県真鶴沖
静岡県熱海沖~富戸沖
静岡県石廊崎沖 
静岡県浜名湖沖
愛知県 大山沖
三重県大王崎沖
和歌山県串本沖~白浜沖

ライトタックル
茨城県平潟沖
静岡県富戸~八幡野沖 


タックルと仕掛

ヘビータックルの専門狙い
2021年現在、アブラボウズ専門の乗合船は福島県小名浜、茨城県平潟、静岡県弓ヶ浜の3箇所(3軒)で行われている。水深は500~600mがメイン。

ロッド

大型錘+ギミック類使用でも的確に底を叩きベイトを躍らせるアクション、スムーズに喰い込ませるトップと巨大アブラボウズのパワー&重量にヘタらないバットパワーを兼ね備えた錘負荷350~600号表示の2m程度、ヘビータックルアコウ・ベニアコウ対応の深海専用モデルがベストマッチ。仕掛スペックが泳がせ釣りに準ずる弓ヶ浜ではウインチ泳がせロッドの流用も有り。

アルファタックル適合モデル
ディープインパクト カイザーR
ディープオデッセイ モデルR
ディープインパクトTERUスタイル RT-Ⅱ
ウインチ泳がせ流用…ヘッドクォーターウインチバウト195

リール…高強度PE10~12号1,000m以上のキャパシティを持つ大型電動リール。ミヤエポックのコマンドZシリーズ9~15番、D社3000番。ヘビータックルの専門狙いでは24Vモデルが主流。

仕掛…
小名浜・平潟…胴突2本鈎

ハリス30号1.2~1.5m、幹糸50号3~4m、捨て糸は14号1.5m。鈎はムツ25~28号。錘は鉄製2kg。
仕掛上端にはヨリトリ器具。

弓ヶ浜…胴突1本鈎
ハリス40号3m、先糸60~80号4~5m、捨て糸は18号3~4.5m。鈎はムツ30号。錘は鉄製2kg。
先糸上部にゴムヨリトリ(5mmΦ以上)併用が船宿推奨。

集魚ギミック
発光体は極めて有効なギミック。水中灯はミヤエポック「フラッシュカプセルLED-DX夜光」もしくは「LED-S夜光」。空鈎の場合はヤマシタ「パニックベイトアコウL」やニッコー化成のイカゴロエキス配合「スーパータコベイト6インチ」を配す。ヤマシタ「マシュマロボールL」は2個で使用。タコベイト、深海バケのカラーとリンクさせる。鈎に一粒刺し通すニッコー化成「激臭匂い玉」は10Φのイカゴログローがお勧め。

深海バケ…筆者は紫が圧倒的実績を誇るが、橙、ピンク、濃緑へのアプローチも有り。2本鈎では下鈎紫、上鈎橙を基本とし状況に応じて差替える。

エサ…中型スルメイカ・ヤリイカの一杯掛け、大型スルメイカ半割りなどのビッグベイト。スルメイカ半割りは鮮度の良い生イカを現場でカットがベター。胴の先端部中央をチョン掛けする。平潟沖ではエキストラのホラアナゴ(深海アナゴ)を活餌で使用し大型の実績あり。

その他のギミック
サメ被害軽減装置 「海園」

サメやエイの電気感知器官であるロレンチニ瓶(ロレンチーニ器官)を電流で刺激し、回避行動を促す器具はこの釣りにも有効。詳細は後述「ワンポイント」にて。

磁石板
鈎数が少ないので必需品とは言えないが、2本鈎仕掛では短い物が有れば便利。

②ヘビータックルアコウ&ベニアコウ船での釣り
現状大型アブラボウズと対峙するメインのステージはヘビータックルアコウ&ベニアコウ船。
アコウ船では水深400~600m、ベニアコウでは1,000m前後での釣りとなる。
アコウダイ釣りでは下鈎をやや大型(or太軸)にする、ハリスを太く(20号~24号)する、大振りのエサを配す等してヒット&キャッチ率の向上を図る。ベニアコウ釣りでは基本仕掛&エサのままでも充分可能だが、ハリスを30号にする、イカ1杯掛けなどのビッグベイト使用も一手。

ロッド
ヘビータックルに準ずる、と言うよりもヘビータックルアコウ&ベニアコウ用ロッドをアブラボウズに流用しているのが本来。数百~1,000mの底を叩く先調子、ウネリに跳ねないしなやかさ、パワーと大負荷にヘタらないバットパワーを兼ね備える錘負荷350~600号表示の2m程度。

アルファタックル適合モデル
ディープインパクト カイザーR
ディープオデッセイ モデルR
ディープインパクトTERUスタイル RTⅡ
ディープインパクトTERUスタイルSⅡ(アコウダイ釣場)

リール…高強度PE10号1600m以上のキャパシティを持つ大型電動リール。ミヤエポックのコマンドZシリーズ9~15番、D社3000番。

仕掛…
アコウダイ釣場…アコウダイ仕掛の下鈎1~2本を鈎太軸ムツ22~25号、ハリス20号~24号とする。

ベニアコウ釣場…ベニアコウ仕掛(鈎ムツ25~28号・ハリス24号)で80~100kgの実績があり、敢えてハリスを太くする必要はないが「専用」を意識するなら30号とし、鈎数を6本程度に抑える。
何れの場合も仕掛上端にはミヤエポック「ヨリトリWベアリング」など大型のヨリトリ器具を配し、錘は船指定号数(400~600号、1.5~2kg。釣場や潮況でこれ以上の場合も)を使用。材質に指定がない場合は海底に残っても環境負担の少ない鉄製のフジワラ「ワンダーⅠ」を推奨する。 ※ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。

アルファタックル既成仕掛
DEEPMASTER深海仕掛 ベニアコウ8本枠付

集魚ギミック
水中灯… ミヤエポック「フラッシュカプセルLED-S夜光」を基本にアピール重視なら「LED-DX夜光」も。タコベイト、マシュマロボール、匂い玉はヘビータックルと同様。

深海バケ…カラーはヘビータックル同様。筆者はアコウ場ではフジッシャー毛鈎ムツ太地22~23号、ベニアコウ場ではムツ28号をセレクトする。

エサ…ヘビータックルに準じ、アコウ場では大振りのサバ短冊、サンマ半身、鮭皮、スルメイカ肝付ゲソの半割など。ベニアコウ場ではベニの基本エサである大型スルメイカの縦方向カット短冊(幅2cm・長さ20~25cm)でも40~100kg級が普通に釣られており「それで充分」とも言えるが、より「攻める」スタンスなら中型イカ一杯掛けやホラアナゴ一尾掛けを1~2本(もちろん全鈎でも構わないが)配すのもアリ。

その他のギミック
ヘビータックルに準ずる。磁石板は仕掛鈎数に合わせてセレクト。

③ライトタックル(&LTメヌケ船での釣り)
筆者がLTで初めてアブラボウズを狙ったのは95年8月の茨城県平潟沖。マダラ&メヌケ2本立ての後半戦、ミヤエポックCX5リールと24号ハリスで55kgキャッチのスマッシュヒットは当時の釣り総合誌「フィッシング」のカラーグラビアを飾り話題となるが、この時点では「それ以上」は踏み込まず。
本腰を入れるのはそれから10年後の05年5月。静岡県富戸沖でハリス10号のアカムツ仕掛で600mにアプローチし22㎏をキャッチ。その後船長と当時誰も釣らなかった600~700mを探査、10~30kgの「捕り頃サイズ」を深場アカムツのタックルで釣るスタイルを確立する。近年は同ポイントのアブラボウズが大型化の傾向(50~60kg級も出る)で、開拓当初より仕掛スペックをアップして臨む。

ロッド
基本性能はLTアコウダイ(&メヌケ)タックルに順ずるが、「遊び」としての釣趣を追及するのがLTアブラボウズの理念。自信のある向きはLTアコウロッドよりワンランクライトな「深場アカムツ」対応モデルでの挑戦も一興だ。

アルファタックル適合モデル
ディープインパクト カイザーG
ディープインパクトTERUスタイル RT0
深場アカムツ(250~300号錘)対応機種
ディープインパクトLight220
ディープインパクトTERUスタイル RT0

リール…高強度PE6~8号800~1,000mキャパシティの中型電動リール。ミヤエポックR800か5番、S社9000番、D社800~1200番。

仕掛… 専用は鈎数3本の胴突仕掛。ハリス16~18号を80cm~1m、幹糸24~30号1.8m。捨て糸は12号1m。鈎は太地ムツ22号。LTアコウ(メヌケ)仕掛流用なら下鈎1~2本を同スペックとする。仕掛上端にはミヤエポック「キャラマンリング1型」などの中型ヨリトリ器具を配し、錘は鉄製のフジワラ「ワンダーⅠ」300(~350)号。

集魚ギミック
水中灯…ミヤエポック「フラッシュカプセルLED-S夜光」。タコベイト、マシュマロボール、匂い玉はヘビータックルと同様。

深海バケ…藤井商会「フジッシャームツ毛鈎」太地ムツ22号。カラーセレクトはヘビータックルと同様だが、富戸沖LTでの筆者釣果は100%濃紫。

エサ…サバやソウダガツオを幅2cm・長さ25cmにカットしたビッグ短冊が実績大。因みに平潟沖の55kgはサンマの半身。

その他のギミック
ヘビータックルに準ずる。



実釣テクニック(ヘビータックル・LT共通)
エサ付けを済ませた仕掛は順序よく船縁に並べ、船長の合図で投入するが、この際、

  1. 仕掛の絡みや自らの足による幹糸部の踏み付け等がない事を確認。
  2. 錘を投げる場合は船縁から身を引き、仕掛から離れる。(鈎が衣服や手に掛る可能性あり)
  3. 仕掛全てが海中に入ってからクラッチをフリーにする。(フリーで投入するとヨリ取りの重量で道糸が先に出てオマツリ、投入のショックでバックラッシュの可能性がある為)。の3点。

仕掛が着底したら糸フケを完全に除き「底トントン」を設定。マメに底を取り直してアタリを待つ。アブラボウズのアタリは明確かつ独特で、他魚との識別は極めて容易。ウネリによる船の上下動で一定のリズムを刻んでいた竿先を一瞬止めた後に派手に叩き付け、一気に絞り込む。この際、20kg級でも20m以上ラインを引き出す事も。

同ポイントに何尾かが棲む事が多いがアブラボウズだが、一度に複数が鈎掛りしては後が面倒。アタリ後は船長に声を掛け、早々に巻き上げる。ドラグを効かせた中速で緩急付けず、が基本。大型になる程容易く海底から離れず、ともすれば「根掛り」を疑うがここが我慢のし所。アブラボウズは数十kgでも出刃一本で処理できるほど、骨が柔らかい。強引な巻上は口切れバラシに繋がり要注意。先ずはドラグやスピード設定を変えずに魚が底から離れるのを待つ。どうしても離れなければジワジワとドラグを締め、若しくは巻上速度をアップして引き剥がす。

超深海から釣り上げても腹を返す事は無い。随所で激しい抵抗を見せるが、特に水深の半分辺りで2度目の山場を迎えるケースが多い。派手な動きを見せるのは「体が軽い」20~30kg級。数十kgを超す老成魚では、底から離れると重量感先行、比較的静かに海面下まで上がる事もある。
何れにせよ、鈎が外れれば泳ぎ去るタフネス故、魚を見てから慌てる事が無い様に早めにギャフなど、取り込みの算段を整えておきたい。

電動巻上停止後「流れ」を断ち切らずに仕掛を手繰り寄せれば海面直下では多くの個体が比較的おとなしく、鬼カサゴ宜しく大口を開いて姿を見せる。
ここで魚を覚醒させてしまうと大暴れし取り込みが困難になるのでファーストギャフは重要。下顎のセンター、若しくは上顎の奥まで差し入れてガッチリと掛けた上で、セカンドギャフを打ち、数十kgの大物なら二人、三人掛りで船内に引き摺り上げる。
持参、または船のクーラーに納まるサイズは鰓の付根にナイフを入れて放血、海水氷で全体を冷やせば万全。クーラーに納まらない大物は船上で解体して半身やブロックをビニールに包み、氷詰めにして持ち帰る。

※本種の西京漬けや煮付けは筆者宅でも好評だが、10kg級の小型でも切身は数十枚取れる。これ以上のサイズは持ち帰るのも、食べるのも一苦労。大抵は船長にプレゼントし「油代の足し」にしてもらっている。

ヘビータックルアコウ・ベニアコウ船での釣り
何れの場合も仕掛スペックや付けエサが若干異なる程度ゆえ「本来のターゲット」の釣法で臨むのが大前提。

アコウ船の場合
仕掛の投入は基本的に掛枠を使用。船長の合図に従って舳先、又は艫から順に行う。掛枠を海面に対して45度位に構え、合図と共に真下にオモリを落とす。リールはクラッチを繋いでおき、仕掛が全て海中に入ってからスプールをフリーにする。バックラッシュやヨリ取り&水中灯の重さで道糸が先に出て仕掛と絡む「手前マツリ」を防ぐ工夫だ。投入にタイムロスが発生すると船がポイントから外れて最悪全員が空振りとなる可能性もある。故に合図までに準備が整わない、トラブルで仕掛が降りない時は一回休み。

錘が着底したら一度完全に底を離れるまで巻き上げて(竿先が大きく曲がってから戻る)糸フケを除き、再度着底させる。ここからウネリによる上下動で錘が海底をトントン叩く状態を設定すべく海況、釣座、ロッドアクションなどの条件を考慮して50cm~1m程度巻き上げる。その後もマメに底を取り直して底叩きを維持し、アタリを待つ。
アタリ後は錘を着底させ、テンションをキープしながら船の移動分道糸を送り続ける、若しくはアタリ毎に幹糸間隔分ずつ順次送り込む、が基本的操作だが、釣場や潮具合、船長の操船スタイルによっては「どんどん送り出す」「仕掛全体を一気に這わせる」「そのままキープ」など、様々。自分勝手な判断をせず、必ず船長に確認する事。

巻上も投入同様、船長の指示に従って順番、若しくは一斉が基本だが、明らかに大型のアブラボウズと判断できるアタリや引きの場合、早い段階で巻上に入っても良いかを確認し承諾されれば巻上に入る。以降の流れはヘビー&LTと同様だ。

ベニアコウ船の場合
水深1,000mでは一日4(~5)投が通常だが、神奈川県では一部短いスパンで7~8投する船も。
船長の合図に従い艫、若しくは舳先より順に投入する。掛枠での投入が基本で2組を交互で使用するとスムーズ。仕掛捌きに慣れていれば2投目以降は船縁に並べて、が可能な船もある。
何れの場合も仕掛が全て海中に入るまでリールはフリーにせず、クラッチを繋いでおく。これはヨリトリ器具等の重量で道糸が仕掛より先に海中に入って起こる手前マツリや投入終了時のバックラッシュを防止するためだ。仕掛が海中に入った時点でスプールをサミングしつつリールをフリーにし、バックラッシュに注意しながら海底まで錘を落とし込む。

着底後は高速巻きで糸フケを完全に除き、錘が海底から離れたらリールをフリーにして再度着底、1~2m程度底を切り、船の上下で錘が海底をトン、トンと叩く状態でアタリを待つ。
数十kgのアブラボウズはロッドを海面に突き刺し、少なくとも10m以上、ラインを引き出して行く。

アタリ後の操作は釣場により仕掛を立てたまま、潮が効いていなければラインを張り気味、効いているならやや弛み気味(錘を底に着ける)、錘を着底させ船の移動分ラインを送る等、ポイントや潮況より操作の指示は異なるため、その都度船長に確認する。
巻上げは船長指示に従い順番又は一斉が通常だが、船長に一声掛けて巻上可能の船もあり。以降の流れはアコウ船同様。


アブラボウズに役立つ!?ディープマスターのワンポイント

水深や釣場で使い分けるサメ被害軽減装置「海園」
2010年9月の平潟沖。メヌケポイントのLTアブラボウズで同乗者の40kg級が取込直前に巨大なサメに襲われ、一噛みで後半身消失のショッキングな場面に遭遇。当時「海園」があればこの被害を回避できた可能性は極めて大きい。
中~上層で起きるサメ禍(奪い喰い)対策には巻上開始時に「海園Ver.2」のカラビナを道糸にセット(引っ掛ける)して海中に投下する。もちろん最初からヨリトリ器具直下に「海園Ver.2イカ直結用」をセットしても良いが、千葉県片貝沖や伊豆大島乳ヶ先沖など「根掛り前提!?」の釣場では仕掛ロストやライン切れのリスクも低くない。製品コストも考慮した「巻上時セット」が得策だ。
逆に根掛りの少ない静岡県東伊豆のLTポイントでは海底でアプローチしてくる深海サメ(ユメザメ、モミジザメなど)の回避も踏まえて「海園Ver.2イカ直結用」を最初からヨリトリ器具直下に配す。
因みにベニアコウポイントで使用する場合は製品の耐水圧を踏まえ、巻上開始後残りライン700mを切った所で「海園Ver.2」を投入するのがお勧めだ。

ギャフが伸されてあわや大惨事!?
アブラボウズの取り込みは身切れや外れを回避すべく下顎センターや喉の奥(若しくは両方)にギャフを打って、が常道だが…2014年4月の静岡県富戸沖1,000m。1時間にも及ぶ攻防の末、海面下に現れたのは一瞬腰が引ける80kgのアブラボウズ。ヒット直後から大物と知れておりラスト100m時点でギャフ2本をセット、 船縁も外して取込準備は万端整えて臨む取込シーン。船長がメインのファーストギャフを口内に打ち、間髪入れず筆者がセカンドを下顎センターに貫通させてここまでは完璧な流れ。

「よし、やったぞ!」と勝利を宣言、掛け声諸共引きずり上げんとしたその瞬間。「うわっ!」の声と共に船長がフレームアウト、魚の全体重がズシッ!と筆者の腕と宜しくない腰に掛り冷や汗。ファーストギャフの先端だけが上顎に刺さった状態で大負荷が掛ったためギャフのフックが伸され、スッポ抜けて転倒したのだ。幸い船長に怪我は無く、こちらの腰も何とかセーフ。魚も取り込めたので「結果オーライ」だったが、一歩間違ったら大きな事故になっていたかも。以降船長共々「ギャフはアーチ迄確実に刺し通す」を肝に銘じて実践している。

パワー任せの強引な巻上NG。上唇だけが釣れた件

前出の船長が伊豆大島沖にアコウダイ狙いで出船した際の事。客の一人がアブラボウズを喰わせたがハリスが太いのをいい事にドラグギチギチの高速で巻上開始。 強引過ぎるヤリトリ!?を見かねた船長が「もう少しゆっくり巻かないとバレちゃうよ…」と言った途端にロッドからテンションが消えて、それ見た事か。
鈎がスッポ抜けたか、それともハリスが飛んだのかと客が回収した仕掛を見ると、何と鈎にアブラボウズの上唇だけが残っていた。掛り所も良くなかったのだろうが、巨体に似合わず!?骨や身の軟らかい本種との強引なやり取りは考え物。逆に適切なドラグ調整と巻上スピードで臨めば、画像の様に唇先端への鈎掛りでも大魚をキャッチする事が可能だ。


アブラボウズ料理
刺身ももちろん可能だが、生食は酢や漬けダレを活用し身肉に50%も含有する脂肪を「ある程度緩和する」
事でより食べ易く、同時に旨味も引き立つ。
鮨は第10話ベニアコウ料理で紹介する3種盛り(通常握り・漬け・炙り)に準ずるが、個人的には煮切り(醤油と味醂を同割で合せて火に掛け、沸騰直前に止めて冷ました物)に寿司ネタを10~15分浸して「漬け」にし、練り辛子に置き換えて握る「島鮨風」が一推し。握るのが面倒な向きには器に盛った酢飯に前出の「漬け」を乗せた「漬け丼」がお勧め。
「照り焼き」は漬け握りに使う煮切りに切り身を半日ほど漬け込み、焦がさないように焼き上げる。
「漬け物」は後述西京漬けの他、粕漬けや塩麹漬けも美味。

煮付け
材料:切り身、カマブツ切りなど/濃口醤油/味醂(又は日本酒)/砂糖/粗挽き黒胡椒
調理

  1. 醤油1:酒(又は味醂)4:砂糖1/3を合せて良く混ぜ、粗挽き黒胡椒を加えて強火で煮立てる。煮魚の汁には根生姜の薄切りを加えるのが一般的だが、脂の強い魚には粗挽き黒胡椒の相性が良くお勧め。味醂を使う場合は砂糖の量を減らすが、各調味料の割合はあくまで目安。魚の脂に弾かれない濃い目の煮汁を意識するが、最終的には各自の好みで調整する。煮汁は多目の方が焦げ付きなどの失敗が少ない。
  2. 汁が煮立ったら灰汁を掬い、魚を入れて煮る。
  3. アルミホイルで落し蓋をする。煮汁が上側まで回り、かつ吹き零れない様に火力を調整。灰汁を除きながら10分程煮る。調理時間は魚のサイズや形状により調整する。
  4. 崩さないように皿に盛付けて供する。


西京漬け
10kg級の「小型」でも30~40枚の切身が取れるアブラボウズ。保存食としても重宝な西京漬けは高級品として扱われる兄弟分ギンダラと遜色ない(よりも上の?)味覚を堪能できる。
材料:アブラボウズ切身/西京味噌/味醂/日本酒/塩
※添付画像はアコウダイ切身を使用した調理手順

調理

  1. 切身に軽く塩を振る。塩加減は脂の乗り具合で調整(乗りが良い物は気持ち強め)し、3時間冷蔵する。
  2. 西京味噌500gに酒・味醂各50ccを加えて練り上げ、味噌床を作る。
  3. 切身の水気を拭き取り、味噌床に漬け込む。直接漬け込んでも構わないが、味噌・ガーゼ・身・ガーゼ・味噌の順に挟んで漬け込めば味だけが染込み、焼く時に味噌を落とす手間が省ける。
  4. 2~3日で食べ頃。味噌床から取り出し(直漬けの場合は味噌を洗い落して水気を拭き取り)ラップに包んで冷凍すれば長期保存も可能。焦がさない様に中火で焼き上げる。

アブラボウズという魚

アブラボウズ

スズキ目ギンダラ科 Erilepis zonifer
国内の分布:北海道~熊野灘の太平洋沿岸、津軽海峡、兵庫県香住(稀)
水深300~1,000mのキンメダイ、アコウダイ、ベニアコウ釣りで姿を見せ、大型は100kg超。イシナギ、カンナギ(マハタ老成魚)と並ぶ深海釣り最大級のターゲット。水圧変化に対応し、海面に腹を返す事は無い。
関東ではクロウオ、若しくはクロイオの名が一般的。他に小田原周辺のオシツケ(女房言葉で「毒見」の隠語)、クロハタ(三崎周辺)、沖アイナメ又は沖アブラメ(東北)などの地方名が。 国内で唯一同科同属となる超メジャーな惣菜魚「ギンダラ」との識別は

  1. 本種の体は太短いが、ギンダラは細長い
  2. 本種は第一背鰭と第二背鰭が接近するが、ギンダラは広く離れる
  3. 本種の第一背鰭は12~14棘だが、ギンダラは17~30棘

稚魚は流れ藻など漂流物に付いて表層生活をする事が知られ、筆者も19年秋の岩手県釜石沖マダラ釣りの際に15cm程の個体を確認。若魚は体側に不規則な白色斑を多数有すが、成長とともに消滅する。 現在では各地の水族館で展示されるようになった本種だが、その「元祖」は北海道最古の水族館である市立室蘭水族館。国内で初めて本種の飼育に成功、シンボルフィッシュとする同館では1969年に浦河沖で採捕した5cmの稚魚を35年8ヶ月間飼育。1.5m・40kgまで成長させた。この魚は残念ながら04年に病死したが、もちろん国内最長のアブラボウズ飼育記録である。

水族館のデータを自然界にそのまま置き換える事はできないが、数十kg~100kgの大物は相応の年齢だろう。船上に横たわる巨魚は何十年、もしかしたら一世紀を生き抜いてきたかも知れない大先輩。敬意と感謝の念を忘れてはならない。

身には脂肪分を50%(普通の魚の10倍!)も含有。胃腸の弱い人が一時に大量に摂取すると、お腹が緩くなる可能性がある。この点を後述バラムツやアブラソコムツと混同した「取引禁止の毒魚」なる誤解説をいまだに見受けるが、バラムツ類の脂肪が人体で消化できないワックスなのに対し、本種の脂肪は食用に適したグリセライドで根本的に異なる物。

かつて「クエ」と詐称し販売した飲食店が摘発され話題となった本種だが神奈川県の小田原や三崎では古くから専門の漁が行われ、小田原周辺では生鮮や酢漬けを「オシツケ」、三崎では「マグロの粕漬け」等の加工品として流通してきた。

近年「標準和名」で売られる様になったのは食品名の表示が厳しくなった事に加え、千葉県銚子や静岡県伊豆の回転寿司店の新名物として「アブラボウズ(又はオシツケ)の握り」が旅&グルメ番組で度々取り上げられ、一般にも広くその名を知られたて市民権を得た事も大きい。これに伴い各地の市場で以前よりも高値で取引、10kg前後の小型が最も高値で浜値がkg当たり千数百円。数十kgの大型は扱い難さもあって値が下がるが、それでも800~千円近くになる。

※本項ではアブラボウズとは縁も所縁もないが、一部で混同されるワックス系の「取引禁止魚」2種も併せて解説する。

バラムツ
スズキ目クロタチカマス科 Ruvettus pretiosus
国内の分布:北海道太平洋沖・福島県南部~土佐湾の太平洋沖・兵庫県浜坂・東シナ海・九州~パラオ海嶺
体側鱗の先端が鋭く尖り、バラの棘を思わせることが和名の由来とされる。身肉に多量に含有するワックスと鰾がないこと、更にアブラソコムツ同様の特殊な皮膚構造により、深海から表層まで高速移動する事ができる。
日中は水深400~500mを遊泳。朝夕はやや浅みに移動し、夜間は100m以浅まで浮上し定置網に大量に入る事も。2mにもなる深海巨魚。
アブラソコムツとの識別は

  1. 体側鱗は骨状の棘を有す
  2. 側線は波打たない
  3. 尾柄部に隆起線が無い
  4. 腹部正中線に骨質隆起線を有す

アブラソコムツ
スズキ目クロタチカマス科 Lepidocybium flavobrunneum
国内の分布:相模湾~土佐湾の太平洋側。
大きな鱗の周囲を小さな有孔管状鱗が網状に取り巻く特殊構造の鱗とバラムツ同様多量に含有するワックス、鰾を持たないことで深海から表層まで高速移動できる。
体表は紙やすりの様にざらつき、側線は著しく波打つ。日中は500~600mを遊泳。夜間はバラムツ同様、上層に浮上する。駿河湾でサットウ。アブラボウと呼ぶ地域がありアブラボウズと混同される原因に。
バラムツとの識別は

  1. 体側鱗は大きな鱗の周囲を小さな有孔管状鱗が網状に取り巻く
  2. 側線は著しく波打つ
  3. 尾柄部中央に1隆起線、後半部は上下各1本の拭く隆起線を有す
  4. 腹部正中線に骨質隆起線は無い

昭和の時代。テレビ放映をきっかけに、平塚からバラムツ専門の乗合が出た。平成の初め頃には静岡県由比港にも乗合船が登場するが食に難があるため、深海釣りのジャンルとしては何れも長くは続かなかった。
2種は同科に属する近似種であり、体の仕組や生態もよく似ている。ゲームフィッシングが盛んだった頃、駿河湾の夜釣りでは2種が混獲されるケースは珍しくなかったが、日中の深海釣りでは同ポイントで両種が揃って姿を見せる場面には遭遇していない。

筆者とバラムツの出逢いは80年代終盤の平塚沖。某誌企画で仕立船バラムツゲームに挑戦。同乗者共々水深400mからの手巻スタンディングファイトで十数kgを仕留めて写真を撮り合おうとした際、互いの腕がプルプル震えてしまい中々ピントが合わなかったという笑い話が。

更にこの魚を持ち帰って刺身にし「一人3枚」限定で釣りをしない友人数名と味(毒!?)見を敢行。ワックス質の脂から刺身のルックスは普通の魚と異なり、安物の食品サンプルさながらなのテカリ具合。さすがに良心の呵責があって同じテーブルに静岡県石廊崎で釣って来たアコウダイも並べたが…仲間の箸はバラムツに集中。「もっと喰わせろ」の言葉に本当の事も言えず、苦笑いした経験が。
要は知らずに少量を食べれば「結構旨い」のだ。最近はさすがに聞かなくなったが、以前は食品会社が冷凍庫に大量に保管し摘発なるニュースも時折目にした。

当時平塚で聞いた話。乗合船があった頃、肛門科の医師が毎週の様に通いバラムツを持ち帰る。曰く、切れ痔の患者に一日一切れを食べさせて潤滑油の役目をさせているとか。今では考えられないが、大らかな時代だった?

アブラソコムツとの遭遇は93年2月、千葉県乙浜沖水深1,000mの宙層500m。ベニアコウ釣りの際にアブラボウズを狙ったスルメ半割に飛び付いて貴重な一流しをパーにした25kg。その後の対面も駿河湾夜釣りを除くと全てベニアコウ釣り。筆者にはバラムツ以上の厄介者だ。
俗称の「アブラボウ」はこの魚の特徴を良く表している一方で「アブラボウズ」との混乱を招き易くバラムツ類とアブラボウズが一緒くたにされる原因のひとつでもある。10年程前に誤って市場に出た本種を「アブラボウ」の名からアブラボウズと誤認した料理店が購入して客に提供、下痢症状が出て営業停止のニュースもあった。「アブラボウズ」がメジャーとなった現在、関係各位はより一層の注意が必要だろう。



第8話 アコウダイ
ポン、ポン、ポンッ!次々と海面に弾ける緋色の魚体。水圧変化に対応できず膨れ上がった太鼓腹を赤提灯に見立て、誰が呼んだか「提灯行列」。今では中々お目にかかれぬこの釣りのクライマックスシーンだが、意外な近場にも出会いのチャンスがあるのが「海より深い」深海釣りの奥深さ。
キンメダイと並ぶ深海釣りの代名詞的存在でありながら、この魚に対する釣人の認識は意外とアバウト。これまで実しやかに語られて来た「銚子より北で釣れるのがメヌケ、南がアコウダイ」の真相とは。



アコウダイの釣場

北海道~東北ではバラメヌケ、関西はホウズキがメインの実情だが、これらも併せた釣場紹介。但しコウジンメヌケことオオサガ(&サンコウメヌケ)はベニアコウの項で扱うため、ここでは除いた。

北海道 釧路沖・襟裳~恵山沖
青森県 下北半島沖(尻屋崎沖)・三沢沖・八戸沖
岩手県 小本沖・宮古沖・大槌沖
福島県 四倉~小名浜沖
茨城県 平潟沖・那珂湊沖・鹿島沖
東京都 大島沖・新島沖・神津島沖
千葉県 銚子沖・片貝沖・鴨川沖・千倉沖・洲ノ崎沖・富浦沖
神奈川県 剣崎沖・城ヶ島沖・葉山~江ノ島沖・平塚沖・大磯沖・真鶴沖・湯河原沖
静岡県 熱海~初島沖・富戸~八幡野沖・稲取沖・石廊崎沖・波勝崎沖・駿河湾沼津~清水沖
遠州灘大井川~浜名湖沖
愛知県 大山沖
三重県 大王崎沖
和歌山県 串本~白浜沖



タックルと仕掛

中深場の延長上となる「小メヌケ」と相模湾など中型電動リールでの「LTアコウ」、大型電動リール使用の本格的深海釣り「ヘビータックル」の3パターンに分けて紹介。

①小メヌケ
福島県沖などでオキメバル釣りに準ずるタックルを使用し、この釣りとしては浅所の300m前後で美味な中小型(最大2kg程度)を狙う釣り。錘は200~250号。

ロッド

東北オキメバル用の2.3~2.7mモデル。この釣りでは「バラシを抑えるしなやかさ」よりも「底を叩きより早く最初の一尾を喰わせる復原力」がキーポイント。ベタベタ胴調子はエサの踊りが悪く喰い付きが遅くなる。ロッド硬軟は各自の好みにもよるが、使用錘に合わせたアクションセレクトがセオリー。
アルファタックル適合モデル
ディープインパクト カイザーT
ディープオデッセイ モデルT
ディープオデッセイ モデルTT

リール…こちらもオキメバルの流用でOK。水深250~300mの倍以上のライン長が理想。ラインはPE(5~)6号。ミヤエポックAC-3JPC、S社6000番、D社が800番該当。

仕掛… 市販のマゾイ・ヤナギノマイ用など鈎数6~8本、ハリス6~8号の中深場用サビキ仕掛、若しくは同号数ハリスのライト深場仕掛仕掛。自作の場合はムツ鈎15~16号(若しくは同サイズの深海バケ)、ハリス6~8号30~50cm、幹糸10~14号70cm~1mの胴突6~8本鈎。捨て糸は8号1m。
仕掛上端にはフジワラ「深海用リングSS」などの小型ヨリトリ器具を配す。錘は根掛りが頻発するポイントでは特にロストしても環境負担の少ないフジワラの鉄製「ワンダーⅠ」を推す。※ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。
釣座スペースが十分に取れる場合はロッド左右に2組の仕掛を並べ、交互に使用すれば手返しアップ。取り込み後の処理やエサ付けも余裕を持って行える。

深海バケ…市販サビキは赤・ピンク・蛍光紫のバケを使用したものが大半だが、自作の場合はこれらに加えて「アコウダイの鉄板カラー」青紫、橙、濃緑の「フジッシャー毛鈎」をセレクトする。鈎サイズはフカセネムリ15号、ムツ15~16号。

集魚ギミック
水中灯… ルミカ「輝泡」「ビット」等の小型水中灯が有効。緑色発光と赤色発光を持参、状況を見て使い分けるのがベター。ヨリトリ器具の下に親子サルカンを接続してブランコ式に配せばスピーディーな交換、取り外しが可能。

マシュマロボールL…胴突仕掛のハリスに一個を配す。深海バケ自作仕掛ではバケとボールのカラーをリンクさせる事が大前提。

匂い玉…ニッコー化成「激臭匂い玉7Φ」を各鈎に一粒ずつ通し刺す。

タコベイト…空鈎仕掛にはヤマシタ「パニックベイトメバル1.5」やニッコー化成「スーパータコベイト1.5inch」を配して深海バケ風にアレンジするのもアリ。

エサ…幅1cm、長さ8~10cm程度のサバ、イカの短冊が基本。着色や味付けはお好みで。

疑似餌…ニッコー化成「ロールイカタン150cm」を上記サイズにカットして使用。他に「ダッピーホタルイカ3inch」にも実績あり。
ワームのメリットは
①投入毎の交換不要で手返し抜群
②常温保存で液体も出ず、運搬楽々&クーラー不要。手指や船縁も汚れない
③色や形状をセレクトし釣果に繋げる面白さ

「ロールイカタン150cm」…エビパウダー配合の幅1cm、全長150cmの短冊を好みの長さにカットして使用する計8色の匂い付きワーム。

「ダッピーホタルイカ3inch」…激臭イカゴロエキス超配合の「イカワタパーツ」をイカゴロエキスコーティング素材で包んだ計10色のホタルイカ型ワーム。

その他のギミック
サメ被害軽減装置 デニズ「海園」

中~上層でのサメによる奪い食いが懸念される場合は海中で電流を発生、鼻先の電気器官「ロレンチニ瓶」を捕食に使うサメ・エイ類のみに作用して仕掛から遠ざけるサメ被害軽減装置の使用がお勧め。小メヌケの喰いには影響はないため、仕掛上部に最初から接続する「Ver.2イカ直結用」をセレクト。

磁石板
全ての釣場で手前マツリを防止するのに極めて有効なギミック。船に設置されていない場合は持参がお勧め。鈎数に応じて長さをセレクトする。

②LTアコウ
茨城県平潟~鹿島沖、東京湾口、相模湾、西伊豆沖など、鈎数5~6本程度で中型電動リールを使用する比較的手軽な釣り。錘は300~350号。
「ライト」といってもターゲットはヘビータックルと同等。深海巨魚アブラボウズや厄介者のバラムツ、シマガツオのアプローチにスムーズに対応すべく充分なパワーと強度が要求される。この部分を念頭に置いてタックルをセレクトする。

ロッド
グラスチューブラー素材の深海専用竿。使用錘にマッチした錘負荷表示の2m程度。口切れを配慮して負け気味の竿を選ぶキンメダイに対してアコウダイは喰わせるための「底叩き」の演出を優先、使用錘に適合=「キンメよりワンランク硬め」を選択するのが正解。グラス素材でも復原力に劣るソリッド竿は喰わせるための底叩きやアタリの伝達に難あり。グラスチューブラー素材深海専用竿の300号クラス、2m程度をセレクトする。

アルファタックル適合モデル
ディープインパクト カイザーG
ディープインパクトTERUスタイル RTⅠ
ディープインパクトTERUスタイルSⅠ

リール…PE6号800m~1.000mキャパシティの中型電動リール。単に糸巻量をクリアすれば良いと言う物ではなく、実釣時に於けるパワー&スピード(カタログデータではない)が要求される。 ミヤエポック R800・A-5SC S社9000番 D社1000番

仕掛… 鈎数5~8本程度。鈎ムツ19~20号orホタ18号、ハリス14号70cm~1m、幹糸22~24号1.4~1.8m、捨て糸12号1m。回収・再使用が前提故、必要以上に幹やハリスを細くせず、捌き易さと撚りに対する強度を踏まえる。 仕掛上端のヨリトリ器具はミヤエポック「キャラマンリングⅡ型」などやや大型の物を配す。錘は根掛りでロストしても環境負担の少ない鉄製のフジワラ「ワンダーⅠ」を推奨。※ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。

集魚ギミック
水中灯… アコウダイには極めて有効。夜光発光の「フラッシュカプセルLED-S」を基本に、宙層にシマガツオが回遊する春先やバラムツのアプローチが激しいケースでは赤色発光&発光パターン選択可能のルミカ「クアトロレッド」を選択するが、エキストラが極端に多い場合には「外す」選択肢も。使用を禁ずる地域、船もあるので、予め確認の事。

マシュマロボールL…チモト周辺のハリスに1個を配し浮力と仕掛降下時に抵抗をプラス、使用時に餌の動きに変化を与えるヤマシタ「マシュマロボールL」は今や本種のみならず、深海釣りの必需品。輝度ありを基本にサメやソコダラ、アナゴ類の高活性時は輝度なしの「アカムツスペシャル」と選択。深海バケやタコベイト使用の場合はカラーのリンクが大前提。

匂い玉…ニッコー化成「激臭匂い玉7Φ」を各鈎に一粒ずつ通し刺す。

タコベイト…空鈎仕掛の1~2本おきに配す。単体使用も可能だが、基本は身餌と併用する。ヤマシタ「パニックベイトアコウM」、ニッコー化成「スーパータコベイト3,5inch」

深海バケ…藤井商会「フジッシャー毛鈎」のムツ19号orホタ18号がお勧め。関東周辺では紫・橙・濃緑の3色が鉄板カラーで、白(蛍光紫)も実績あり。銚子以北の親潮海域では紅色、ピンク、赤紫など「赤系」も必須。

エサ…サバ、イカ、カツオハラモなどの短冊が一般的。持参の場合は幅1.5cm・長さ15(~20)cm程度にカットし中心線上のなるべく端をチョン掛け。他にヒイカ一杯掛け(胴先端を縦方向にチョン掛け)、スルメイカ肝付ゲソを眉間から半割し5本のセンターとなる鰭脚に鈎掛けする「肝付ゲソ半割」など。

疑似餌…ニッコー化成「ロールイカタン150cm」を上記サイズにカットして使用。

その他のギミック
サメ被害軽減装置 デニズ「海園」

中~上層でのサメによる奪い食いが懸念される場合は海中で電流を発生、鼻先の電気器官「ロレンチニ瓶」を捕食に使うサメ・エイ類のみに作用して仕掛から遠ざけるサメ被害軽減装置の使用がお勧め。小メヌケの喰いには影響はないため、仕掛上部に最初から接続する「Ver.2イカ直結用」をセレクト。

磁石板
全ての釣場で手前マツリを防止するのに極めて有効なギミック。船に設置されていない場合は持参がお勧め。鈎数に応じて長さをセレクトする。

③ヘビータックルアコウ
北海道~関西まで広範囲で行われる鈎数8~15本、400~500号若しくは1.5~2kgの錘と大型電動リールを使用する本格的な深海釣り。

ロッド

LTアコウダイと同様の理由から使用錘にマッチした錘負荷表示のグラスチューブー素材深海専用竿。

アルファタックル適合モデル
ディープインパクト カイザーG
ディープオデッセイ モデルR
ディープインパクトTERUスタイルRT-Ⅱ
ディープインパクトTERUスタイルSⅡ

リール…高強度PE10~12号を1.000m以上巻いた大型電動リール。ミヤエポック「コマンドZ」9~15番、D社3000番

仕掛… 「ヘビータックルキンメ仕掛」よりもパーツスペックがやや大振り。鈎ムツ20~22号orホタ20号、ハリス16~20号50cm~1m、幹糸30号1~1.8m、捨て糸14~16号1m(伊豆大島乳ヶ崎沖などこれより長く取る釣場もあり要確認)の鈎数8~15本(釣場により鈎数規制あり。要確認)。
投入回数+αを掛枠に巻いて持参、出船前に2~3組にエサ付けを済ませておくのはヘビータックルキンメと同様だが、取込み時は魚が海面に浮かび、キンメ程慌てて仕掛を回収する必要が無いため、磁石板を持参すれば2組を交互に使用する事で回収~再使用は容易となる。
上端にはミヤエポック「ヨリトリWベアリング」など大型のヨリトリ器具。ヘビータックルキンメには配すゴムヨリトリは「底叩き」を妨げるので使用せず、ナイロン40号1.5mの先糸に置き換える。錘は船宿指定重量(&素材)。環境への負担が少ない鉄製推奨はLT同様だ。

集魚ギミック
水中灯… LTに準ずる。セットはヨリトリ器具下端に親子サルカンを配してブランコ式がお勧め。万一水中灯が破損しても仕掛全体を失う事がない。

マシュマロボールL…LTに準ずるが、鈎の号数アップに伴う重量増を踏まえ、ダブルで配す。

匂い玉…鈎サイズを踏まえ、LTより一回り大きい「激臭匂い玉10Φ」を各鈎に一粒ずつ通し刺す。

タコベイト…LTに準ずる。

深海バケ…藤井商会「フジッシャー毛鈎」ムツ20~22号、ホタ20号がお勧め。カラーはLT同様。

エサ…LTに準ずる。

疑似餌…ニッコー化成「ロールイカタン150cm」を上記サイズにカットして使用。

その他のギミック
サメ被害軽減装置 デニズ「海園」

千葉県片貝沖などで遭遇する巻上時中~上層でのサメ禍(奪い喰い)対策には巻上開始の時点で「海園Ver.2」のカラビナを道糸にセット(引っ掛ける)して海中に投下する。LTキンメと同じく「海園Ver.2イカ直結用」をヨリトリ器具直下に配してもOKだが、前出片貝沖や伊豆大島乳ヶ先沖など根掛り前提!?の釣場では処理時の仕掛ロストやライン切れリスクを考慮した「巻上時セット」が得策だ。

磁石板
回収・再使用前提の場合は必需品。船に用意が無ければ鈎数に合わせた長さの物を持参する。


実釣テクニック
小メヌケ・LTアコウ… エサ付けを済ませた仕掛は順序よく船縁に並べ、投入の合図を待つ。(もちろん掛枠使用もOK)船長の合図に従って舳先、若しくは艫から順に投入して行く。合図に間に合わなければ一回休み、はヘビータックルと同様。
船縁に並べた仕掛を投入する際の注意点は

  1. 仕掛の絡みや自らの足による幹糸部の踏み付けがない事を確認。
  2. 錘を投げる際は船縁から身を引き、仕掛から離れる。(鈎が衣服や手に引っ掛かる可能性あり)
  3. 仕掛が全て海中に入ったらスプールをサミングしながらクラッチを切りフリーにする。(フリーで投入するとヨリトリ器具の重量で道糸が先に海中に入り手前マツリ、投入のショックでバックラッシュする可能性がある)の3点。

錘が着底したら一度完全に底を離れるまで巻き上げて(竿先が大きく曲がってから戻る)糸フケを除き、再度着底させる。ここからウネリによる上下動で錘が海底をトントン叩く状態を設定すべく、海況、釣座、ロッドアクションなどの条件を考慮して50~1m程度巻き上げる。その後もマメに底を取り直して底叩きを維持し、アタリを待つ。

アタリ後は錘を着底させ、テンションをキープしながら船の移動分道糸を送り続ける、若しくはアタリ毎に幹糸間隔分ずつ順次送り込む、が基本的操作だが、釣場や潮具合、船長の操船スタイルによっては「どんどん送り出す」「仕掛全体を一気に這わせる」「そのままキープ」など、様々。自分勝手な判断をせず、必ず船長に確認する事。

巻上も投入同様、船長の指示に従って順番、若しくは一斉に行う。例え早い段階でアタリがあっても、船長の承諾無しで巻き上げるのはNG。ドラグを充分調整した中速程度で、緩急付けず一定のペースで巻く。但し錘が切れている場合はややスピードアップし同乗者とのオマツリを防ぐ。

基本的に激しい抵抗はないが、水深の中間地点辺りでは魚が暴れて巻上が滞る。良型や多点掛けではこれ以外でも時折竿先を引き込む「抵抗」が見て取れる。 電動リールは一定の巻上速度を維持するため、魚が「目抜け」になり浮力が付いても、いきなり竿先のテンションが軽くなる事は無い。膨張した事で抵抗が大きくなるため、浮力と相殺され、竿先への負荷は維持される。但し、ウネリで船が下がった際には魚の浮力でテンションが下がり、竿先が戻る「浮きのムーブ」が見て取れる。糸フケ分の巻上が終わると本来の負荷に戻り、再び竿先が曲がる。この動きにより、最後まであたかも「引いている」様に感じるのだ。

多点掛けの際は終盤徐々にラインの角度は浅くなり、巻上が終わる前に遥か前方の海面に緋花が弾ける事も。取り込みはキンメダイと異なり魚が浮かんでしまうので(例え鈎から外れても)慌てる事はない。むしろこの釣りのクライマックスである「提灯行列」を堪能したい。
仕掛の回収は魚を外しながらでも、全てを一旦船内に取り込んでからでも、やり易い方法でOK。魚を外した鈎は船縁に順序良く並べ、エサ、仕掛各部を素早くチェックしたら「振り出しに戻る。」一から繰り返せば良い。

ヘビータックルアコウ… 仕掛の投入は基本的に掛枠を使用。船長の合図に従って舳先、又は艫から順に行う。掛枠を海面に対して45度位に構え、合図と共に真下に錘を落とす。リールはクラッチを繋いでおき、仕掛が全て海中に入ってからスプールをフリーにする。バックラッシュやヨリトリ器具&水中灯の重さで道糸が先に出て仕掛と絡む「手前マツリ」を防ぐ工夫だ。

投入にタイムロスが発生すると船がポイントから外れ、最悪全員が空振りとなる可能性もある。故に合図までに準備が整わない、トラブルで仕掛が降りない時は「一回休み」となる。
以降の流れはLTアコウと同様だ。

今日日「満艦飾」にはそうそうお目にはかかれないが、数本連なれば正に壮観。ヘビータックルアコウの「醍醐味」を満喫できよう。 回収もLT同様に魚を外しながらでも、全てを一旦船内に取り込んでからでも、やり易い方法で構わない。魚を外した鈎は磁石板などをセットした船縁に順序良く並べ、掛枠に巻き取れば再使用が可能だ。仕掛二組を交互に使用していけば、次回投入に遅れる事もない。


アコウダイに役立つ!?ディープマスターのワンポイント

鹿島北沖の仕掛は「細・軽・長」
港の南北に「メヌケ釣場」を有し、それぞれ異なるタックルを使用する茨城県鹿島港。ヘビータックルの南沖キーワードが「水深500mの荒根、提灯行列、アブラボウズ」なのに対してLTの北沖は「水深300mの砂泥底、単発~2、3連」。これらを踏まえ、筆者は南北で仕掛を使い分ける。
南沖では20kg以上のアブラボウズも踏まえたフジッシャームツ太地20~22号にハリス20号0.6~0.7m、幹糸30号1.2~1.5mの8本鈎に対し、北沖では鈎が細軸のフジッシャームツ19号、ハリス14号1m、幹糸20号1.8mの5~6本鈎とする。
北沖は南に比べ「魚密度」は下がる傾向だが、砂泥底で存分に送り込む事が出来る。細軸で軽い鈎、細目で長いハリス&幹糸の「細・軽・長」設定でベイトをナチュラルに漂わせ、より効果的なアピールを意識する。南沖でも喰い渋り時はロングハリス6本鈎が奏功のケースあり、仕掛捌きに慣れた方は是非ご参考に。

「糸送り」は臨機応変。
静岡県石廊崎沖アコウポイントでの追い食いテクニックは「アタリ毎に幹糸間隔ずつ」「竿先のテンションを維持しながら」ラインを送り込んでゆくのがセオリー。一気に全体を這わせ込む、際限なく送り続けるは鈎やヨリトリ器具などが根掛りし、最悪仕掛が回収できない可能性も。
しかし上潮が早い場合は「送り込んだ」と思っていても、ラインが潮に押されるだけで実質的な「送り込み」が成されていない可能性も。通常幹糸間隔+α程度の所、一度に2~3倍(以上)を送るイメージが必要なケースも。但し「根掛り」のリスクが消える訳ではないので念のため。闇雲に伸ばすのではなく、船長指示を踏まえつつ行うのが肝心だ。

追い喰い操作は臨機応変。
ある日の静岡県石廊崎沖。基本の追い喰いテクニックに従って仕掛を這わせた同乗者はガッチリ根掛り、幹糸切れに泣いた。同じ釣場でもポイントや潮向き、操船で仕掛操作が変る。カケアガリに正面からぶつける場合は沖メバル宜しく、幹糸間隔ずつ巻上げて追い喰いさせるケースも。独自の釣法を指示する船も有るので初めて乗船する船では特に「その船のスタイル」を予め確認する事をお忘れなき様。

「船上でのサバエサカット法」
時に宙層で仕掛を止めて貴重な一流しを台無しにしてしまうゴマサバだが、これを船上でカットすれば新鮮な身エサが「一回休み」を帳消しにしてくれる事もしばしば。3枚に下して身を削ぎ落とし好みのサイズにカットするのが通常だが、この方法だと

①まな板が必需品
②身を削ぐ一手間に余分な時間を要する という2点のデメリットが。

筆者が多用するのはこの2点を除き、素早く短冊を切り出す三浦の船長直伝の方法。

サバの表皮に切り出したい身餌のサイズ(幅と長さ。角度を調整する事で長短を調整)に浅く包丁を入れ(サバを手に持った状態でも、船縁に置いてもOK。刃で船縁を傷付ける事はない)、次に刃先で表皮をすき取るイメージで「皮に薄く身が付く程度」にすき取ればペラペラ短冊の完成。因みにサバは一旦クーラーに入れて死後硬直の状態にする事で作業がよりスムーズとなる。

海底のフィーリングが「硬く」なったらチャンス到来
錘を着底後一旦海底から離す際。砂泥底に岩礁が点在する釣場では多くの場合、竿先が大きく曲がってから芋掘り宜しく「ズボッ!」と言う感じで錘を引き抜く感触が伝わる。底を取り直してもフィーリングはモヤモヤして硬さが無ければ海底は砂泥。ここで絶対に喰わない訳ではないがアタリの殆どはソコダラやアナゴ類。更に底取りを繰り返す内に竿先に伝わる感触が「コツン、コツン」と硬くなったら岩礁のシグナル。アコウが居付く場所に仕掛が入り「チャンス到来」と認識したい。ここでマメに底を取り直せば、程なくアタリが訪れる…ハズ!?

タコベイトは当初「単独使用」
現在アコウダイ釣りでは当たり前となっている「タコベイト」の使用だが、東京湾口の釣りで初めて登場したのは1977年の春。当時洲ノ崎沖のアコウダイ乗合を出していた神奈川県松輪~三崎周辺の釣船がヤマシタの「ホタルベイト5.0号夜光」を「空鈎仕掛に身餌と交互に単独で鈎掛けする」スタイルを勧めていた。日によってはタコベイトばかり喰う日もあったがムラは否めず、翌シーズンからは「身餌とタコベイトの併用」にシフトし現在に至る。因みにヤマシタのアコウダイ用タコベイトは夜光オンリーからピンク、オレンジとのツートンカラー(ここまでホタルベイト)、高輝度タイプの「パニックベイト根魚」を経て現行「パニックベイトアコウ」2サイズ6色へと進化を遂げている。

かつてアコウダイはギスのエキストラだった!

「何だよ、ダボかぁ」釣人が落胆の声を漏らすオキギスこと標準和名「ギス」は東京湾口~東伊豆のアコウダイやアカムツ釣りではポピュラーなエキストラのひとつ。大型は50cm級でそれなりに肉量もあるが、小骨が多く一般的な調理には向かない半面、年末限定で店舗に登場する一本¥8,000~10,000の「超高級小田原蒲鉾」の原料でもある。
この魚とアコウダイについて神奈川県大磯港の船長が土地の古老に聞いた「昭和の昔話」が驚愕の内容。

かつて同地では「オキギス縄」と称する蒲鉾用ギスの専漁が存在した。「本命」ギスのポイントは砂泥底だが、道具が根の上に入ってしまうと「アコウダイの提灯行列」が浮上する。
正に嬉しい誤算と思いきや「縄の置場を失敗してアコウダイが喰っちまった。これじゃあ商売にならない。」と嘆いたとか。当時アコウダイの市場価格はそれ程低かったのだ。
現在アコウダイやムツは「高級魚」として扱われるが、日本人の食の嗜好が「脂=美味」となったのは肉食文化が普及した明治以降。それ以前は大トロを含む「脂系」は下魚扱いだった。更に言うなら、アコウダイが本当に「高級魚」のポジションを獲得したのは、時代が「平成」になってからの事。これらを踏まえれば、古老の話は充分に納得できる内容だ。今でも小田原の蒲鉾屋では量がまとまればそれなりの値段で引き取るとの話もあるが、それは数十kg、100kg単位での話。大体からしてアコウダイ釣りで売る程ギスが釣れたら「ポイントから外れている」「潮が流れていない」「仕掛が最初から這っている」など、根本的にNGの状況である。

16棘のアコウダイ
アコウダイを筆頭とするメヌケ類の背鰭は本来13棘条(ホウズキのみ12棘条)を有すが、時に数が異なる個体を目にする事がある。これまで目にしたのは明らかに外的要因(怪我など)と判断できる欠損で本数が少ない物が殆どだが、ある時友人から送られてきた画像のアコウダイは背鰭棘が16本もある。友人は「新種じゃないか」とテンション高めだったが恐らく奇形だろうと思い、京都大学の甲斐博士に画像を送った所。
「魚類の背鰭の棘は発生初期に左右の骨が癒合して1本の棘ができるが、その時に何らかの理由で左右にズレが生じた2箇所が計4本あるように見える奇形」との返答。アコウダイに限らずメバル類では稀に見られる現象なのだとか。件の友人にその旨を伝えるとチョッピリ残念そうだったが、この魚の異常に気付いた観察眼は中々の物。実釣テクニックではないが、筆者は「魚を見る目」も釣りの楽しみの一つと考えている。



アコウダイ料理
アコウダイの調理は刺身なら2~3日寝かせてから薄造りや皮目を焼いた炙り。醤油とポン酢のセレクトは好みで。鍋は水炊きを基本に味噌鍋やチゲ、シャブシャブもOK。煮付けは脂に弾かれない濃い目の味で煮上げる。レンジで作る「酒蒸し」は簡単、かつ美味なお勧め料理。
漬物(西京漬、粕漬、さごはち漬、塩麹漬)にすれば冷凍保存可能。脂が乗りつつ、引き締まった白身は唐揚も美味。皮付きで揚げると、皮の食感も楽しめる。

アコウダイ兜の酒蒸し
材料:アコウの兜(半割した頭と胸鰭の部分)・古根(根生姜)・長葱(葉の部分)・塩(天然塩が良い)・日本酒
調理

  1. アコウの兜を半分に割り、強めの塩を振り、深めの器に盛る。
  2. 同量の水で割った日本酒を適宜用意する。
  3. 古根のスライスを2~3枚、長葱の青い部分を縦割りし、兜の上に散らす。
  4. 日本酒を器の深さの半分程度まで注ぐ。
  5. ラッブを二重に被せ、電子レンジで7~10分(兜の大きさにより調整)加熱する。
  6. ラップを剥し、葱・生姜を除いて食卓に出す。そのままで充分味が有るが、好みでポン酢を用意。柚子胡椒が有れば更に引き立つ。

西京漬け

材料:切身/西京味噌/味醂/日本酒/塩
調理

  1. 切身に軽く塩を振り、3時間冷蔵する。
  2. 西京味噌500gに酒・味醂各50ccを加えて練り上げ、味噌床を作る。
  3. 切身の水気を拭き取り、味噌床に漬け込む。直接漬け込んでも構わないが、味噌・ガーゼ・身・ガーゼ・味噌の順に挟んで漬け込めば味だけが染込み、焼く時に味噌を落とす手間が省ける。
  4. 2〜3日漬けると食べ頃。味噌床から出して(直漬けは味噌を洗い落とし、水気を拭いて)1枚ずつラップに包み、冷蔵、または冷凍保存。

※ベニアコウ、クロムツ、キンメ、アブラボウズなど脂のある魚、メダイやマダラなどアッサリ系の何れも可能。画像はベニアコウの調理。

塩糀漬
上記西京漬けは時間と手間が…の向きにお勧めな簡単漬け物。単なる塩焼きとは一味異なる味覚が楽しめる。
材料:切身/チューブ入り「塩糀」
調理

  1. スーパーで売られているチューブ入り「塩糀」を切り身に塗し、1~2日冷蔵すれば完成。 「塩糀」は落す必要がない。長期保存は1枚ずつラップに包み冷凍庫へ。

煮付け
材料:丸魚、切り身、兜の半割など、鍋のサイズや供する状態を踏まえて選択/濃口醤油/日本酒(又は味醂)/砂糖/根生姜又は粗挽き黒胡椒
調理

  1. 丸魚は鱗、鰓、腸を除き、盛付時に上となる左側に浅く切れ込みを入れる。味の滲み込み易さだけでなく、皮が破れて見栄えが悪くなる事を防ぐ配慮。肝は一緒に煮るので捨てずに残す。
  2. 水3:醤油1:酒(又は味醂)1:砂糖1/4を合せて良く混ぜ、生姜の薄切りを加えて強火で煮立てる。生姜を粗挽き黒胡椒少々に置き換える(筆者宅ではこちら)方法も。味醂を使う場合は砂糖の量を減らすが、各調味料の割合はあくまで目安。サッパリ系の魚では薄く、脂の強い魚は濃い目(水を減らして酒や味醂に置き換える)が基本だが、最終的には各自の好みで調整する。煮汁は多目の方が焦げ付きなどの失敗が少ない。
  3. 汁が煮立ったら灰汁を掬い、魚と肝を入れて煮る。
  4. アルミホイルで落し蓋をする。煮汁が上側まで回り、かつ吹き零れない様に火力を調整。灰汁を除きながら10分程煮る。調理時間は魚のサイズや形状(丸・切身・兜)により調整する。
  5. 崩さないように皿に盛付けて供する。

清蒸鮮魚(チンジョンシェンユイ)
中華風蒸し物でハタを使ったものが有名だが、本種でも上等。
材料:蒸し器やレンジに入るサイズの骨付きアコウダイ(丸魚、ブツ切り、兜半割など)
長葱/香菜(パクチー)/根生姜/サラダ油(胡麻油やピーナツ油でも可)/塩/胡椒/レンジ調理の場合は日本酒
掛けダレ用:醤油/オイスターソース/砂糖
調理

  1. 長葱は白い部分を細切りし(今回は太い物1本)冷水に晒す。青い部分はブツ切りにして根ショウガのスライス2~3枚と共に魚を蒸す際に使う。香菜(パクチー)は好みの量を洗っておく。
  2. 鱗と鰓腸を除いた丸魚は盛り付け時に下となる面に隠し包丁を入れ熱の周りを良くする。(兜半割では不要)
  3. 塩、胡椒をしてやや深めの皿に盛った魚を長ネギ(青い部分)、生姜と共に蒸器で8~十数分(魚のサイズで加減)程蒸す。電子レンジを使う場合は日本酒を振り掛け、ラップを二重にして600Wで調理する。
    ※加熱時間は蒸し器同様に魚のサイズで異なる。画像の兜(5kg級)は8分間加熱。
  4. 掛けダレを作る。水100ccに対し醤油30cc、オイスターソース10cc、砂糖2.5gの割合で併せて沸騰させる。画像は水150cc分。
  5. 蒸し上がった魚は皿に溜まった汁を除いて(崩さない様に別皿に移しても可)タレを掛け、晒しネギをタップリ盛る。
  6. サラダ油(又は胡麻油・ピーナツ油)適量を煙が出る程熱し、ネギの上から魚に回し掛ける。
  7. 好みの量の香菜を添えて(香菜が苦手なら無くても可)供す。

アコウダイという魚

アコウダイ
スズキ目メバル科 Sebastes matsubarae
分布:北海道日本海沿岸、青森県~土佐湾の太平洋沿岸、新潟県、富山湾、島根県隠岐・浜田(稀)
日本固有種。体色は一様に橙色だが、成魚では墨と称される不定形、不定位置の黒斑(墨付き)を有する個体がある。目窩下縁に2棘(涙骨と第3眼下骨の下縁)を有し、背鰭13棘。尾鰭の後縁はややくぼむ。大型は80cm、2kg以上。腹膜は黒い。卵胎生で春先に常棲域よりもやや浅みに集結し仔魚を産出する。

関東の深海シーンでは現在も「銚子以南で釣れるのがアコウダイ、以北で釣れるのはメヌケ」なる表現が使われるケースがあるが、 

国内に分布し標準和名に「メヌケ」の3文字を持つ赤い魚はバラメヌケ、ヒレグロメヌケ、アラメヌケ、サンコウメヌケ(俗称ベニアコウ)、アラスカメヌケの5種で標準和名が「メヌケ」と言う魚は存在しない。
※アコウダイを含むこれらの魚は釣り上げると体内のガスが膨張して眼球が突出しデメキンの如き外観となる(目抜け)事から、総称としてのメヌケ(類)と表現するケースはある。

筆者はこれまで銚子以北となる茨城県~福島県沖の複数メヌケ釣場でアコウダイとバラメヌケの混棲を確認(数はアコウダイが圧倒的に多い)しており「銚子から南がアコウダイ」は全くの俗説。学術的には誤った認識である。
但し、同属のウスメバル同様に同一魚種でも釣場により「別物」と認識せざるを得ない味覚差(脂肪の乗り)が生じるのは紛れもない事実。より脂の乗りが良い親潮海域の本種(と他のメヌケ類)を「メヌケ」と称して黒潮海域の個体と区別するなら、それはそれで釣り的には「アリ」かもしれない。

バラメヌケ
スズキ目メバル科 Sebastes baramenuke
国内の分布:北海道~青森県の日本海沿岸、北海道~千葉県銚子沖の太平洋沿岸、相模湾(稀)、新潟県、島根県
アコウダイ若魚と酷似するが、頭部背面に3条の暗色横帯、主鰓蓋骨に暗色斑を有す。眼窩下縁は無棘。背鰭は13棘。「最大40cm程度の小型種」とする文献が殆どだが、茨城県那珂湊~福島県塩屋崎沖で60cm・3kgを複数確認。アコウダイとの識別ポイントは頭部背面に3条の暗色横帯があり、目窩下縁は無棘である事。頭部暗色横帯が不明瞭な個体もあり、確実なのは眼窩の棘数。アコウダイは添付画像のマーク位置に2棘が有るのに対し、本種は無棘。指の腹で眼の下縁を吻に向けてなぞれば確認は容易。

ホウズキ
スズキ目メバル科Hozukius emblemarius
国内の分布:青森県~熊野灘の太平洋沿岸、兵庫県浜坂(稀)、山口県日本海沿岸、九州(~パラオ海嶺)
背鰭12棘、眼窩下縁に3棘、眼窩上後縁に数棘を有す。尾鰭の後縁は窪まない。
アコウダイよりも体色の紅が強く、釣り上げた直後、紅白の縞模様が出る個体も。
白目部分が赤い。アコウダイを筆頭とするメヌケ類がメバル属なのに対し、本種はホウズキ属に分類される。
アコウダイとは別属に分類されているにも拘らず、関東周辺のアコウダイ釣りで普通に混じる30cm程度の若魚は、殆どの場合区別されず「小アコウ」とされる。 やや深所から採捕される成魚はアコウダイに比べて主鰓蓋骨の棘が大きく、体表がややザラ付く印象。

関東周辺の釣りでは小型が主体のホウズキだが、西日本では各船宿の「アコウダイ」釣果画像を見る限りアコウダイよりも本種成魚が圧倒的に数が多く「ホウズキ釣りにアコウダイが混じる」状態。一部「アコウダイとは別の魚」を認識してメヌケと称する船宿もあるが、眼球が突出しない個体がアコウダイより数多い傾向で「目抜けになっていないメヌケ」で難解!?だ。

ヒレグロメヌケ
Sebastes borealis
国内の分布:北海道オホーツク海沿岸、北海道~岩手県の太平洋沿岸国内に分布するメヌケ類の最大種。近年「アコウダイのポイントで10kg超のベニアコウが釣れた」の話題は筆者が画像を確認した限り、全てが本種。 背鰭13棘。背面に不明瞭な暗色斑を有する。背鰭・腹鰭・臀鰭・尾鰭の後縁が黒い事が和名の由来。 

眼窩下縁は無棘。水深400~500mのアコウダイ、アブラボウズ釣りで混獲される。混同されるベニアコウ(オオサガ)と比べやや「面長」の印象。

「ヒレグロメヌケ」が国内では岩手県で初採捕、新種として報告されたのは1970年。筆者より11歳年下の日本で最も若いメヌケ(アコウダイ1880年、アラスカメヌケ1890年、オオサガ1907年、バラメヌケ1917年、アラメヌケ1934年に新種報告)で、和名のはマンマ「鰭が黒いから」。
文献上の分布は北海道~岩手県だが茨城~福島県沖のアブラボウズ狙いではエサ、ジギングを問わず度々船宿HPに登場。過去には相模湾や遠州灘からも「10kgオーバー」の報告がある。
添付画像は茨城県平潟沖の小型(2kg)個体だが「背鰭・腹鰭・臀鰭・尾鰭の後縁が黒い」事でベニアコウ(オオサガ)との違いは一目瞭然。因みに同所でアコウダイ、バラメヌケも採捕しており、本種と両種の混棲も確認済みだ。
本種が「アコウダイ釣場でベニアコウが釣れた」になる原因は

  1. 「ルーツ」の岩手県も含め全国的に知名度が低く、船長や釣人がその存在を知らない。
  2. 存在を知っていても文献上分布が「岩手県以北」のため「相模湾や遠州灘で10kg超のメヌケ類が釣れたらべニアコウ(オオサガ)以外にない」の認識がある。 から。ベニアコウことオオサガは北海道や東北でも水深700m、関東周辺では1,000mラインに棲息しておりアコウダイと棲息水深が被る事はない。「水深400~500mでベニアコウ」は基本的に考え難い事例なのだ。

因みに筆者が「水深400mのベニアコウ」をヒレグロメヌケと確信するまでの経緯は

  1. 30年以上前から相模湾の複数の船宿で「アコウダイ釣場でごく稀に8kg以上のベニアコウが釣れる」の情報を得るが、当時の記録確認は魚拓に頼らざるを得ず。メヌケ類なのは間違いはないが、魚種特定には至らず。
  2. 1998年の神奈川県葉山沖。「鎧摺(あぶずり)の船で13kgのベニアコウ」が「週刊つりニュース」モノクロの囲み記事に。アコウダイ乗合船(水深400m)での釣果との事。「ベニアコウがこんな浅場で釣れるとは。大地震でも来るんじゃないか」と、真顔で言う船長も。
  3. 同年、雑誌「北海道の釣り」が「函館恵山沖のバラメヌケ釣り(水深400m)で16kgヒレグロメヌケ上がる」を見開きで掲載。モノクロながら本種が初めて釣り媒体に正式名称で取り上げられた記事と思われる。
  4. 2003年、東北の釣師HPに「10kg超ベニアコウをキャッチ」なる画像を発見。添付コメントは「400mダチのバラメヌケ釣りで・・・」やや不明瞭な画像ながら明らかに鰭の先端が黒く、本種である事は一目瞭然。相模湾のアコウ場で釣れる「ベニアコウ」も、実は本種なのでは…の仮説が。
  5. 2005年、神奈川県福浦港のアコウ船がアコウ場で13kgニの報。釣果画像未公開で確認に至らず。程無く同県三崎港のアコウ船でも11kgの報あり、特徴が明瞭な船宿HPの画像を京都大学の甲斐博士に転送し「ヒレグロメヌケで間違いなし」のお墨付きを頂く。岩手県以北に分布とされる「ヒレグロメヌケ」の相模湾棲息を確認し「水深400mのベニアコウは本種」の仮説が俄然現実味を帯びる。
  6. 翌2006年4月下旬、神奈川県長井港のアコウダイ船が城ヶ島西沖水深450mで16kgのアコウダイを採捕。写真を入手しを本種と確認する。同年千葉県片貝沖のアコウダイ船でも10kg超の画像を確認。
  7. 07年、海外からビッグニュース。「ベーリング海のタラトロール漁で体長112cm、体重27kgのヒレグロメヌケ漁獲」「あまりの大型に冷凍標本を研究機関に寄贈。耳石調査で100歳以上と判定」「過去にこれより大型個体も漁獲されている」とネットで報じられる。環境や個体差もあり一概には言えないが、10kg超級がいずれも「数十年モノ」なのは間違い無く、大変貴重な1尾と言えよう。

アラメヌケ
Sebastes melanostictus (2008年に学名変更)
国内の分布:北海道~千葉県銚子沖の太平洋沿岸、相模湾(稀)
体背側に黒褐色斑と斑点、頭背面に3条の暗色横帯を有する。眼窩下縁に3~7棘。
「何だよ、汚いアコウだなぁ。」海面に浮かんだ魚を見て、船長が思わず漏らすこの一言。場所も人も違うのに筆者はこの魚と出逢う度に、全く同じ台詞を船上で耳にしてきた。姿形やサイズ・食味の何れも同海域のアコウダイと何ら遜色はないが突出したインパクトも無い。ゆえに見た目が良くない分、低評価されがちだ。
2006年「アラスカのアラメヌケには2種が有る」事が研究者により解明される。当時日本産に関しては研究が待たれる状況だったが、08年に日本魚類学会HPが本種学名はSebastes aleutianus からSebastes melanostictusに変更された旨を掲載。我々釣人には「些細な事」かもしれないが実はこの変更、本来なら「アラメヌケ」の名を根底から覆す大問題だった。

これまで「アラメヌケ」の学名とされてきたSebastes aleutianus(北太平洋西部~中部に分布)の英名は「Rough Eye Rockfish(ラフ・アイ・ロックフィッシュ)。これを直訳すると「凸凹した(粗い)眼の根魚」。これを意訳すると「粗い眼の眼抜け」→「アラメメヌケ」→「アラメヌケ」。偶然の一致にしては出来過ぎだと思い、京都大学の甲斐嘉晃博士にこの旨を質問してみたところ、
「昭和40年、北海道水産試験場の上野達治氏が北海道近海魚類を解説する中で、北太平洋産Sebastes aleutianus が日本に分布する可能性を考慮。英名を参考にして和名を提唱したとの記述※があり、これがアラメヌケの始まりと思われる。」との回答を頂く。
※参考文献:上野達治(1965)北海道近海の魚11.ソイ・メヌケ 類.北水試月報22(12)2-28.
更に「現在はS.aleutianusは日本に分布せず、日本近海のアラメヌケはかつてゴマアコウの和名が与えられていたS.melanostictusに同定すべきだ」とも。確かに「ラフ・アイ・ロックフィッシュ」とは別種となった時点で粗眼を名乗るのはおかしな話。しかし「和名の安定性を考慮すると、これまで通りにアラメヌケを使用すべきと考える。」と結論付け、標準和名「アラメヌケ」は変更される事なく現在に至る。
日本産魚類は毎年新種が報告され和名や属名、学名の変更も相次いでいる。興味のある方は「日本魚類学会」のHPを。

アラスカメヌケ
Sebastes alutus(画像無し)
国内の分布:北海道~宮城県の太平洋沿岸、北海道オホーツク海沿岸
宮城県以北の水深150~300mに分布。40cm程度の小型種。下顎は上顎より前方に突出し、先端に小突起を有す。ベーリング海産は北大西洋産の近似種タイセイヨウアカウオ、オキアカウオと共に「アカウオ」の名で流通。残念ながら筆者は未採捕。


第7話 鬼カサゴ今や青森県~南紀・京丹後まで、広範囲で専門の釣りが行われる中深場のメジャーターゲット。釣場により錘号数・仕掛全長や太さ・鈎数に若干の差は有るものの、共通するのは片天仕掛で釣る事だ。
水深は150~200mがメインだが、地域により数十mの「浅場」や250~300mの「深み」を釣るケースも。
釣場の多くは起伏の少ない「柔らかい根」だが、ほぼ平坦な砂礫・砂泥、逆に荒根も有り海底に応じたテクニックが要求される。
水深・海底環境に応じて多彩なゲストフィッシュが姿を見せるのもこの釣りの魅力。本命と遜色ない、若しくはそれ以上の高級魚との対面も期待出来る。


鬼カサゴの釣場

日本海青森県以南、太平洋茨城県以南に広く分布する本種。近年開拓された東北地方を含め専門の遊漁船が出る有名釣場を紹介。

日本海側
青森県津軽海峡(龍飛崎沖など)
秋田県男鹿半島沖~山形県沖
富山県富山湾
京都府丹後半島沖

太平洋側
千葉県銚子沖~洲ノ崎沖(外房~南房ほぼ全域)
東京湾口沖ノ瀬~神奈川県城ヶ島沖
神奈川県江ノ島~真鶴沖
静岡県熱海~伊豆半島ほぼ全域
駿河湾石花海
遠州灘~三重県大王崎沖
和歌山県白浜~浦神沖


タックルと仕掛

ロッド

7:3~8:2調子の中専用竿、深海対応モデル、青物用ワンピースロッドなど。長さ2m前後が扱い易い。使用錘に見合った錘負荷表示の物を選ぶ。
海面まで抵抗するため、バラシを抑える柔らか目&胴調子を考えがちだが、この釣りでは喰わせる為の底叩きや誘い、渋り時に喰い込ませる「誘いアワセ」が重要なポイント。これを「負け気味」や胴調子竿で演出するには相応の手間と技術を要する。
加えて鬼カサゴの口周辺は比較的頑丈。ドラグ設定が適切なら口切れのリスクは少ない。ゆえに「喰わせ」の優位性から、錘なりのパワーとやや先気味のアクションをセレクトする。但し軽量高感度を追及したヤリイカ専用竿の流用は仕掛の太さ、大型魚のアプローチ(アラ・メダイ・小型イシナギ・避けて通れぬサメ類)を考慮するとお勧めし兼ねる。

アルファタックル適合モデル
HBオニカサゴ 200
デッキスティック フルアームド 73-202・203
デッキスティック フルアームド 82-182・202・183・203

リール…殆どのポイントが水深150~200m前後。高切れなどライントラブルを考慮して3000番、500番にPE4号をフルキャパシティが基本だが、深所を除けばワンサイズ小型の1000番、300番(4号300m)でも対応可能。この場合、予備リール又は予備ラインの持参がお勧め。

仕掛… 釣場・船宿により鈎数や全長・号数に差が有るが、広く使用されるのはムツ鈎16~18号、ハリス6~8号の2本鈎で全長1.8~2m。因みに本項はこの仕掛の使用を前提にテクニック解説をしている。
筆者のこだわりは小振りの鈎と小型サルカン、対照的に太目ハリス。軽い鈎&サルカンを太目のハリスと組み合わせる事で仕掛を潮に乗せ、身餌をよりナチュラルに泳がせる。
アカムツと異なり、鈎の大小による「外れ易さ」は認められない鬼カサゴ。喰いの良さを優先すれば、鈎は軽く、小さい程良い。現状漁業用大袋のみの販売となるが、鯛縄用のKINRYU「柄長鈎15号」がお勧めだ。通常天秤は線径2~2.3Φ、50cm前後。上部にナイロン先糸1mとフジワラ「5連ベアリングスイベル5×5」などの小型ヨリトリ器具。錘は根掛りが少ない場所では鉛製のフジワラ「スカリー」で良いが、天秤ロストの可能性が高い荒根ポイントでは海底に残っても環境負担の少ない鉄製「ワンダーⅠ」を推奨する。ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。

集魚ギミック…発光体は極めて有効。空鈎仕掛の場合はヤマシタ「パニックベイトオニカサゴS」(2.0号相当)を一尾掛け、若しくはチモトにヤマシタ「20倍ビーズ」やルミカ「ルミコグリーン」など。片天上端には親子サルカンをセットし、ここにルミカ「輝泡」などの小型水中灯をブランコ式にセットする。
ミズフグ(ヨリトフグ)やサメが極端に多い場合発行体は取り外すが、全てを除くと本命へのアピールも低くなる。先ずチモト、改善が見られなければ上部、の二段構えが得策。但し地域や船により水中灯は使用禁止の場合もあり、事前に確認の事。

マシュマロボール…チモト周辺のハリスに配し浮力と仕掛降下時に抵抗をプラス、使用時に餌の動きに変化を与えるヤマシタ「マシュマロボールL」は今や本種のみならず、深海釣りの必需品。輝度ありを基本に、サメや水フグ高活性時は輝度なしの「アカムツスペシャル」と使い分ける。深海バケやタコベイト使用の場合はカラーのリンクが大前提。

匂い玉…鈎にはニッコー化成「激臭匂い玉7Φ」一粒を刺し通す。イカゴロテイストの「イカゴロクリアー」「イカゴログロー」、オキアミテイストの「オキアミロッド」「オキアミオレンジ」「オキアミイエロー」の計5色。

深海バケ…藤井商会のフジッシャー毛鈎「フカセネムリ15号」と「改造延縄真鯛12号」をポイントにより使い分ける。基本は細軸軽量のフカセネムリ、大アラやイシナギの混じるポイントでは強度のある改造延縄真鯛をセレクト。カラーは紫・橙・濃緑の定番3色の他、黄緑や水色にも好反応を示す。白(蛍光紫)や黒、低水温時用に赤系(紅・ピンク・赤紫)も用意すれば万全。バケは単体で使用しタコベイトやチモト発行体は併用しない。

餌…複数の付餌を用意する船もあるが、基本はサバ短冊。表皮に薄く身が付いている程度で「身」とは名ばかり。「皮」と表現する方が正しい、ペラペラの物を使用する。
船用意の餌は比較的小振りの物が多くこれでも鬼カサゴは問題なく喰うが、自分の体長と変わらぬサイズのベイトでもお構いなしに喰い付くのがカサゴ類。アピール度と小型(ユメカサゴなども含め)を極力避ける意味合いも兼ね、幅1~1.5cm・長さ15~16cmと大振りのカットがディープマスター流。但しムシガレイやキダイ・アマダイ等、カサゴ類よりも口が小さい魚も視野に入れた「五目釣り」の場合は幅1cm・長さ10cm程度を使用、若しくは併用(一方の鈎に)するケースも有り。

ソウダガツオも効果的。サンマも集魚効果が高いが、千葉県勝浦沖など禁止地区もあるので使用の際は要確認。
スルメイカは鬼カサゴには今一つの感が否めないが、アラやカンコには効果が高い。これらが期待できる釣場では用意したい所。餌取りに強い事からアナゴやサーモン皮、珍しい所では鶏皮も使用される。

各短冊は中心線上なるべく端のチョン掛け、餌持ちに劣るサンマは端を縫い刺し又は折り返す。
他には1尾掛けでカタクチイワシ(下顎から上顎に刺し通す)、ヒイカ(胴先端付近を餌持ちを考慮して軟甲を貫く縦方向)、イイダコ(胴先端を縦方向)などが使用される。
匂い付きワームも実績あり。ニッコー化成「ロールイカタン150cm」全8色を短冊餌同等の長さにカットして使用する。

エサ…魚体サイズにもよるがサバ、ソウダガツオ、スルメイカの短冊は幅1cm、長さ10~13cm程度にカットし、中心線上のなるべく端をチョン掛け。同サイズのサンマ短冊(千葉県勝浦沖では使用禁止)は身を削ぎ、銀色の腹側先端(尾部は尾鰭付根)を縫い刺しする。カタクチイワシや小振りのマイワシは下顎から上顎にハリを刺し通す。ニッコー化成の匂い付イカタン型ワーム「ロールイカタン150cm」は同等サイズにカットし、単体での使用が基本だ。

その他のギミック

サメ被害軽減装置

釣場によってはツノザメ、ナヌカザメなどのアプローチも少なからずの鬼カサゴ釣り。サメ類が捕食に使う鼻先の電気器官「ロレンチニ瓶」に作用する「海園」使用で海底のサメアプローチ軽減(100%回避ではない)を確認済み。「Ver.2イカ直結用」をヨリトリ器具直下に接続して使用する。
筆者は千葉県勝浦沖、駿河湾石花海、静岡県波勝崎沖など各地で「サメは喰わず、本命魚には全く影響なし」を釣果で証明している。

※「海園」をより効果的に使用するための注意点
海水に浸かっている間だけ電流を発生(約100時間)する海園は複数回の使用が可能だが、効果的に使用するために下記の点に留意したい。
1.使用後は必ずぬるま湯での洗浄&乾燥を行う(乾燥材を入れ保管すると更に良い)
2.出力ワイヤーの先端に錆が出ると効果半減。乾燥後CRC等を塗布して錆を抑える
3.錆びが出た場合は先端部分を切り落とし、出力ワイヤーの皮膜を1cm程度剥ぐ(炙り溶かす)
「Ver.2イカ直結用」は保管時に付属スイベルとセンサー電極が接触しないよう注意(通電し電池を消耗する)


実釣テクニック
この解説は全長1.8mの仕掛を使用した際のガイドであり、仕掛長が大きく異なる場合(全長3mなど)は底ダチの高さが異なる事を最初にお断りしておく。
ベーシックポイントと言える岩礁の攻め口は「海底の起伏全てをチェックする」位の気持ちで底を取り直す事だ。錘が着底したら素早く糸フケを除きウネリによる船の上下で錘が海底をトントンと叩く状態を設定すべく海況・釣座・竿の硬軟・長さなどあらゆる条件を考慮し50cm~1m程度底を切る。以降この状態を維持すべくマメに底を取り直す。
時にロッドストローク分を誘い上げる、2~3m巻いて落とす等、イレギュラーな動きを織り交ぜるのも手だが、基本はしつこい程にクラッチON・OFFを繰り返す底の取り直し。
潮が早く、仕掛がすぐに吹き上げられる時は順次ラインを送って底を取り直すが、延々リリースし続ければ仕掛はポイントから外れ、とんでもない場所を流れる事になる。面倒でもある程度伸ばしたら巻上げて再投入しポイントを直撃する。
根掛り連発は釣りにならないが、それを恐れて棚を高く取ればチャンスは激減。同乗者が根掛りしたらポイントの真上と心得、より積極的に底を取り直してアプローチするのが正解だ。
持ち竿での誘いは一見効果的に映るが、身体がクッションの役目を果たして「底叩き」が甘くなるのに加え、船の上下を計算に入れないとイメージほど餌が動かない可能性も。一見手抜きに見えるが、ロッドセレクトと棚設定が正しければキーパーに固定した状態で底ダチを頻繁に取り直す方が確実に餌が踊り、結果アプローチも多い。置竿が持ち竿の釣果を上回るのは釣座や偶然だけの産物ではない。

起伏の少ない砂礫・砂泥底は岩礁と同様の攻め口ではアピールに劣る。「錘が2~3回底を叩いたら1.5~2m誘い上げ、再び落とし…」の攻め口を取る。
アタリは活性次第。喰い気満々の高活性時ならいきなりガクンガクンと明確に竿先を叩くが、低活性時では餌取りとの判別を迷う程微小なアプローチの「前アタリ」で始まるケースも少なくない。前者は基本向うアワセでガッチリゆえ、即座に巻き始めても構わないが、後者では「端を咥えて」で餌を完全に飲み込んでいない事が多くそのまま巻くと餌を放してしまい、鈎掛りには至らない。
置き竿で前アタリが出たら素早くロッドを手に取り、ストローク分を大きく「深呼吸のスピード」でゆっくりと聞き上げる。これが「逃げようとするベイト」の動きを演出してガッチリと喰わせ、同時に確実な鈎掛り(アワセ)に繋がる。
鈎掛り確認後、魚影の濃い釣場ではすぐには巻かずテンションを掛けたまま暫く待つ、ゆっくりと1~2m手巻きで上げるなどのアクションで追い喰いを促すのも「アリ」だが、良型と思しきアタリなら「一尾を確実にキープ」の方向で早めに巻くのが得策だ。
また長時間アタリが無い、小さなアタリをキャッチ後ある程度待っても第2信が訪れないの場合は手前マツリや餌なしが多い。この状態では喰わないので面倒がらずに一旦巻き上げ、チェックする習慣を。

巻上はドラグを調整した中~中高速で、基本的に手持ちで行う。これは釣趣も然る事ながら「喰わせ」ではマイナス要因だった「身体のクッション」がバラシ抑制に有効となるため。強引な高速巻上は論外だが、低速過ぎても魚が必要以上に泳ぎ回って鈎穴が広がり、外れに繋がる。ある程度の速度で巻く方が失敗は少ない。
鰾を持たない鬼カサゴは海面まで上げても元気一杯、鈎が外れれば即座に泳ぎ去る。取り込みはサイズに拘らず玉網のアシストを。
取り込んだ魚の背鰭棘条はその場で鋏やニッパーで切り落とし、海中に投棄してしまうのが安全。この際、親指を口内に差し込み、下顎を指の腹で抑える「バス持ち」にして作業するとやり易い。但し細かいながら結構鋭い歯があるので、下顎を押さえる親指を指サックでガードするのを忘れずに。

ポイントにもよるが、鬼カサゴは基本25cm、理想的には30cm以下はリリースしたい。(この理屈だとフサカサゴはほぼ全てリリースの対象となる)これは20cmに満たないノドクロ(ユメカサゴ)に関しても同様だ。


鬼カサゴに役立つ!?ディープマスターのワンポイント

「海底のフィーリングで棚を変えろ!」
ウネリで錘が底トントン、が鬼カサゴ釣りの基本だが、これはあくまでも岩礁底の場合。砂泥・砂礫底ポイントも混在する神奈川県江ノ島沖などでは、海底のフィーリングによって棚取りを変えて行く事が肝心。糸フケを除き、錘を海底から離す際にズボッ!と引き抜くような感覚や、底叩きが不明瞭に感じられる時は、砂泥・砂礫底と判断し、糸フケを除いてから更に仕掛長分、若しくは+αを巻上げる。但し、オニカサゴを捨てて?アラ専門に狙うなら、常に海底から2~3mの高さに餌を流す事を意識する。海底の状況に関らず、高めの棚設定が「正解」となる。

ディープマスターセレクトの鬼用深海バケは
口周りの皮膚が厚く柔軟で鈎穴が広がり難い鬼カサゴには小型軽量の深海バケをセレクトするのが「ディープマスター流」。
通常の鬼カサゴ釣場では藤井商会の「フカセネムリ15号」が基本となる。この鈎のメリットは喰いの良さだけでなく「鈎が根掛りした際に8号ハリスより先に軸が折れ、回収が容易」という点。肝心の実釣強度は3.5kgバラメヌケ(キチジ釣りの際)を筆頭に最大2.2kg鬼カサゴに2kg超のソイ類、ウッカリカサゴなど多数の実績があり、一般的な鬼カサゴ釣場では全く問題ないと考える。
しかし千葉県銚子沖や勝浦沖、静岡県南~西伊豆沖、駿河湾石花海など8~10kgの大アラや小型イシナギが混じる釣場ではさすがに心許ない。ゆえに「鬼の喰いを優先しつつ、大アラやイシナギが喰っても問題なし」のスタンスで「フォルム小振りで軸太目」の「フジッシャー毛鈎 改造延縄真鯛12号」をセレクトする。余談だが製品のベースとなっている「鯛縄鈎」は黎明期の銭洲コマセ五目(ムロアジ身餌使用)で愛用し実績を上げた筆者「温故知新」の鈎でもある。

超貴重!2kg級の鬼カサゴ
初夏の千葉県勝浦沖で船中4尾もキャッチされた2kg級(1.95~2.35kg)の鬼カサゴ。比較的場荒れの無い海域でも船中1尾上がれば御の字のサイズだけに、この日の釣りは正しく異次元の世界「赤鬼のワンダーランド」に足を踏み込んだ錯覚すら覚えた次第。
冒頭魚種解説の研究に基けば、この日の赤鬼達は筆者と「同級生」レベルとなる。何れにせよウン十年物の超貴重な一尾を釣り上げた際は、心して味わって欲しい。
因みに同日「小さい」とされた筆者の1.6kgも40余年の深海歴で初めて目にするマダラ顔負けにビッグな肝臓の持ち主。もちろん身肉もメチャメチャ美味だった事を付記しておく。

「赤鬼にはビッグベイト」
体の半分以上が頭と言っても過言ではない?鬼カサゴ。当然口も大きく、時に自分の体長近い餌にも喰らい付く。筆者の経験では45cmの鬼カサゴが30cm以上あるタコを丸ごと吐き出した場面も。
又、鬼カサゴポイントには、フサカサゴやユメカサゴ、アヤメカサゴ、ホウズキ、ウッカリカサゴの若齢個体など、小型のカサゴ類も多く混棲する。フサカサゴとユメカサゴはリリースすれば再び海底へ戻って 行くが、他は帰還不能。もちろん唐揚げや味噌汁の出汁で食べる事は出来るが、釣らないで済むならそれにこした事はない。鬼同様に大きな餌にもアタックするので、100%避ける事は不可能だが、餌を大きくする事で確率を下げる事は可能だ。
本命へのアピールと、小型カサゴの鈎掛りを極力避けるために選択するのが幅1.5cm、長さ15~20cmのビッグな短冊。サバかソウダガツオをメインに使用するが、カンコ(ウッカリカサゴ)やアラが狙えるポイントではイカ短冊も効果大。
魚には軽めの塩とタップリのグルタミン酸、イカは塩を振らずにグルタミン酸のみで味付加工。小型軽量の鈎と、太目ハリスの組み合わせで潮に乗せ、ナチュラルに「泳がせる」のがポイントだ。

「鬼は早めに、カンコは寝かせて旨味を引き出す。」
深場根魚を美味しく食するポイントとして、多くに共通するのが「釣り上げてから何日か寝かせ、身を熟成させる事で旨味を引き出す」のがセオリー。しかし、どんな事にも「例外」は存在するもの。
今回のメインターゲットである鬼カサゴ(標準和名イズカサゴ)がそれだ。「伊勢海老を髣髴させる」の声もある独特の肉質は、即日刺身もOK。なまじ寝かせると臭みが出てしまい、折角の美味が台無しになってしまう。3日以上経つと煮付けや唐揚など、濃い味や香辛料での「ごまかし」が必要な場合も。
同じカサゴ類でも、カンコ(標準和名ウッカリカサゴ)は、鬼カサゴとは対極を成す硬質の身。最低2~3日は寝かさないとNG。即日刺身にしよう物なら、「硬いだけで味が無い」「ゴムを噛んでいる様」と酷評されるので、要注意だ。


鬼カサゴ料理
鬼カサゴは身の緩みが他のカサゴ類より早く、置き過ぎると臭みが出るので要注意。
即日OKの刺身は「イセエビを彷彿させる食感」とする声も。薄造りが基本だが、敢えて気持ち厚みに切るのもアリ。胃袋はヌメリをこそいでから湯がいて冷水に取り、細切り。肝と共に刺身に添える。醤油orポン酢はお好みだが、筆者はポン酢がお勧め。
薄めの味でサッと炊く「煮付け」も美味。胃袋と肝を一緒に煮ても良い。

シャブシャブ
皮無し、皮付き両方の薄造りを盛り込むのも有り。頭やカマのぶつ切りを「鍋」として食せば、一度に2品楽しめる。
材料:鬼カサゴ/ポン酢/薬味(浅葱・モミジオロシなど)/出汁昆布/鍋用野菜/豆腐/葛切り
調理

  1. 大皿に薄造りを重ねずに盛り込む。胃袋はヌメリをこそぎ、一口大に切り、肝と共に添える。
  2. 野菜・豆腐は食べ易い大きさに切り、葛きりは戻して別皿に見栄え良く盛り込む。
  3. 鍋に水を張り、出汁昆布を入れて火に掛ける。
  4. 沸騰したら身をシャブシャブし、ポン酢で食す。

カルパッチョ
刺身の目先を変えるならイタリア風の「カルパッチョ」がお勧め。
材料:柵/オリーブオイル/塩/荒挽黒胡椒/オニオンスライス/プチトマト/パプリカ/グリーンリーフ/粉チーズ/パセリ等のハーブ類
調理

  1. オニオンスライスはよく水洗い後に水を張ったボールに移して一晩冷蔵。辛味が抜けてシャキシャキになったらザルに上げて水を切る。
  2. 洋皿にオニオンスライスを敷き、薄造りに引いた身を重ねず、平たく並べて盛り付ける。
  3. 軽く塩・胡椒する。
  4. 適量のオリーブオイルを振り掛ける。掛け過ぎない様、注意。 プチトマトのスライス、パプリカ、グリーンリーフ等を飾って完成。バジル・オレガノ・パセリ(生なら微塵に刻み、軽く絞って)などのハーブや粉チーズを振っても良い。

唐揚
材料:皮付き柵・カマ/揚げ油/小麦又は片栗粉/塩/胡椒/カボチャ/獅子唐/レモン、スダチなどの柑橘類
調理

  1. 皮付き柵やカマの部分を食べ易いサイズに切り分け塩、胡椒で下味を付ける。※醤油と味醂を1:1で合わせて下味を付けると「竜田揚げ」になる。
  2. 粉を塗して150℃の油に1~2分潜らせ、一旦取り出す。
  3. 10分程空気中にさらした後、180℃の油でサッと色付けすれば「表はカリッ、中はジューシー」に仕上がる。
  4. カボチャと獅子唐を素揚げして盛り合わせ、柑橘類を絞って食す。

兜の酒蒸し

材料:刺身(残り物で可)/醤油/味醂/スリゴマ(白)/大根(ツマ)/人参(ツマ)/大葉/穂紫蘇など
調理

  1. 兜は縦に半割りしてやや強めの塩を振り、深めの器に盛る。
  2. 同量の水で割った日本酒を適宜用意する。
  3. 古根のスライスを2~3枚、長葱の青い部分を縦割りし、兜の上に散らす。
  4. 日本酒を器の深さの半分程度まで注ぐ。
  5. ラップを二重に被せ、電子レンジで数分~10分程度(大きさにより調整)加熱する。
  6. ラップを剥し、葱と生姜を除いて食卓に出す。そのままで充分味が有るが、好みでポン酢を用意。柚子胡椒が有れば更に引き立つ。

鰭酒
フグの鰭酒に負けない(より美味との声もある)鬼の鰭酒。注ぐのはもちろん「鬼殺し」!?
材料:胸鰭・尾鰭/日本酒
調理

  1. 切り取った胸鰭と尾鰭を窓ガラスやガラス瓶に貼り付けて乾燥させる。
  2. 焦がさないように炙り、器に入れる。
  3. 日本酒を熱燗にして注ぐ。

鬼カサゴという魚
釣りでの鬼カサゴとは「標準和名オニカサゴ」ではなく、水深100m~250m前後に多く分布し背鰭の棘に刺毒を有す標準和名「イズカサゴ」と「フサカサゴ」の2種を指すのが通常。しかしフサカサゴは最大でも30cm程度のリリース対象サイズであり、50cm・2kg超まで成長し釣趣と食味に優れるイズカサゴ=鬼カサゴと認識したい。 本項ではメインのイズカサゴとフサカサゴ、この釣りで混じる4種のカサゴを識別法も含めて解説。

イズカサゴ
スズキ目フサカサゴ科 Scorpaena neglecta
国内の分布:青森県、茨城県、千葉県外房~九州南岸の太平洋沿岸、山形県~九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、東シナ海大陸棚縁辺域
●背鰭棘に刺毒を有し関東で鬼カサゴ、関西ではオコゼガシラの俗称で呼ばれる。尾鰭、胸鰭、背鰭軟条、臀鰭に暗赤色円斑を多数有することで他のフサカサゴ類と容易に識別可能。雄は背鰭に黒斑を有すが、雌にはない。大型は50cm、2kg超。ここまで成長するのに「数十年要す」なる研究報告も。 鰾(うきぷくろ)を持たず水圧変化に対応、鈎が外れれば泳ぎ去る。

今でこそ関東~関西の広範囲で「メインターゲット」のポジションを確立した本種だが、昭和50年代の千葉県外房地区では「本命(=ムツやキンメ)が釣れない際は仕方ないのでカンコ(標準和名ウッカリカサゴ)と併せて土産作り」なる、いわば苦肉の策的ポジションに甘んじていた。
当時の船長は「あんな物は幾らでも釣れる」と豪語、筆者が「仕立で専門に釣らせてくれ」と頼んだ際に(現在ではとても考えられませんが)「あんたは物好きだなぁ」と言われた記憶が。

80年代後半から暫くの間「ニセフサカサゴ」と言う魚が釣りの鬼カサゴだとされた時期がある。1984年初版の東海大出版「日本産魚類大図鑑」掲載の画像は正に我々が見慣れた「鬼」そのもので、当時は媒体やライター陣も右へ倣えでこの情報をも書き立てたが、後年研究者が「ニセ~」は本種の誤同定であると訂正。この和名は消滅、鬼カサゴ=イズカサゴに統一された経緯がある。
ある研究では「10歳までは成長が早いが、以降は遅く千葉県片貝沖採集の1.7kgは42歳」とされる本種。この論文には「鱗年輪の数え間違い」を指摘する意見も有るが、2kg級がウン十年物の貴重な個体である事に変わりはない。

文献上は「鋭い背鰭棘条に毒があるとされるが、詳しい研究は成されていない」が、船上で棘に手指を刺して腫れ上がった事例は数多く報告されている。筆者が10代後半に近似種コクチフサカサゴ(死魚)の棘を指に刺した際は数分で腕の付根まで激痛を伴い麻痺、回復に半日を要した。
「見栄え」は悪くなるが背鰭棘は釣り上げた直後にニッパーや鋏で切り落とすのが安全だろう。
また本種は細かいながらも結構鋭い歯を顎に有す。取込後背鰭カットの際は親指の腹と人差し指で下顎を掴む、いわゆる「バス持ち」が確実に魚を固定出来て刺されるリスクも少ないが、下顎を支える親指には指サックの装着をお勧めする。
カサゴ類の多くは「寝かす」事で旨味が出るが、イズカサゴは「早めの食」がお勧め。魚専用の氷温庫でも3日置くと身が緩み過ぎ、臭みを感じる場合がある。
鰾が無いので水圧変化に対応、海面まで上げても元気一杯。リリース可能な魚ゆえ、小型は「再会」を期し、若しくは「次の世代」のために、海に戻してやっては如何か。

フサカサゴ
スズキ目フサカサゴ科 Scorpaena onaria
国内の分布:福島県、千葉県外房~九州南岸の太平洋沿岸、北海道・青森県・秋田県の日本海沿岸、新潟県~九州西岸の日本海沿岸(少ない)、奄美大島、沖縄舟状海盆、九州(~パラオ海嶺)
●眼上の「フサ状皮弁」が和名の由来。背鰭棘に刺毒がありイズカサゴと併せて「鬼カサゴ」と称されるが、イズカサゴに比べて寸詰まりのフォルム。25cm程度で最大級。雄は背鰭に一黒斑を有すが、雌にはない。イズカサゴは尾鰭、胸鰭、背鰭軟条、臀鰭に暗赤色円斑を多数有するが、本種はこの斑を持たない事で容易に識別される。鰾を持たず、イズカサゴ同様に鈎が外れれば泳ぎ去る。

イズカサゴに比べて小型の本種だが、成りは小さくても「鬼」である事に変わりは無い。前述の通り背鰭棘条の毒は魚の生死を問わず強烈ゆえ、扱いには充分な注意が必要。イズカサゴと遜色ない上質の身肉だが、そのサイズから調理は煮付けか唐揚、汁物のダシ程度。イズカサゴ同様にリリースOKの魚ゆえ、筆者は研究者の標本依頼など特別な理由が無い限り海に返している。

ヒオドシ
スズキ目フサカサゴ科 Pontinus macrocephalus
国内の分布:小笠原・茨城県~宮崎県の太平洋沿岸・若狭湾・東シナ海大陸棚縁辺域・九州~パラオ海嶺
頭が大きく吻が長い。両眼間隔は無鱗。体は側扁する。体色は一様に赤く、背側に不定形暗色班を有す。胸鰭軟条は全て不分岐(付根から先端まで1本)。
最大の特徴は眼上に有する顕著な紐状肉質皮弁。左右一本ずつの2本がベーシックタイプだが、左右の長さが極端に異なる、 一本しかない、極端に小さい、全くないなど、その形状は変異に富む。

外観からイズカサゴと見間違う釣人も多いが、本種は単独でヒオドシ属に分類される。フサカサゴ属(イズカサゴやフサカサゴ)にはない鰾を持つため、多くの深海魚同様に釣り上げると反転胃、時に眼球の突出を起こして海面に浮かんでしまう。この点でもイズカサゴ、フサカサゴとは簡単に識別可能。
背鰭棘条に刺毒の報告は無いが、棘条を手指に刺せば傷口は相応に痛むし、雑菌の侵入により化膿の危険性もある。毒の有無に係わらず、強い棘条を有するフサカサゴ科魚類の取り扱いには注意が必要。
サイズはフサカサゴ同様、大型で30cm程度。しかし、水圧変化に対応できない本種にはリリースが叶わない。

ウッカリカサゴ
スズキ目メバル科Sebastiscus tertius
国内の分布:青森県津軽海峡へ宮崎県の太平洋沿岸・若狭湾・山口県日本海沿岸・長崎県五島列島~東シナ海大陸棚縁辺域

60cm・3kg以上に成長する大型種。関東全域で一般的に「カンコ」、他にボウチョカサゴ、ボータなどの俗称で呼ばれる。水深100~300mに多いが、これより浅所にも分布する。体側の小白点に明瞭な縁取りを有す。眼窩下縁は無棘。胸鰭軟条数は通常は19本(18~20本の変異有り)。和名の由来は「うっかりしているとカサゴと間違えるから」とされる。老成魚では「墨」と称される不定位置・不定形の小黒班を有する個体もある。生息域は「イズカサゴ」とほぼリンクし、大型は海面近くまでかなりの抵抗を見せ釣人がサメと勘違いするケースも多々あるが、最終的には体内のガスが膨張、「目抜け」状態で浮かび上がる。ゆえに鬼カサゴの様に取り込みで慌てる必要は無い。
かつて本種は「カサゴの深所型」とされ、釣りの世界では「カンコは中深海に棲むカサゴの老成魚である」説が有力だった。しかし1978年に本種が新種記載され、現在は「カンコはウッカリカサゴの俗称である」事が広く認知されている。千葉県外房地区では水深100m以浅で釣れる褐色の強い大型カサゴをハチカサゴと呼びカンコと区別してきた。ハチカサゴは棲息水深と体色から標準和名「カサゴ」の老成魚だとされるが、実際には両種の棲息域はクロスしており水深と体色のみで識別するのはいささか「乱暴」と言わざるを得ない。
ウッカリカサゴとカサゴの識別点は

①体側の小白点。ウッカリカサゴには明瞭な縁取りがあるが、カサゴには縁取りがない。
②胸鰭軟条数。ウッカリカサゴが通常19本に対し、カサゴは18本。

軟条数には若干の変異もあるので、2点を併せての判断がより確実と言えます。 大型は3kg以上、時に4~5kgの怪物級も姿を見せる本種だがその成長は遅く、大型から釣れてしまうのは他の根魚同様。故に「小型しか釣れない」ポイントは相応に攻められていると判断出来、言わば「場荒れのバロメーター」的存在でもある。上質の白身だが「身の締りが良過ぎる」ため、少なくとも2~3日は寝かせてから調理したい魚。薄造りはポン酢で。シャブシャブ、鍋、唐揚、煮付、酒蒸しなどがお勧め。

アヤメカサゴ
スズキ目メバル科Sebastiscus albofasciatus
国内の分布:岩手県角ノ浜~九州南部の太平洋沿岸(茨城県以北は稀)・新潟県~山口県の日本海沿岸(少ない)・瀬戸内海西部(少ない)・九州北岸・西岸・屋久島沖・東シナ海大陸棚縁辺域
やや南寄りに分布する種で30m前後の浅所~水深100m前後の岩礁に棲息。体側に派手な黄色の虫食い状模様、若しくは網目状斑紋を有す。各鰭の黄色味が強い。眼窩下縁に後向きの1棘を有す事でウッカリカサゴ、カサゴと容易に識別可能。胸鰭軟条数は通常17本(16-18本の変異有り)。
筆者若かりし頃、大型で30cm程度の本種を「カンコの正体」と記した釣り媒体があったが、前出の「ハチカサゴはカサゴの老成魚でカンコは別種」説から創作された物と思われる。 

この記事が「ウッカリカサゴ」が記載される78年以前の文献(若しくは知識)を基に書かれた物なら「カサゴでは無いカサゴ属」の選択肢は本種しか無かっと容易に想像される。

ユメカサゴ
スズキ目メバル科Helicolenus hilgendorfi
国内の分布:青森県~薩摩半島の太平洋沿岸・伊豆諸島・秋田県・山形県・富山県・若狭湾~九州北西岸の日本海沿岸・東シナ海大陸棚縁辺域
口腔内から腹膜が黒く、関東では「ノドクロカサゴ」の呼称が一般的。橙の体側に濃い橙の不明瞭な横帯数本を有す。胸鰭上半部後縁と尾鰭後縁は浅く湾入、胸鰭基部の腋部には皮弁がある。。側線鱗数は31で上下に暗色線はない。交尾後に受精卵を産出する「受精卵性」。鰾を持たず深海から釣り上げてもリリースすれば海底へと戻り、特別な装置がなくとも飼育が可能。

天皇海山に分布する「オキカサゴ」は側線鱗数50~55と多い・上顎前端に一対の歯塊が突出・側線上下に暗色線を有すの3点から、同所分布の「ニセオキカサゴ」は側線上下に暗色線を有す点で本種と識別される。 因みに添付の頭部画像個体では上顎前端に一対の歯塊が突出して見えるが、これは本種オス大型個体の傾向で正真正銘のユメカサゴ。同定頂いた京都大学の博士からは「オキカサゴの歯塊突出はかなり派手」とコメントを頂いた。尚、輸入魚を中心に掲載した図鑑「新顔の魚」では1970年版Ⅱでオキカサゴの歯塊突出が「一寸ホウボウの頭を想起させる」と記されている。

近年世間一般では「ノドクロ」若しくは「ノドグロ」の名はアカムツに奪われ多賀城、深海歴30年以上の釣人は「ノドクロ」と言えばこの魚。本種は青森以南~九州、東シナ海まで広く分布し、中深場~深海釣りの「脇役」として最もメジャーな存在として差し支えなかろう。比較的浅所では20cm未満の小型が多いため「金魚」等と呼ばれ軽視されるが、250m以深で場荒れの少ない海域では40cm、1kgを優に超す「ゲストフィッシュ」と呼ぶに相応しい大型も姿を見せる。 筆者が出会った最大は2010年、南紀白浜沖での48cm、1.6kg。正に「イズカサゴ顔負け」の大物だが、船長は「これより大きいのを何尾か獲ってる」と涼しい顔。現在よりずっとマニアックだった関西の深海釣りに「大いなる将来性」感じた瞬間でもある。また高知県室戸沖で深海探査艇が撮影した海底映像では平坦な海底斜面の窪みと言う窪み、全てに前述と遜色ない本種が鎮座するのを確認している。

本種の体色は基本「橙の体側に濃い橙の不明瞭な横帯数本」ですが、時に例外もあり。改修前の神奈川県江ノ島水族館では「堤防で釣れるカサゴその物」の茶色い本種が展示されていた。現在は「新江ノ島水族館」含め深海魚を展示する水槽は周囲を暗く、水温も下げ深海の環境に近付けているため本種とも見慣れた姿で対面出来るが、この時は通常光で飼育されており、保護色で茶色になっていたのだ。 これとは別に沼津港のトロール船が「黒いユメカサゴ」を採集して京都大学で標本同定した所、こちらは正真正銘、非常に珍しい「体色変異個体」と判明した。 釣りシーンでは小型が多いため軽視されがちな本種だが、実は「カサゴ類中最上位」にランクされる美味な魚。良型、特に脂の乗った個体は刺身を筆頭に様々な調理で「本領」を発揮する。前述の通りリリース可能ゆえ「金魚サイズ」とは再会を期すべきだが、本来もっと評価されるべき魚と考える。



第6話 クロムツ

ボウズ覚悟で狙うのは2kg~5kg超の「大」サイズ。緋色ターゲットの様な華やかさはないが、海面下に金茶色の魚体が揺らめく時の高揚感は尋常ではない。釣趣、サイズ、味覚に希少性。大型黒ムツは「黒いダイアモンド」と呼ぶに相応しい魅力を有するターゲットだ。



クロムツの釣場

黒ムツ釣りは中型狙いと大ムツ狙いに大別される。ここでは中型狙いは専門の遊漁船が出る釣場、大ムツは専門の仕立船にヘビータックルキンメ船で狙える釣場も含めた。沖縄ではハマダイ(オナガダイ・現地名アカマチ)釣りに大型が混じるが、ゲストフィッシュの括りのため本項では除いた。

中型
千葉県御宿~千倉沖
千葉県冨浦~勝山沖
東京湾口沖ノ瀬
神奈川県剣崎~城ヶ島沖
静岡県初島沖
静岡県石廊崎沖
静岡県子浦沖~安良里沖
静岡県清水沖
三重県大王崎沖
和歌山県白浜沖

大ムツ
千葉県洲ノ崎沖~東京湾口沖ノ瀬
神奈川県真鶴沖
静岡県八幡野沖
東京都大島沖・利島沖・新島沖
和歌山県白浜沖
高知県室戸沖・足摺岬沖



①中型狙い
千葉県の外房~南房、静岡県南伊豆、三重県大王崎沖など水深150~200mの比較的浅所を中心に35~45cm・1~1.5kg前後の中型個体をメインに据えた釣り。外房~南房では古くからフラッシャーサビキを使うご当地釣法が知られる。多くの場合は早朝が勝負で鬼カサゴやイカなど他の中深場釣りとの2本立てが基本となるが、曇天や濁り潮では長時間喰い続く事も。これとは別に東京湾口など水深250~350mラインで終日狙うケースも有り。使用錘は150~200号中心に、湾口などの深所では250号(以上)。

タックル

ロッド

6:4~7:3調子の2~2.3m、錘負荷表示120~250号のグラスチューブラー素材のアカムツ、中深海、青物用。深所で使用錘が250号を超える場合は後述大ムツ用LT深海ロッドをセレクト。
アルファタックル適合モデル
ディープオデッセイ アカムツ220
ディープインパクト カイザーT
ディープオデッセイ モデルT
HBアカムツ180・200・230
デッキスティック フルアームド 73-202・232・203
デッキスティック フルアームド 64-222

リール…水深200m程度ならPE6号300mキャパシティーの3000番、500番にPE4号(アカムツ用)で可能だが、300m前後を釣る場合は同ポイントに多いクロシビカマス(スミヤキ・ヨロ)やタチモドキの縄切り禍も踏まえ、ワンサイズ大きい6000番、800番の使用が望ましい。

仕掛… 鈎数5~6本のベーシックな胴突仕掛が基本。鈎は特殊形状でムツやクロシビカマス、タチモドキのの鋭い歯によるチモト切れを抑える「ホタ」16号がお勧め。ハリス8~10号70cm~1m、幹糸12~14号1.5~2m。捨て糸は8号を1~1.5m程度。 仕掛上部のヨリトリ器具はフジワラ「深海用リングSS」やなど小型の物で可。大型錘の深所は「深海用リングS」でも良い。 フラッシャーサビキ(エサを付けず単独使用が基本)の釣りでは船宿の物を購入が無難。ヨリトリ器具は「チビリング」や「5連ベアリングスイベル」など。 錘は特に指定がない場合は根掛りや縄切り禍で海底に残っても環境への負担が少ない鉄製のフジワラ「ワンダーⅠ」を推奨する。

アピールグッズ…以前は「ムツは光り物を好まない」とされ、アピールグッズを配さないシンプルな物が中心だったが、現実には筆者各地の釣りで水中灯や深海バケなどアピールグッズに実績あり。決してデコレーションNGではない。胴突仕掛に配すギミックは後述大ムツに準ずるが、ハリスに通す「マシュマロボールL」は基本1個。

深海バケ…藤井商会「フジッシャー毛鈎ホタ16号」がお勧め。実績カラーは紫、橙、紅色、ピンク。

エサ…魚体サイズにもよるがサバ、ソウダガツオ、スルメイカの短冊は幅1cm、長さ10~13cm程度にカットし、中心線上のなるべく端をチョン掛け。同サイズのサンマ短冊(千葉県勝浦沖では使用禁止)は身を削ぎ、銀色の腹側先端(尾部は尾鰭付根)を縫い刺しする。カタクチイワシや小振りのマイワシは下顎から上顎にハリを刺し通す。ニッコー化成の匂い付イカタン型ワーム「ロールイカタン150cm」は同等サイズにカットし、単体での使用が基本だ。

その他のギミック
サメ被害軽減装置

サメによる奪い喰いが多発する場合は仕掛上部に「海園Ver.2イカ直結用」をセットする事で被害軽減が期待出来る。②水深200m以深の釣りその他のギミックの項で詳しく解説。
磁石板
全ての釣場で手前マツリ防止に有効。船に設置されていない場合は持参がお勧め。使用する鈎数に応じて長さをセレクトする。



②地先の大ムツ狙い
神奈川県真鶴や静岡県東伊豆、東京湾口沖ノ瀬などの「大ムツポイント」で大型専門に狙うスタイル。基本的に仕立船の釣りとなる。4~5kg超の大物も期待できる半面、基本的にボウズ覚悟の「ハイリスク&ハイリターン」。確実性を望む向きにはお勧めできない釣りだ。

タックル

ロッド
6:4~7:3調子の2~2.3m、錘負荷表示150~300号のLT深海ロッドがベストマッチ。確実な底取りと明確な目感度、身餌を適度に躍らせつつ口切れバラシを抑える絶妙な復原力を兼ね備えたグラスチューブラー製が一押しだ。錘を海底から1~2m浮かせてアタリを待つため、オニカサゴやアコウダイには必須条件である「底トントン」を積極的に演出する事はしない。バラシを抑える事を最優先に考え、使用錘に対し「ややライト」を意識したセレクトがセオリーだ。

アルファタックル適合モデル
ディープインパクトLight220
ディープインパクトTERUスタイルRT-0
ディープオデッセイ モデルTT

リール…PE6号を600m以上巻けるモデル。縄切り魚による道糸切れはある程度避けられず、水深の2倍はラインを巻きたい。真鶴や東伊豆での「お約束」大型バラムツやツノザメを短時間で巻上げ、タイムロスをカットするハイパワーも必要不可欠。ミヤエポックAC-3JPC、S社6000番、D社800番

仕掛…鈎数4~6本の胴突仕掛。ハリス14~16号1.5~2.5m、幹糸20~24号3~5mと長めの設定。捨て糸は10号1.5~2m。鈎はホタでKINRYUなら17号、藤井商会は18号。
余談だがこのハリは筆者が二十数年前、神津島のクロムツ漁師に勧められて「漁業用」を大ムツ釣りに使い始めた物。その後廃番となるが、特殊な形状でムツやスミヤキによる「チモト切れ」が皆無に等しく、鈎外れもし難い利点は捨てがたく、製造所に頼み込んで特注生産。これにフジッシャー加工を依頼した藤井商会が「16号」を発売し近年のアカムツブームでニーズが拡大、複数メーカーから15~20号が再販の経緯がある。
神奈川県真鶴岩港「緑龍丸」のオリジナル仕掛はハリスチモトから50cmの位置に発泡丸シモリを配すが、この仕掛は船縁にハリを並べ、オモリを放り投げる一般的な方法や掛枠ではスムーズに投入出来ないため、以下の手順をとる。

  1. 両人差し指に指サックをはめる。
  2. 順序良く船縁に仕掛を並べる。
  3. 一番下鈎の位置に立ち、ロッド側を向く。
  4. 海側の人差し指に捨て糸を掛けてオモリを吊し、船側の手は一番下のサルカンを握る。
  5. 合図と共に錘を海中に入れ、海側の手で下鈎ハリスのチモトに近い部分を摘み、鈎を軽く前方に投げ込む。
  6. 船側の手のホールドを緩める。海側の人差し指で素早く幹糸を掬い上げるようにし指サックの上(指の腹側)を滑らせる。
  7. 2番目のサルカンが船側の手に触れた所で再びホールドし、
  8. 海側の手でハリスのチモトに近い部分を摘んで、下から2本目の鈎を軽く前方に投げ込む。
  9. 以降繰り返し行い、投入完了。

この際のポイントは投入しながら、船縁に沿って自分がロッドに近付いて行く事。投入開始時の立ち位置はロッドから遠いが、終了時点ではロッドのすぐ横となる。 尚シモリ玉を配さない一般的な仕掛(マシュマロボール使用も含め)を使用する船では単純な投げ込み、掛枠での投入も可能。
仕掛上端にはフジワラ「深海用リングS」等の中型ヨリトリ器具と水中灯を配す。
錘は300号が標準。根掛りや縄切り禍で海底に残っても環境への負担が少ない鉄製のフジワラ「ワンダーⅠ」を推奨する。ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。

集魚ギミック

深海バケ…藤井商会「フジッシャー毛鈎ホタ18号」が適合。実績カラーは中型同様の紫、橙、紅色、ピンク。

エサ… 身餌はサンマ半身の斜め半割ビッグベイトをメインに、幅1.5cm、長さ15~20cmと大振りにカットしたサバやソウダガツオ短冊、開いたスルメイカの胴を縦方向にカットし全長の2/3程スリットを入れた大振りの短冊など。サンマは胸鰭の付根、尾鰭の付根を利用してハリ掛けし、他の短冊エサは中心線上のなるべく端をチョン掛けにする。
特餌とされるのがスルメイカ肝付ゲソを眉間から半割、5本のセンターとなる鰭脚に鈎掛けする「肝付ゲソ半割」。特にサンマ使用禁止地区では有効なベイトだ。

他にヒイカや小型ヤリイカの一杯掛け(胴先端付近をエサ持ちを考慮して軟甲を貫く縦方向に鈎掛け)やイワシ1尾掛け(下顎から上顎に鈎掛け)なども使用される。また春先は手に入れば活ムギイカを使用する場合も。この場合鈎は胴先端横のエンペラを縦方向に刺し通す。
疑似餌はニッコー化成「ロールイカタン150cm」を身餌同等の長さにカットして使用。 ニッコーベイトは東伊豆八幡野沖での船長試釣での5kgを筆頭に、複数の大ムツキャッチの実績あり。 

終日交換不要で手指や船も汚れず、常温保存でOK。サメのアプローチが少ない利点もある。

その他のギミック
サメ被害軽減装置「海園」

「海園Ver.2イカ直結用」をヨリトリ器具の下に接続して使用すれば宙層の奪い喰いだけでなく、海底でのツノザメアプローチ軽減も期待できる。
磁石版
ロングハリス仕掛の手前マツリ防止に極めて有効なギミック。船に設置されていない場合は持参がお勧め。基本鈎数が少ないので短い物でOK。



③大ムツ ヘビータックルキンメポイントでの釣り
東京都新島沖、東京都大島沖、和歌山県白浜沖などの大ムツが混じるキンメダイ釣場で専用仕掛を使用、若しくはキンメ仕掛の下鈎数本にビッグベイトを配して狙う。キンメ釣りの余禄をより高確率で、のスタンスとなる。

タックル

ロッド
ヘビータックルキンメの流用。使用オモリに対し「やや負け気味」となるグラス素材の深海専用ロッドをセレクト。巻上時の復原力を抑え、口切れに配慮するのがセオリー。 口切れを抑えるクッション効果と、竿が絞られる見た目の面白さは長い程優れるが、捨てオモリ式の新島沖では上潮が速いと取り込み時にラインが前方に流れ、ロッドが長いと「ラインを掴むのに一苦労」する場合が。これら条件を踏まえると2m程度がベストレングス。 

アルファタックル適合モデル
ディープインパクト カイザーG
ディープオデッセイ モデルG
ディープインパクトTERUスタイルRTⅠ
ディープインパクトTERUスタイルSⅠ
スーパーディープクルーザーⅠ
リール…高強度PE10~12号を1,000m以上巻いた大型電動リール。ミヤエポックZ9~Z15サイズが基本。

仕掛…ハリス16号1.5m、幹糸24~30号3m。鈎はホタでKINRYUなら17号、藤井商会は18号。 このスペックで

  1. 10本鈎の大ムツ専用バージョンとする(全鈎大ムツ用ビッグベイト)
  2. キンメ仕掛下部数本を大ムツ仕掛に差替える(ムツ仕掛部分にビッグベイト)の2パターンと
  3. キンメ仕掛のまま下鈎数本をムツ用ビッグベイトにする3つの方法がある。

捨て糸は釣場や船宿により指示が異なるが、12号を3~9m。14号を使用する場合は捨て糸を切り易い様、ダンゴ結びでコブを1箇所造っておく。これ以上太い号柄は捨て糸をカットする際、リールのギアやロッドに無用な負荷を与えるだけなので、使用しない。
上端にミヤエポックヨリトリWベアリング」「キャラマンリングⅡ型」などの大型ヨリトリ器具+ヤマシタ「ゴムヨリトリ」5mmφ1mを配す。錘は船宿用意の鉄筋、若しくは船宿指定重量のフジワラ「ワンダーⅠ」を使用する。 ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。

集魚ギミック
ルミカ「クアトロレッド」等の赤色発光体を仕掛上部、若しくはセンター付近に配すと効果的。但し潮の動きが鈍い際にはカラスザメを引き寄せる事も。状況に応じたフレックスな対応が必要だ。ハリスにはヤマシタ「マシュマロボールL」を配し、浮力とフォール時の抵抗を利用してアピール。深海バケと併用の際は双方のカラーをリンクさせる。また各鈎にニッコー化成「激臭匂い玉7Φ」を配すのがディープマスター流。

深海バケ… 藤井商会「フジッシャー毛鈎ホタ18号」が適合。

エサ… 地先の大ムツに準ずるが、東京都新島沖ではサンマ餌の使用が禁止されている。

その他のギミック
サメ被害軽減装置「海園」

巻上開始の時点で「海園Ver.2」のカラビナを道糸にセット(引っ掛ける)して海中に投下する。中型・地先の釣りと同様に「Ver.2イカ直結用」をヨリトリ器具直下に配してもOKだが、特に「根切り前提」の新島沖では根切時の仕掛ロストやライン切れリスクを考慮した「巻上時セット」が得策だろう。
磁石版
回収再使用が前提の場合は必須。「一投使い切り」基本のヘビータックルキンメ船には装備されていない事が多く基本持参。鈎数に因るが長さ1~1.5mの物が使い易い。



実釣テクニック
①基本スタイル(中型・地先大ムツ共通)
投入は釣場や船により「一斉」や「順番」があるので、事前に確認の事。
オモリが着底したら素早く糸フケを除き、錘を海底から1~2m(船長指示があればその高さ)上げた状態を維持してアタリを待つ。ポイントの多くは荒根で、カケ上がり、若しくは下がりを攻めるケースが殆ど。維持は「放置」ではなく根掛りや宙ブラリンを避けるべく、底ダチをマメに取り直す事をであり、同時にこれが誘いのムーブに繋がる。

竿先を叩くムツのアタリは明確。中型狙いでは喰い上げるケースも有るが、大型でアタリの後に煽り(や大きな糸フケ)が出ない事がエキストラのバラムツとの識別ポイントとなる。
中型はカケ上がりや喰い上げなら幹糸間隔分、又は糸フケ分を順次巻き取り、ほぼ平坦ならそのまま、下がりで深くなる様なら順次底を取り直しながら、それぞれ追い喰いを促して一度に複数を鈎掛けするよう心掛ける。

対して一日粘ってもワンチャンスすら訪れない可能性もある大ムツ狙いでは本命と確信できるアタリが訪れたら、速やかに巻き上げるのが得策。
巻上はドラグを調整した中~中低速。強引な巻き上げは論外だが、必要以上のスロー巻きも魚が暴れて鈎穴が広がり、外れの原因となるのでNG。大ムツは(水深や個体による差もあるが)250m前後で一際激しく抵抗。ここで外れる事が多いので要注意。

100mラインの釣りでも最後は体内のガスが膨張して海面に腹を返すので、取り込みを慌てる必要はない。大ムツの場合、巻上が終わって糸を掴んだ掌に錘の重さを感じなければ本命のサイン。程無く海面に泡が弾け、金茶色の魚体が浮かび上がる。
中型の取り込みは魚が重なり合わないように注意して一旦仕掛を全て船内に取り込んでから処理しても、外しながら仕掛を並べてもOK。各自やり易い方法を取る。

長大な大ムツ仕掛は順序よく並べながら取り込んで行かないと再使用が不可能となる。空鈎は船縁に並べ、魚はイスの内側に取り込む(キャビン横の釣座は不可能だが)ようにすれば、仕掛がグシャグシャのトラブルを防げる。シモリやマシュマロボールは同カラーを連続させず、順番を覚えておけば万一取込時に鈎が交差しても容易に認識できる。

黒ムツの歯に関しては冒頭でも述べたが、エキストラにもクロシビカマス(スミヤキ・ヨロ)、タチモドキ、バラムツなど鋭い歯を持つ魚が少なからず。特にクロシビカマスとタチモドキの牙はムツ以上の切れ味を有すので、鈎外しはプライヤーやフックリムーバーを活用し、充分注意して行いたい。
魚が掛った鈎はもちろんだが、エサを盗られた鈎も先とチモト周辺ハリスの傷を必ずチェックする習慣を付け、先の甘くなった物や傷付いた、縮れたハリスは速やかに交換。次回投入に備える。

②ヘビータックルキンメポイントでの大ムツ狙い
釣法はその地区のキンメのスタイルに従って行う。 第1話「キンメダイ」ヘビータックルキンメの項と重複するが

投入
基本的に掛枠での投入。船長の合図に従い、舳先、又は艫から順に仕掛を下ろす。
合図と同時に投入できるよう、全ての準備を整えておく。船長は潮の流れと人数を計算して投入ポイントを設定するが、ここには「モタ付き、失敗によるロスタイム」は基本的に含まれていないから、合図で投入できない場合は「一回休み」を厳守する。
投入の遅れは自身だけでなく、「後から投入する同乗者の仕掛が着底時にポイントから外れる可能性がある」事を忘れずに臨んで欲しい。
投入時は片手で握った掛枠を海面に対し45度程度に構え、合図と共に錘を「落とす」(放り投げると捨て糸が切れる場合有り)。これで仕掛はパラパラと順序良く海中に投入される。
この時、リールはフリーにせず、仕掛が全て海中に入ってからスプールをサミングしつつフリーにするのがポイント。予めフリーにすると投入のショックでバックラッシュする、ヨリ取りの重さで道糸が先に海中に入り、手前マツリするなどのトラブルとなるからだ。投入時のトラブル軽減にヨリトリ器具ホールド用クリップを活用するのも一手だ。

アタリ~追い喰い
船長の計算通りに着底すれば直後、時にそれ以前(この場合は「喰い上げ」となる)にアタリが出るが、そうは上手くは行かないのが現実。アタリが無ければ速やかに糸フケを除き、錘が海底を船の上下でトン、トンと叩く状態をキープしてアタリを待つ。
竿や海況による底の切り具合や底を取り直す頻度など、一尾目を喰わせる誘いのテクニックが各自の腕の見せ所、釣果に差が付くポイントだ。但し東京都新島沖などでは潮が速い際「ラインを張らずにどんどん送る」の指示が出る事も。
アタリをキャッチしたらすぐに船長に合図、も忘れてはならないポイント。どの辺りで喰って来たか、どんな反応で喰ったのか、次回投入の判断材料となるからだ。
アタリ後の操作はポイントや潮況、操船スタイルにより異なる。
大別すると

さりとて闇雲にラインを送り込んで仕掛が海底を這ってしまうとアナゴやソコダラなどが喰い付き本命の追釣が望めない、複数の鈎が根掛りし仕掛が回収できない等、トラブルの要因にも。
竿先が一定の角度で曲がりつつ、ラインが張った状態を維持して送るのが基本だが、潮の遅速やポイントにより「弛め気味」「伸ばすな」など、投入毎に船長から細かな指示が出るケースもあり、アナウンスを聞き洩らさぬ様留意したい。
例えば「壁」と呼ばれる断崖絶壁ポイントでラインをリリースすれば、仕掛が斜面に貼り付き、100%回収不能。底トントンでアタリをキャッチしたら決してラインを送らずに船長の合図を待ち、根掛りさせた錘だけを捨てて巻き上げる。6m以上の捨て糸はこのポイントでハリの根掛りを防ぐための設定だ。
何れにせよ、アタリ後の糸送りで釣果が決まる、としても過言ではない。糸送りは「新島釣法」の要と心得て、船長のアナウンスを聞き逃さず、確実に実践する事が肝心。指示と異なる仕掛操作は自身の釣果のみなず、オマツリ誘発など同乗者に多大な迷惑が掛るため、決して行ってはならない。 

巻上
投入同様、船長の指示に従って行う。基本的に錘が付いるパターン1&2は最初からドラグを充分調整した低速気味で、緩急を付けず一定のペースで巻く。但し錘が切れている場合はある程度スピードアップし、錘が無いための「糸フケ」や魚が自由に泳ぎ回る事で発生する同乗者とのオマツリを防ぐ配慮を。
パターン3は「先に巻き始めた仕掛けを追い越さない巻上速度設定」が回収時のオマツリを軽減するが、捨て糸が切れた場合はラインが「立つ」まではある程度の速度で巻上げ、以降スローダウンする。巻上開始時は実水深より余分にラインが出ているのを踏まえ「巻上時間を短縮して効率を上げる」と、オモリが無い事によるオマツリの軽減を意識した物。この釣法でも錘が残っている場合は最初からドラグを調整した低速気味で緩急付けず一定のペースで巻くが、錘が無くても極端な早潮で終始前方にラインが走っている(若しくは同等の操船)ケースでは「錘有り」同様に終始低速気味で行う。また、巻上中に次回投入する仕掛を準備しておく事も忘れずに。
如何にサメをスピーディーに処理し被害を最小限に抑えるか、が重要なのだ。

通常オマツリは「上から順に解いてゆく」が、サメがハリ掛りしていたらそんな事は言っていられない。仕掛けがグチャグチャになろうが構わず、先ず「サメが掛かっているハリスをカットする」が最優先。応用が利かない同乗者とのオマツリでアカムツ付ラインをロスとした苦い経験が事が幾度もあった。2~3本バリのアカムツ仕掛は複雑に絡んでしまったら解くよりもサルカンの付根でカットして幹とハリス付ハリに分解、深海簡易結びで結び直す方が余程スピーディー。「何番目のハリに掛っていようと、一番最初にサメの処理」を徹底したい。

捨て糸の切り方
意図的に根掛りさせる③新島釣法の場合、巻上は捨て糸を切る事からスタートする。 先ず糸フケを完全に巻き取り、ロッドが絞られた状態で一旦巻上をストップ。ドラグを目一杯まで締め込み、船の移動で捨て糸が切れるのを待つ。仕掛けを這わせ過ぎて鈎が根掛りし、容易に処理できない場合はタックルを傷める前に速やかにラインをリリース。船のボーズなどに巻き付けて切る。リールの巻上力に任せて強引に引き千切る行為はギアやロッドを傷める、キーパー脱落等のリスクを有し、厳禁だ。

取り込み
キンメ仕掛若しくは下部連結の場合、効率優先で仕掛の再使用は考えない「一投使い切り」が基本のスタンス。玉網のアシストを受けつつ仕掛をどんどん船内に引き上げ、速やかに新しい仕掛をセットして次回投入に備える。
※鈎数10本程度の専用仕掛は磁石版を用意して鈎を並べながら取込み、次回投入後に掛枠に巻いて2組を交互に使用する回収~再使用も可能だ。


黒ムツ釣りに役立つ!?ディープマスターのワンポイント

黒にはビッグ、赤ならスモール。ターゲットで変わるベイトサイズ。
同じようなサイズでも黒ムツは大振り、アカムツは小振りのエサを好む傾向がある。ある日の東伊豆沖、黒赤両狙い5本鈎仕掛では、黒ムツの確率が高い早朝には下鈎と一番上のみ小振りのサバ(下がアカムツ、上は混じりのフウセンキンメ狙い)、センター3本はサンマの半身斜め半割のビッグベイトを配す。日が高くなる中盤以降はアカムツメインで下2本と一番上がサバ、3~4本目をサンマとし、思惑通りに3魚種全てを手中に収めた。もちろん、ビッグベイトにアカムツやキンメがアプローチする場合も、その逆もあるが、要は「確率」の問題。深海バケのカラーも同様だが、自らのセレクトで思惑通りの結果が出れば「より面白い」釣りになるハズだ。

喰うは一刻。チャンスを逃がすな。
何の魚でも終日ダラダラと喰い続く事など殆どないが、黒ムツ(特に大型)釣りでは特に顕著に感じる事が多い。かつて真鶴沖で3人で5.6~5.8kg3本含む大ムツ7本(+鈎外れ3回)を開始2時間でキャッチ、8時に早上がりの爆釣を体験したが、この話には続きがある。我々が帰港するのを見て直後に別船がポイントに入るも、以降バラムツとの入れ喰いとなり本命は型見ず。
別の日には朝イチからバラムツ入れ喰いでリールがオーバーヒート状態で水を掛けながら巻き上げ、昼前に仕掛が底を突き急遽船上で製作と、正に辟易したが。午後2時、バラムツの猛攻がピタッと止むと本命連発。終日攻めて船中型を見れば御の字の釣場を2名3回流しで2.6~4.5kg4本(鈎外れ1回)を筆頭に、こと大ムツでは「ワンチャンス」で勝敗が決した事は数知れず。
このタイミングを逸すれば本命を手にする事は叶わない。 喰うのは一刻だが、深所の大型狙いでは必ずしも朝一と夕方が好機ではない。何時訪れるか知れない「その瞬間」にベストコンディションで臨むべく、ラスト一投まで気力・体力を温存する「ペース配分」もこの釣りの重要な要素となる。

メダイが釣れたらティータイム!?
メダイは多くの黒ムツポイントで姿を見せる魚。大型は釣趣、味覚共にゲストフィッシュとして充分に通用する存在だが、この魚が活発に口を使うのは潮止り間際。専門狙いではそれまで全く口を使わなかった反応が投入毎に全員ヒットの荒喰いを見せるが、潮が完全に止まると再び沈黙。ある意味非常に判り易い魚でもある。ゆえにこの魚が鈎掛りして来たら潮止り間際。黒ムツの「チャンスタイム」は終了の合図でもある。ここでシャカリキに攻めても結果は殆ど望めない。必要最低限の棚取り直し&根掛り回避で「一服」し、次のチャンス迄気力・体力を温存するのが得策。特に終日の大ムツ狙いなど長丁場では好機に「全集中」すべく、ペース配分は必須。「空回り」しないためにも自身のみならず、周囲の釣果も常にチェックする習慣を持ちたい。

クロムツはエビがお好き?
深海魚の多くは採集時は胃袋を吐き出す「反転胃」となるため、内容物が残らず食性の解明は難しいが、黒ムツではごく稀に鋭い歯に胃内容物が掛って残る事がある。神奈川県真鶴沖では6kg弱の大ムツにアカザエビ、静岡県初島沖では中型個体にショウジョウエビ(深海性の真っ赤なエビ)が口内に残るのを確認した。
千葉県南房総の中型狙いで「紅色やピンクのフラッシャーサビキが有効」とされる事も含め、エビ類が主食の一部なのを疑う余地はない。但し釣りエサとしては専らサンマ(禁止地域あり)を筆頭にサバやイカの短冊、カタクチイワシや小型イカの1尾掛けが使用され、現状エビ類はほぼ皆無。「本物」ではエサ持ちやコスト、効率に問題があるかだろうが、エビ型、ザリガニ型のワームには少なからず可能性を感じる。テレビやYouTubeで紹介された「ストローで作るエビ」とか、面白いかも!?


黒ムツ料理

「黒ムツ」本来の旨さが出るの少なくとも1kg以上、生食なら脂の乗りと身肉の舌触りに優れる2kg前後~3kg未満を推す。4kg以上では熟成させても筋が口に残り、身の肌理にも粗さを感じる。大物は西京漬けや味噌漬け、煮付け等の加熱調理が良い。
小型(40cm未満)は脂の乗りが未熟で肉質も水っぽさが否めず、塩焼きや煮付けがお勧めだ。
尚、ウロコの剥がれ易い本種は必ずビニール袋で包んでから海水氷のクーラーに収納。氷との摩擦で鱗が剥がれ、身肉が水を食い劣化するのを防ぐ。極上の味覚を損ねずに持ち帰るための一手間だ。

活け造り

材料:丸魚一尾(1.5~2.5kgがベスト)/山葵/大根/大葉/穂紫蘇/紅蓼/パセリ/柑橘類(レモン・スダチ等)

調理

  1. 魚は胸鰭周辺(カマ部)以外の鱗を引き、鰓・腸を除く。鰓を外す際、付根を切らない様、注意。腸は腹鰭から肛門の間を切って取り出す。活け造りでは尾・頭も料理の一部。見た目が汚くならない様、注意する。
  2. 中骨に頭・カマを付けたまま三枚に下す。左半身は背鰭に沿うように包丁を入れ、背骨に切っ先を当てながら中骨を擦る様、尾に向かって切り進む。
  3. 魚を180°回転させ、腹側は尾の付根から包丁を入れる。背側と同様に頭に向かい、肛門まで切り進む。
  4. 尾の付根から包丁を入れ、背骨中央を頭に向けて切り進む。腹骨の付根を断ちながら、首の付根まで切る。
  5. 頭頂部から胸鰭下を袈裟切りし、左半身を外す。
  6. 右半身は頭をまな板から外して下す。身が反り返らず、頭を落とした状態に近付くので、下ろし易い。 右は背側が尾から頭、腹側は肛門から尾に向けて包丁を入れ、以降は左側と同様に切って身を外す。
  7. 腹骨を剥き取り、枝骨を毛抜きで抜き取る。大型なら背節・腹節に分けこの時枝骨を削ぎ落とせば毛抜きで抜く手間が省ける。
  8. 皮を引く。湯引きや焼き霜造りを盛り込む場合は後述②③を参照。
  9. 平造り、若しくは削ぎ切りにする。バリエーションとして鞍掛け(平造りのセンターに切り込み)に切り、レモンスライスを挟む「レモン〆」。
  10. 削ぎ切りの尾側をクルリと巻いて芯とし、これに削ぎ身を版の小さい物から順に巻き付け、形を整えると「花盛り」になる。
  11. 大根でツマを作る。尾と頭を固定する台も大根を使うので、この分は残しておく。13.尾・頭を皿に盛る。見栄えよく形を整え、竹串や楊枝を使って大根の台に固定する。
  12. 大根のツマ・大葉を敷いて盛り付けの土台を作り、刺身を形よく盛り込む。
  13. 穂紫蘇、パセリ、柑橘類、山葵などを彩りよく添える。

湯引き
材料:皮付きの半身、若しくは柵/山葵/大根(ツマ)/人参(ツマ)/大葉
調理

  1. 柵は表皮を上にしてまな板に置く。
  2. 表皮にまんべんなく熱湯を掛ける。この時布巾を掛けると均等に熱が回る。
  3. 氷水にくぐらせて粗熱を除いて水分を拭き取り、冷蔵。
  4. 充分に冷えた所で皮ごと引いて盛り付ける。

※皮を引かないので身との間にある脂を落とさず、脂の乗りが未熟な個体を生食する際にお勧めの調理。ゼラチン状になる表皮の食感も秀逸だが、あまり大型だと脂が強過ぎる、表皮が厚く口に残るなど、今一つの場合も。

焼き霜造り
材料:皮付きの半身、若しくは柵/山葵/大根(ツマ)/人参(ツマ)/大葉
調理

  1. テフロン加工のフライパンを熱して表皮を押し付け、焼き目を付ける。
  2. 表皮が縮んで反り返ったら裏返し、身側が白くなる程度に軽く炙る。
  3. このまま冷却せずに引く、湯引き同様に冷却してから、の選択は各自の好みで。
  4. ツマを敷いた皿に盛り付け、穂紫蘇、パセリ、柑橘類、山葵などを彩りよく添える。

胡麻漬け
材料:刺身(残り物で可)/醤油/味醂/スリゴマ(白)/大根(ツマ)/人参(ツマ)/大葉/穂紫蘇など
調理

  1. 醤油・味醂を1:1で合わせた割り醤油を火にかけ、沸騰寸前で止めて冷まして漬け汁を作る。
  2. 刺身を器に入れ、漬け汁をヒタヒタ程度に注ぐ。
  3. 好みの量のスリゴマを振って和え、一晩冷蔵すれば完成。一人前を器に盛り付けて供する。

※刺身の残りを活用した一品。

西京漬け
材料:切身/西京味噌/味醂/日本酒/塩

調理

  1. 切身に軽く塩を振り、3時間冷蔵する。
  2. 西京味噌500gに酒・味醂各50ccを加えて練り上げ、味噌床を作る。
  3. 切身の水気を拭き取り、味噌床に漬け込む。直接漬け込んでも構わないが、味噌・ガーゼ・身・ガーゼ・味噌の順に挟んで漬け込めば味だけが染込み、焼く時に味噌を落とす手間が省ける。
  4. 2~3日漬けると食べ頃。味噌床から出して(直漬けは味噌を洗い落とし、水気を拭いて)1枚ずつラップに包み、冷蔵、または冷凍保存。

※ベニアコウ、クロムツ、キンメ、アブラボウズなど脂のある魚、メダイやマダラなどアッサリ系の何れも可能。画像はベニアコウの調理。

煮付け

材料:丸魚、切り身、兜の半割など、鍋のサイズや供する状態を踏まえて選択/濃口醤油/日本酒(又は味醂)/砂糖/根生姜又は粗挽き黒胡椒
調理

  1. 丸魚は鱗、鰓、腸を除き、盛付時に上となる左側に浅く切れ込みを入れる。味の滲み込み易さだけでなく、皮が破れて見栄えが悪くなる事を防ぐ配慮。肝は一緒に煮るので捨てずに残す。
  2. 水3:醤油1:酒(又は味醂)1:砂糖1/4を合せて良く混ぜ、生姜の薄切りを加えて強火で煮立てる。生姜を粗挽き黒胡椒少々に置き換える(筆者宅ではこちら)方法も。味醂を使う場合は砂糖の量を減らすが、各調味料の割合はあくまで目安。サッパリ系の魚では薄く、脂の強い魚は濃い目(水を減らして酒や味醂に置き換える)が基本だが、最終的には各自の好みで調整する。煮汁は多目の方が焦げ付きなどの失敗が少ない。
  3. 汁が煮立ったら灰汁を掬い、魚と肝を入れて煮る。
  4. アルミホイルで落し蓋をする。煮汁が上側まで回り、かつ吹き零れない様に火力を調整。灰汁を除きながら10分程煮る。調理時間は魚のサイズや形状(丸・切身・兜)により調整する。
  5. 崩さないように皿に盛付けて供する。

※画像は兜煮

ムツ仔の煮付け
材料:ムツ卵巣/醤油/味醂/根生姜又は粗挽き黒胡椒/木の芽
調理

  1. 卵巣は一口大の輪切りにする。
  2. 水3:醤油1:酒(又は味醂)1:砂糖1/4を合せて良く混ぜ、根生姜の薄切り(若しくは粗挽き黒胡椒)を加えて強火で煮立てる。味醂を使う場合は砂糖の量を減らすが、各調味料の割合はあくまで目安で各自の好みで調整する。煮汁はやや多目の方が焦げ付きなどの失敗が少ない。
  3. 汁が煮立ったら灰汁を掬い、卵巣を入れて煮る。切り口から卵の粒が煮汁一面に散るので、通常身とは一緒に煮ない。
  4. アルミホイルで落し蓋をする。煮汁が上側まで回り、かつ吹き零れない様に火力を調整。灰汁を除きながら10分程煮る。 小鉢に盛って供す。用意できれば木の芽を添える。

黒ムツという魚
釣りシーンでの「黒ムツ」とはスズキ目ムツ科に分類される標準和名ムツとクロムツの総称であり、2種は区別する事は殆どない。

ムツ
スズキ目ムツ科 Scombrops boops
分布:北海道以南~九州南岸の太平洋と日本海。東シナ海、朝鮮半島、南アフリカ
鋭い歯と剥れ易い大きな鱗を持つ。幼魚期を堤防周りや磯場などの浅海で過ごし、成長と共に深海に移動。成魚は水深200m以深を中心に棲息する。この生態に起因するかは不明だが「背骨曲り」の奇形が他魚より多く見られる傾向。クロムツよりも広範囲に分布し、南方海域では1.5m・20kgにも成長する。全身が褐色だが第1背鰭は前半が褐色、後半が透明。側線鱗数50~57、側線上横列鱗数6~9、側線下10~15と何れもクロムツより少ない。

クロムツ

スズキ目ムツ科 Scombrops gilberti
分布:福島県~伊豆半島太平洋岸
分布範囲はムツに比べ狭い。鋭い歯と剥れ易い大きな鱗(ムツよりは小さい)を持つ。幼魚期を堤防周りや磯場などの浅海で過ごし、成長と共に深海に移動するムツと同様の生態。各鰭を含めた全身が紫掛った黒褐色である点、側線鱗数59~70、横列鱗数側線上8~9、側線下14~17と鱗の数が多い点で識別される。
深海域には「ムツ」と名の付く魚が何種か棲息するが、スズキ目ムツ科に属する「本家」はムツとクロムツの2種のみ。(アカムツはホタルジャコ科、バラムツ、アブラソコムツはクロタチカマス科)共に外観や生態がよく似ており「釣りの世界」では2種を区別せず「黒ムツ」と呼ぶのが一般的。
筆者が深海釣りを始めた昭和50年代初めは東京湾口深場釣りのトップターゲットにして代名詞的存在。 久里浜、剣崎松輪、三崎、小網代など三浦半島には専門の乗合船も多かった。中でも久里浜の老舗船宿「ムツ六」が「ムツ釣り名人の榎本六蔵船長」=「ムツの六蔵」。 

これを略して宿名となったのは有名な話。
地域により中深海域の中型個体をその体色から「キンムツ」「ギンムツ」と称したり、沿岸に棲む幼魚を「アカムツ」と呼ぶケースもあるが、これらはいずれも俗称。東北の「ロクノウオ」は江戸時代に仙台の伊達藩主が「陸奥守(むつのかみ)」なので「ムツ」と呼ぶのを憚り、「むつ」を「六」に掛けたと言う物。「オンシラズ」は幼魚期を浅所で暮らし「親と一緒に住まない」からとされる。
標準和名クロムツは研究が進んでおらず「生態や生活史がムツと殆ど同じ」以外、不明な点が多い。「ムツ」の語源はムツこい(脂っこい)説が有るように、脂肪の乗った白身魚。キンメダイやアコウダイ同様に「昭和の後半」頃から食の評価が急上昇した魚だ。
春の彼岸の頃抱卵した個体を「彼岸ムツ」と呼んで珍重するのは「身より卵が高価」だった時代の名残だが、現在は(サイズにもよるが)年間通して高値で高級~超高級の括り。釣りとは異なり、市場では2種を明確に区別し「クロムツがより高値」とされる。



第5話 アカムツ
メタリックレッドに輝く「深海のルビー」アカムツはノドグロの俗称でいまや全国区の知名度を誇る深海ターゲット。姿、釣趣、そして極上の味覚。三拍子揃ったパーフェクトな釣魚だ。



アカムツの釣場
本種はプレジャーボートや漁業を含めると瀬戸内海や一部の湾奥を除く本州、四国太平洋岸、九州の殆どで釣りが可能」としも間違いではないが、ここではエサ釣り遊漁船の実績がある釣場をピックアップして紹介。

日本海
青森県風合瀬~白神沖
新潟県佐渡沖
富山県富山湾

太平洋
福島県沖(塩屋崎~小名浜沖)
茨城県常磐沖(日立~那珂湊沖)
茨城県波崎沖 寒猫根
千葉県犬吠崎沖
千葉県外房沖(勝浦沖・天津沖)
千葉県南房沖(鴨川沖・和田沖・江見沖・千倉沖・洲ノ崎沖)
東京湾口(久里浜沖・剣崎沖・城ヶ島沖)
神奈川県相模湾(荒崎沖・長井沖・真鶴沖)
静岡県東伊豆(熱海~網代沖・初島沖・伊東沖・富戸~八幡野沖・稲取沖)
静岡県南伊豆(石廊崎沖・子浦沖)
静岡県西伊豆(波勝崎沖・松崎沖・田子沖・宇久須沖)
静岡県駿河湾(沼津沖・由比沖・清水沖・石花海)
遠州灘(静岡県大井川沖・静岡県浜名湖沖・愛知県渥美半島沖)
熊野灘(和歌山県浦神沖)
和歌山県白浜沖
四国沖(徳島~高知県沖)

概要
今や本州~四国の広範囲で遊漁対象となり、特に関東周辺では周年の釣物として高い人気を誇るアカムツ。アプローチする水深も季節や地域で100~400mと幅広いが、現在専門狙いの主流となるのは「錘120~150号で水深120~160m前後」と「錘200号(釣場により250号も)で水深200~300m前後」の2パターンだろう。



①浅所の釣り
青森県風合瀬~白神沖、福島県沖、茨城県沖寒猫根など。青森県ではオキメバル釣りから派生した背景もあり当初は250号錘の置竿釣法だったが、スロジギからエサ釣りへの転向組などでタックル・仕掛の軽量化が急速に進み「関東スタイル」に近付いている。
この点も踏まえて本項は浅所アカムツの代名詞的存在であり、各地の釣法に大きな影響を与えて来た茨城県波崎沖「寒猫根」の釣りをベースに進めてゆく。

タックル
ロッド
シビアな状況下では「100%置き竿で波任せ」は流石に不利。活性次第で釣法チェンジの必要性が出てくる可能性も踏まえ、2m前後の6:4~7:3アクションを設定した専用、若しくは錘負荷150~200号程度の中深場用をセレクトする。グラスチューブラー製が「手持ち誘いでの軽量」「アタリを捉える目感度」「巻上時のクッション効果」など、この釣りで重要な要素をバランスよく兼ね備えている。

リール…PE3号300m表記の「800番」、4号300m表記の「1000番」「300番」に高強度PEライン3号をキャパシティ目一杯巻く。
推奨糸巻量以上のラインを巻き込むとカウンター表記に僅かな誤差は出る、スプール軸径が太くなるため上層での巻上力が若干ダウンするなどの問題はあるが、高切れなどのライントラブルを踏まえたライン長を優先が「ディープマスター流」。
因みに道糸は実釣時の強度面をクリアできれば「細い程潮流の影響を受け難く」イトフケの軽減やよりスピーディーな降下が可能、かつより長距離を巻き込めるメリットがある(筆者は少人数仕立船では2.5号使用の場合も)。
しかし混雑した乗合船では回避し切れないオマツリでの「擦れ」や処理時の安全性(細糸は手指を切る可能性大)を踏まえ、基本「3号」を推奨する。

仕掛…胴突2本鈎が基本だが、サバが多い場合は1本鈎にして手返し勝負が有利。ハリス5~6号を50~60cm、幹糸8号1~1.2m。捨て糸は5~6号1~1.5m。 鈎は特殊形状で口周りの脆いアカムツの外れとチモト切れを大幅軽減するホタ鈎の16号。

細軸のKINRYU「ホタLight16号」は喰い渋り時、特にお勧めだ。仕掛上端にはフジワラ「チビリング」など小型のヨリトリ器具を配す。
錘は根掛りによるロストがほぼ無いため、必ずしも鉄製である必要はない。フジワラのスカリー(鉛)若しくはワンダーⅠ(鉄)の船宿指定素材&号数を用意する。

集魚ギミック
水中灯… 単純な集魚効果以前に「フジッシャー毛鈎」を有効活用するために必要不可欠な存在と考える。半面、抵抗によるオマツリ要因、サメなどエキストラに対するアピールというデメリットも存在。小型で比較的穏やかな光パターンのルミカ「輝泡」の赤色を基本に状況や地域で緑、白も選択。但しサバが多い、潮が早くオマツリ多発の際は速やかに取り外すフレックスな対応が必要。

マシュマロボール…チモト周辺のハリスに配し浮力と仕掛降下時に抵抗をプラス、使用時に餌の動きに変化を与えるヤマシタ「マシュマロボールL」は今やアカムツのみならず、深海釣りの必需品。アカムツ用に開発された輝度なしの「アカムツスペシャル」が基本だが、蛍ムラは「マシュマロボール」のみのラインアップゆえ、こちらをセレクト。

匂い玉…鈎にはニッコー化成「激臭匂い玉7Φ」一粒を刺し通す。イカゴロテイストの「イカゴロクリアー」「イカゴログロー」、オキアミテイストの「オキアミレッド」「オキアミオレンジ」「オキアミイエロー」の計5色。蛍ムラ発光する「イカゴロクリアー」が寒猫根を筆頭にホタルイカ使用地区での効果を確認済み。
因みに「集魚効果」と「チモト保護」を兼ねるを謳う「蛍ムラパイプ」は数cmの長さが
①過剰アピールとなりサバ(や深所ではサメ、クロシビカマスなど縄切魚)のアプローチが増える
②チモト周辺の動きを妨げる
のデメリットが上回ると考える。

深海バケ…藤井商会「フジッシャー毛鈎 ホタ16号」は青紫、橙、濃緑の3色を基本に、低水温ではピンク、紅、赤紫などの赤系が強く、白(蛍ムラ)や茶、黒などのアクセントカラーを用意するのは他魚種と同様。因みに近年の寒猫根では「濃緑」が強い傾向が見られる。
やや太軸で自重のある「ホタ16号」には前出マシュマロボールは欠かせないパートナー。バケカラーとボールカラーをリンクさせるのは基本中の基本。フジッシャー毛鈎にマシュマロボールをセットする際の必須アイテムが富士工業「ラインスレッダーLTM-M」。
製品本来の使用法ではないが、専用設計かと思える程スムーズ&スピーディーなセットが可能だ。

※ラインスレッダー使用方法
①マシュマロボールにラインスレッダーを刺し通す。
②ハリスを結んだ深海バケを用意し
③ハリスの端をラインスレッダーに通す。
④マシュマロボールをスレッダー先端までスライドさせ
⑤スレッダーを引き抜くと
⑥マシュマロボールがハリスに通る。
⑦チモト近く(数cm)まで移動させて完成。
使い方はこちら

エサ…ホタルイカとサバ短冊(船宿により用意、販売、各自持参があり要確認)のコンビネーション若しくは単体使用。ホタルイカを壺抜きした肝付ゲソと幅5~6mm、長さ5~6cmのサバ短冊抱き合わせを基本に、各単体での使用、ホタルイカの一杯掛け(縫い刺し)など。
基本的には深海バケ同様「オレンジが◎」なのだが、他地区を含む今期の釣行では「イエロー」が圧倒的優位だったケースが複数回あった事を付記しておく。
これは余談だが、静岡県の某船長からある客(筆者ではないので、念のため)がほぼ全てのアカムツの構内に寄生するタイノエの一種を主食と勘違いし、本気で鈎に掛けて仕掛を下した、なる話を聞いた。その釣人の探究心には大いに敬意を払うが、寄生虫を宿主自ら喰う筈もない。
真相を知りながら、黙って見ていた船長も相当人が悪いのだが「もしかしたら釣れるんじゃないか」と秘かに期待していた!?のかもしれない。

その他のギミック
サメ被害軽減装置

サメによる奪い喰いが多発する場合は仕掛上部に「海園Ver.2イカ直結用」をセットする事で被害軽減が期待出来る。
下記、②水深200m以深の釣り、その他のギミックの項で詳しく解説。
実釣テクニック
寒猫根の釣りは「手持ち」が基本。開拓当初はカワハギ宜しく「叩き」や「弛ませ」を筆頭とした「アピール釣法」がクローズアップされた(もちろんそれが全てではない)が、近年は「オモリを着底させた状態でラインを張って微細なアタリを拾い、一呼吸置いてロッドで聞き上げる様に乗せる」ゼロテンション釣法が効果的で、主流となっている。
高活性時にはダブルもあるが、浅めの水深で一流しで複数回の投入が可能、鈎数2本を踏まえれば「1尾を確実に」が基本スタンス。サバが極端に多い場合は1本鈎もアリ(ワンポイントの項に詳細)
アタリ後、聞き上げた竿先に確実な鈎掛りを感じたらラインを緩めずに巻上に入る。強引な高速巻きは口切れ、逆に極端な低速巻きは弛みが出て外れのリスクが高まり、何れもNG。魚のサイズやウネリによる船の上下動を踏まえつつ、極力一定のペースをキープする。
口周りが脆く、水圧変化にも強いアカムツの取り込みは小振りでも玉網のアシストが基本。不用意に抜き上げて「後の祭り」にならぬ様、ご注意あれ。



②水深200m以深の釣り
千葉県犬吠埼沖~四国沖まで、太平洋岸の広範囲でメインとなる水深200~350mにアプローチする釣り。

タックルと仕掛

各釣場のタックルは基本共通。キーワードは錘200号、PE4号400m(以上)だ。
ロッド
2~2.3mの6:4~7:3アクションを設定した専用、若しくは錘負荷150~250号表記の中深場・青物用が基本だが、天秤仕掛使用の置竿エリアでは2.6~3mとやや長目の物が好まれる傾向。浅所同様、グラスチューブラー製がこの釣りで重要な要素をバランスよく兼ね備えている。

アルファタックル適合モデル
ディープオデッセイ アカムツ220
ディープインパクト カイザーT
ディープオデッセイ モデルT
HB アカムツ200・230・260
HB オキメバル260
デッキスティック フルアームド73 203

リール…PE6号300m表記の「3000番」「500番」に高強度PEライン4号をキャパシティ目一杯巻く。糸に関するコンセプトは前述の浅所用に準じ、後述するツノザメ類のアプローチも踏まえての4号推奨。

仕掛…使用錘は同じでも地域、船宿によりスペックは異なる。代表例として

①細ハリス胴突2本鈎(千葉県犬吠崎など)…
混雑する乗合船で「オマツリし難く、処理し易い」を大前提とした設定
鈎:ホタ16号
深海バケ:フジッシャー毛鈎ホタ16号
ハリス:フロロカーボン6~8号50~60cm
幹糸:10~12号1~1.2m
捨て糸:8号1~1.5m
錘:200号/錘はオマツリ軽減のため多くの船が鉛指定。鉛製でもウイング付など特殊形状は使用不可もあり、事前確認のこと。
ヨリトリ器具:5連ベアリングサルカンなど小型の物。
※鈎とライン号柄が同スペック、ハリス&幹糸長が ②太ハリスと同等の3本鈎を使用する船もあり。

②太ハリス胴突3本鈎(東伊豆・南伊豆・駿河湾など)…

2kg超級本命のみならず、大アラ、大ムツ、クログチなど大型ゲストフィッシュが期待できる海域のハリスは太め&長め。静岡県由比沖で同乗者の市販仕掛6号ハリスが一撃で引き千切られる場面を複数回目撃している。
鈎:ホタ16号
深海バケ:フジッシャー毛鈎ホタ16号
ハリス:10(~12)号80cm~1m
幹糸:18~20号1.6~1.8m
捨て糸:10号1.2~1.5m
錘:200(~250)号/浅所同様に根掛りによるロストは少ないが、ツノザメ、エドアブラザメによる捨て糸・幹糸切れが多発する海域もあり。船から特別な指定が無ければ海底に残っても環境負担の少ない鉄製「ワンダーⅠ」使用を推奨する。
ヨリトリ器具:「深海用リングSS」などの中型。

③片天吹き流し仕掛(和歌山県浦神沖など)…
関西アカムツ釣りのメッカ、南紀浦神沖では愛知県の釣師が持ち込み実績を上げた片天吹き流し仕掛が定着。
片天吹き流し3本鈎
鈎:ホタ16号
深海バケ:フジッシャー毛鈎ホタ16号
ハリス6~8号4.5m(先糸・幹糸1.5m、枝ハリス50cm)
片天50cm
錘:200号
ヨリトリ器具:「深海用リングSS」などの中型。5連ベアリングのみでもOK。

集魚ギミック・深海バケ

エサ… 地域や船により若干異なる。千葉県沖ではホタルイカ一杯掛け、サバ短冊、両者抱き合わせなど。またホタルイカを模したニッコー化成「ダッピーホタルイカ」全10色や1.5mの短冊を好みの長さにカットして使用する同社「ロールイカタン150cm」全8色も喰い渋り時やエサ取り対策として注目される。

相模湾~伊豆沖、駿河湾ではベーシックなサバに西伊豆で特餌とされるソウダガツオ、由比沖のサンマなど幅1cm、長さ10cm程度の身餌短冊が中心。いわゆるビッグベイトは(アカムツも喰うが)サメ類のアプローチが早いため基本的には使用しない。ホタルイカにはシロムツやユメカサゴなど小型エキストラが早い傾向だが、激渋り時に「ダッピーホタルイカ」が船中釣果を独占したケースもあり。中でも静岡県由比沖は「ホタルイカやサバ短冊では喰わない」と船長が断言する程の「サンマ短冊」優位。筆者は身肉を削ぎ、グルタミン酸調味料で「旨味加工」を施した短冊を持参する。主食はサクラエビとされる海域ゆえ、疑似餌はエビテイストの「ロールイカタン」をセレクトする。

遠州灘ではオキアミを使うケースや「ホタルイカのみでOK」とする船も。南紀ではサバ短冊とホタルイカ、何れも単体使用で釣果を上げた。何のエサをメインで使用しているか、各船長に事前確認が無難だ。

その他のギミック
サメ被害軽減装置

ツノザメ・エドアブラザメの多い海域での強い見方。サメ類が捕食に使う鼻先の電気器官「ロレンチニ瓶」に作用する「海園」は海底のサメアプローチ軽減(100%回避ではない)効果も確認済み。仕掛上部に最初から接続する「Ver.2イカ直結用」をセレクトする。発売元の㈱デニズが行った実釣テストでは「ドンコが喰わなくなる」の報告もあり、特に銚子以北ではサメ不在でもセットする価値がありそうだ。
※「海園」をより効果的に使用するための注意点
海水に浸かっている間だけ電流を発生(約100時間)する海園は複数回の使用が可能だが、効果的に使用するために下記の点に留意したい。
1.使用後は必ずぬるま湯での洗浄&乾燥を行う(乾燥材を入れ保管すると更に良い)
2.出力ワイヤーの先端に錆が出ると効果半減。乾燥後CRC等を塗布して錆を抑える
3.錆びが出た場合は先端部分を切り落とし、出力ワイヤーの皮膜を1cm程度剥ぐ(炙り溶かす)
直結タイプでは保管時に付属スイベルとセンサー電極が接触しないよう注意(通電し電池を消耗する)
磁石版
取込時や航行時の仕掛保持にあれば便利。5本用などの短い物でOK。

実釣テクニック
何れの釣場もポイントは起伏が少なく、根掛りも殆どない砂泥底が中心。投入、巻上、再投入に関しては勝手な判断はせず、各船長に確認の上行う事。
錘が着底したらイトフケを除き、船長の指示に従い海底を1~3m程度の切ってアタリを待つ。アカムツは高活性時には海底から10m近い高棚で喰う事もある魚。海底に執着し過ぎるとユメカサゴ、ドンコ、シロムツ、ギスなどのエキストラの猛攻に辟易する場合が。但し低活性時や上層にサバ回遊などのケースでは「逆」もあり得る事も覚えておきたい。
平坦な海底とはいえ、多少の起伏や勾配があるため「あまり動かさない方が良い」「水深に変化がない」状況でも棚取り後全くの「放置プレイ」ではなく、ある程度の頻度で「底を取り直す」が必要となる。
今や「終日手持ちで攻める」スタイルが主流とも言えるアカムツ釣りだが、釣場や状況によっては「置き竿が圧倒的に優位」な場合がある事も忘れてはならない。拙プロデュースの「アカムツ専用竿」のアクションが6:4ベースなのは巻上時にハリ穴が広がり「ポロリ」のリスクが大きいアカムツの脆い口周りへのクッション効果を意識しただけでなく「置き竿優位」の状況で如何に違和感を与えずに仕掛を「程よく」躍らせてアピールするか、も考慮したもの。アタリがあったら一呼吸置いてロッドを深呼吸の速さでリフトアップ、「聞く」イメージのアワセをくれて巻き上げる。

誘いのパターン
状況に応じて有効的な誘いは様々。置き竿釣法では「ウネリ具合とロッドアクションを見極めてロッドキーパーの仰角を調整する」だけで効果的な誘いを生み出し、アタリの出方がガラッと変わるケースも珍しくない。

  1. 落とし込みの誘い…着底後1~3m底を切って暫く待った後、クラッチを切ってオモリを着底させ、再度棚取り。一定のペースで繰り返す。
  2. 弛ませ…①の応用。オモリ着底後にクラッチは繋ぐが、すぐには底を切らず「間」を置いてからロッドを誘い上げる、ラインを張るなどして変化を与える。混雑時はオマツリの要因となる可能性あり。
  3. ゼロテン釣法…錘を着底させたらクラッチを繋ぐが、オモリは海底を切らずにラインだけを張ったゼロテンション(弛ませっ放しではない)状態で静かにアタリを待つ。
  4. 底トントン…置き竿釣法の基本的な誘い。着底後1m程度の棚を取り、ウネリによる船の上下を利してオモリが海底を一定のペースで叩く状態を演出する。前述の「ロッドキーパー仰角調整」や「ホルダー位置の設定」で釣果が左右される事も少なからず。
  5. 片天仕掛の誘い上げ(スロー巻き)…着底後に海底から仕掛長分上げ、ここから数~10m、手巻き若しくは電動超スロー巻きで一定のペースで誘い上げたらクラッチを切って着底させ、繰り返す。棚を押えると追い喰いが容易い反面、「底叩き」が無い分エサの動きに変化が出難い。胴突以上にマメな棚設定と誘いが必要となる。 等のパターンが。バケカラー同様に如何に素早く当日のヒットパターンを見付けるかが釣果のカギとなる。


アタリ~取込
アカムツのアタリは極めて明確でシャープゆえ、見逃す事は殆どない。高活性時なら追い喰いを待つのもアリだが「一尾を大事に、確実に」が基本。サイズと相談しながら程々(中速~中低速)のスピードで緩急を付けずに巻き上げる。途中複数回の抵抗があり、ラスト30m付近で一暴れあれば、ほぼ本命間違いなし。稀に眼球や浮袋が突出して「浮いてしまう」個体もあるが、基本「外れれば泳ぎ去る」のがアカムツ。サイズの大小にかかわらず取込時は玉網のアシストが欠かせない。船長や助手が間に合わなければ釣人同士、互いに協力しよう。
またクロムツ程ではないが口には細かく鋭い歯が並ぶので鈎外しの際は要注意。素手でバス持ちなど決してしない事だ。

ツノザメ対策

千葉県沖~相模湾、伊豆沖では避けて通る事の出来ないお約束、税金的存在のツノザメ&エドアブラザメ。
バケがダメになる、錘や仕掛が切られる、鈎掛りした魚が齧られる等の被害があるが、一番厄介なのはオマツリして同乗者の道糸を切ったり、逆に切られたりして以降の釣りに支障が出てしまう事。
道糸切れはサメの歯だけでなく背鰭の鋭い棘や「鮫肌」での擦れも遠因となるし、そもそも細糸はライン同士の摩擦で切れてしまう可能性も大きい。
サメのアプローチ軽減にはサメ被害回避装置使用の他にエサを小振りにする、仕掛を地味にするなどで多少軽減できても(その分アカムツのアプローチも減る)、鈎にエサが付いている限り0にする事は不可能。
如何にサメをスピーディーに処理し被害を最小限に抑えるか、が重要なのだ。

通常オマツリは「上から順に解いてゆく」が、サメがハリ掛りしていたらそんな事は言っていられない。仕掛けがグチャグチャニなろうが構わず、先ず「サメが掛かっているハリスをカットする」が最優先。応用が利かない同乗者とのオマツリでアカムツ付ラインをロスとした苦い経験が事が幾度もあった。2~3本バリのアカムツ仕掛は複雑に絡んでしまったら解くよりもサルカンの付根でカットして幹とハリス付ハリに分解、深海簡易結びで結び直す方が余程スピーディー。「何番目のハリに掛っていようと、一番最初にサメの処理」を徹底したい。

ツノザメのリスクと食
サメと言うと「歯」に注意が行きがち。もちろん間違いではないのだが、ツノザメの場合一番怖いのは2基の背鰭にある剥き出しの「棘」だ。この棘には毒があり、刺されると大きく腫れ上がるが詳しい研究が成されておらず特効薬がない。誤って踏み付けた漁師の長靴を貫通、腫れ上がった足が抜けず病院で長靴を切り開き入院一ヶ月なんて話もあるので要注意。

そんな厄介者だが、食べてみると「結構イケる」。以前底引網船に乗るロケでツノザメを食したが船上で捌いた刺身には懸念されたアンモニア臭は微塵もなく、帰港後定食屋で出された刺身より余程美味だった事を付記しておく。背鰭棘には十分注意して捌き、生食に抵抗がある向きはフライや空揚げで試してみては如何か。
※エドアブラザメ背鰭(1基)に毒棘はないが、歯はツノザメよりも長く鋭いので要注意。


アカムツ釣りに役立つ!?ディープマスターのワンポイント

各地で威力全開!「集魚ギミック」を使いこなす
ある日の東伊豆稲取沖でベーシックな棚取りでの放置プレイに終始しながら、断トツの釣果に恵まれた筆者。同様の置き竿や積極的に誘い続けたメンバー達との違いは「集魚ギミック」しか考えられない。
この日は全員が併用、若しくは単体使用した「フジッシャー毛鈎」と「マシュマロボール」は今やアカムツでは「鉄板」と言えるギミックであり「大差」の要因とは考え難い。唯一異なったのは全鈎に配したニッコー化成「激臭匂い玉7φ」。この秋の寒猫根でもセット直後から本命連発しており、無視できない存在となった。先の2アイテムと併せ「アカムツ3種の神器」として過言ではない!?
もちろん、ギミックのコンビネーションも重要。この日の8尾中6尾が青紫フジッシャー+マシュマロボール蛍ムラ+いかごろグリアー匂い玉へのアプローチ(2尾は橙バケ&ボール+オキアミレッド玉)だが、釣場や日によりヒットカラーやパターンは様々。「ギミック満載仕掛」の威力を最大限まで引き出すには漫然と使い続けるのではなく、「引き算」も含め、状況に応じたセレクト&チョイスが重要となる。

近年鉄板は濃緑!?アカムツ釣りに於けるフジッシャー毛鈎のカラー傾向
東北から南紀まで、各地のアカムツシーンで「結果」を出し続ける筆者愛用「フジッシャー毛鈎」。
以前はアカムツでは青紫と橙の2色が鉄板カラーとされ、濃緑はタマに喰う時がある程度。むしろメダイやサバのアプローチが早い(特に伊豆沖)デメリットが目立ち、ベーシック仕掛には配さない方向だった。
しかし、近年は状況が一変。「濃緑でないと喰わない」場面に少なからず遭遇する。この日クーラーに収まった釣果(アカムツ4、アラ1、シロムツ2、カゴカマス1)は全て濃緑バケだし、銚子沖寒猫根や青森県風合瀬でも同様のケースが複数回。「余剰気味」だったハズの濃緑バケは気が付けば「残僅少」となっていた。
元来「高水温時に強い」傾向ゆえ、近年各地の「水温高め」にマッチしたのか。因みにフジッシャーに組み合わせる「マシュマロボール」のカラーはバケカラーとリンクさせるのが基本だ。

最早「仕掛の一部」!?東伊豆稲取で「海園」の効果を実感
この日の東伊豆稲取沖では仕掛上部にサメ被害軽減装置「海園」の直結タイプを配してスタート。周囲がツノザメのアプローチに閉口する中、1投目から本命を手にする事が叶う。
その後の縄切禍で仕掛一式ロストし「海園」無しで再開すると、それまでノーアプローチだったツノザメ&エドアブラザメが普段通りに襲い掛かり、改めてサメ回避効果を実感した次第。サメ禍多発地帯では「仕掛の一部」と捉えて有効活用したいギミックだ。

釣果を分けた!?ギミックのセレクト
夏の静岡県浜名湖沖で左舷の筆者に6尾、大艫に4尾、対する右舷の二人は各2尾と左右でアカムツの数に差が付いたが、原因は「潮向き」だけではなさそう。
クロシビカマス(スミヤキ・ヨロ)に因るであろう縄切禍が頻発したが、一番の要因と疑われがちな水中灯を唯一使用した筆者の被害は追い喰いを待ち過ぎた1投のみで、しかも仕掛上30mプラスの位置。ライトを配さない右舷二人が仕掛直上から数回も切られている事の説明が付かない。
改めて各自が仕掛に配したギミックを見れば、フジッシャー毛鈎とマシュマロボールは全員使用、違うのは左舷はニッコー化成の「激臭匂い玉7φイカゴロクリアー」に対し、右舷二人が使ったのは「蛍光紫フロートパイプ」。少なくともこの日浜名湖沖のアカムツは激臭匂い玉を選び、スミヤキは蛍ムラパイプに強い興味を示した…と言う事になる。ギミックは各種・各色・各サイズを持参し、状況に応じてフレックスに対応したい。

「秋のアカムツには赤ランプとスモールベイト」
夏~秋の静岡県富戸沖アカムツは、250mラインに出る「反応」をチェックする攻め口。この反応はアカムツ単独ではなく、ベイト(カタクチイワシなど)の群れと、これを追う魚種の混成群。数はサバやサメなどエキストラが上回る。
本来アカムツに有効な発光体だが、大きな光源や白色光は他魚へのアピールも強力。サバやサメを先に寄せてしまうため、「着底と同時にエキストラがアプローチ、本命を喰わせる暇がない」事も度々。
故にルミカ「輝泡」など赤色発光の小型ライトを使用する。
ベイトサイズも同様で、大型アカムツは大振りの身餌にも問題なく喰い付くが、この場面では過剰アピールとなってサメが早いのが否めず、幅1cm、長さ10cm程の短冊を使用する。
夏場の東伊豆アカムツのキーワードは「赤色小型発光体」と「小振りのエサ」。新春以降の深みでの釣りに比べ、やや控えめのアピールが◎だ。

最も簡単、かつ有効なサバ対策は
「関東アカムツ釣りのメッカ」寒猫根や大型が数出る新釣場福島県沖など、太平洋岸の浅所釣場に共通する「ネック」がポイントを回遊するサバの群れ。混雑した乗合船では度々大マツリを引き起こす元凶となる。
サバ除け対策としては
①水中灯、チモトの発光玉や蛍ムラパイプを外す。
②マシュマロボールは輝度無しの「アカムツスペシャル」をセレクト。
③バケ使用時はカラーを精査し、改善がなければ空鈎に。
④付エサのサバ短冊はサイズを小振りにする、若しくはホタルイカオンリーとする。
等々、アピールを抑える「引き算」が全国共通の模範解答。反面、除いたギミックが肝心の釣果を大きく左右するケースも否めず、デリケートな部分なのも事実。
そんな中最大の引き算にして最も簡単、かつ有効なのは「欲をかかずに一本バリ」だ。
追い喰い0ゆえに何が喰おうと必ず巻き上げるからオマツリのリスクは大幅減、仮に絡んでもスピーディーに処理出来る。一流しに複数回の投入が可能な浅所の釣りでは鈎数を減らす事が最終的にタイムロス、チャンスロスを抑える最善策。 釣果を伸ばすのは「如何にサバを掛けずに海底まで仕掛を下ろすか」「如何にオマツリを回避するか」「如何に素早くサバ(&オマツリ)を処理し再投入するか」に他ならない。

船長お薦めは太ハリスと大型バリ。静岡県由比沖のアカムツ仕掛
PE4号400mを巻いた3000番電動にオモリ200号と聞けば、ハリス6~8号、ホタ16号が今風だが「口が大きいし、ハリスを見るような魚じゃない」と言う由比港龍神丸の船長推奨仕掛は東~南伊豆の深みで大型アカムツを狙う際と同等、もしくはそれ以上のスペック。
鈎はKINRYUホタ17号赤、ハリスはナイロン12号を65cmで筆者同様「ナイロンの伸びと浮力」の優位性を説く。仕掛上端には赤色発行体を配し、チモトは夜光パイプに発光玉、マシュマロボールとアピールグッズ満載。
ゴツイ仕掛に抵抗がある向きもあろうが、当日も真っ先に本命(しかも船中最大)をキャッチしており、説得力は抜群。同所では3kg超クロムツ、9kgアラ、5kgマダイなどの実績もあり油断は禁物。下記のサンマエサも含め「郷に入らば郷に従え」の謙虚な姿勢は重要だ。

由比沖鉄板のサンマ餌には一手間掛けて
今やアカムツ付エサの「最メジャー」は青森風合瀬から南紀浦神沖まで全国各地のフィールドで多用されるホタルイカである事に異論はないが、「由比沖ではあまり喰わない」とは龍神丸船長の弁。過去筆者以下TEAMの複数メンバーがホタルイカを試したが、モノの見事にノーヒット。当地深海魚の主食とされるサクラエビとの関連性は不明だが、船長、同乗者含め釣果の100%が船でも支給されるサンマという徹底振り!?だ。
船配布のサンマはカット済みのパック。そのままでも使用可能だが、佐野船長は「手間だが身肉を削いで」を推奨する。身肉を削ぐと餌の「泳ぎ」が良くなると同時に鈎落ちし難くなるメリットが。鈎掛けは尾部以外は腹側(銀色の部分)先端部の縫い刺しが鈎持ちが良い。
因みに筆者は三枚に下したサンマ半身の身肉を刺身包丁で削ぎ落して多量のグルタミン酸と少量の塩で「旨味加工」し、釣行前に船配布と同等サイズにカットして持参する。



アカムツ料理

その味覚は「白身の大トロ」と称され、癖の無い上品な脂が乗った肌理の細かい身は「最上級の旨さ」とする声も多い。3~4日チルド庫で寝かせてから生、焼き、煮、鍋、揚げと様々な調理が可能だ。

活け造り

高級魚アカムツの刺身を一手間かけて大皿に盛り込めば、更にゴージャスな一品に。
材料:丸魚一尾/山葵/大根/大葉/穂紫蘇/紅蓼/パセリ/柑橘類(レモン・スダチ等)

調理

  1. 魚は胸鰭周辺(カマ部)以外の鱗を引き、鰓・腸を除く。鰓を外す際、付根を切らない様、注意。腸は腹鰭から肛門の間を切って取り出す。活け造りでは尾・頭も料理の一部。見た目が汚くならない様、注意する。
  2. 中骨に頭・カマを付けたまま三枚に下す。左半身は背鰭に沿うように包丁を入れ、背骨に切っ先を当てながら中骨を擦る様、尾に向かって切り進む。
  3. 魚を180°回転させ、腹側は尾の付根から包丁を入れる。背側と同様に頭に向かい、肛門まで切り進む。
  4. 尾の付根から包丁を入れ、背骨中央を頭に向けて切り進む。腹骨の付根を断ちながら、首の付根まで切る。
  5. 頭頂部から胸鰭下を袈裟切りし、左半身を外す。
  6. 右半身は頭をまな板から外して下す。身が反り返らず、頭を落とした状態に近付くので、下ろし易い。
  7. 右は背側が尾から頭、腹側は肛門から尾に向けて包丁を入れ、以降は左側と同様に切って身を外す。
  8. 腹骨を剥き取り、枝骨を毛抜きで抜き取る。大型なら背節・腹節に分け、この時枝骨を削ぎ落とせば毛抜きで抜く手間が省ける。
  9. 表皮を引く。一部は皮を引かずに②の「湯引き」や皮目を焼いた「炙り」にして盛り込んでも良い。
  10. 平造り、若しくは削ぎ切りにする。鞍掛け切り(平造りのセンターに切り込みを入れる)にして柑橘系スライスを挟むバリエーションも。
  11. 削ぎ切りの尾側をクルリと巻いて芯とし、これに削ぎ身をサイズの小さい物から順に巻き付け、形を整えると「花盛り」になる。
  12. 大根でツマを作る。尾と頭を固定する台も大根を使うので、この分は残しておく。
  13. 尾・頭を皿に盛る。見栄えよく形を整え、竹串や楊枝を使って大根の台に固定する。
  14. 大根のツマ・大葉を敷いて盛り付けの土台を作り、刺身を形よく盛り込む。
  15. 穂紫蘇、パセリ、柑橘類、山葵などを彩りよく添える。

湯引き
画像の活造りに盛り込んだ刺身のバリエーション。
材料:皮付きの半身、若しくは柵
調理

  1. 柵は表皮を上にしてまな板に置く。
  2. 表皮にまんべんなく熱湯を掛ける。この時布巾を掛けると均等に熱が回る。
  3. 氷水にくぐらせて粗熱を除いてから水分を拭き取り、冷蔵する。
  4. 充分に冷えた所で皮ごと引いて盛り付ける。

アカムツの揚げ出汁
隔週刊つり丸の連載企画「魚が美味い店」の取材時、板長が持ち込みのアカムツを即興調理した揚げ出し豆腐の魚版。あまりの美味さが忘れられずレシピを再現。
材料:皮付き柵/茄子/獅子唐(又はピーマン)/片栗粉/醤油/味醂/揚げ油/濃縮麺つゆ/紅葉おろし
調理

  1. 醤油と味醂を1:1(甘口好みなら味醂を1.5)の割合で合わせて火に掛け、沸騰寸前で止めて冷まし「漬け汁」を作る。
  2. 柵を食べ易い大きさに切り、漬け汁に10分ほど浸して下味を付ける。
  3. 150~160℃の油で付け合わせの半割した茄子(大きなものは食べ易いサイズにカット)と獅子唐(又は半割しカットしたピーマン)を素揚げにする。
  4. 切り身をつけ汁から上げ、表面を拭いてから片栗粉を振り、180℃の油で色よく揚げる。
  5. 濃縮麺つゆを瓶表記の「掛け汁」の濃度に湯で希釈する。
  6. 揚げた食材を鉢に彩りよく盛り込み、掛け汁を張る。付け合わせの「青味」はサッと茹でた菜花(画像)なども良い。
  7. 紅葉おろしを添えて供する。

卵の煮付け
黄色い卵巣が大きく膨らむ夏秋限定のメニュー。
材料:アカムツ卵巣/醤油/味醂/根生姜又は粗挽き黒胡椒/木の芽
調理

  1. 卵巣は一口大の輪切りにする。
  2. 水3:醤油1:酒(又は味醂)1:砂糖1/4を合せて良く混ぜ、根生姜の薄切り(若しくは粗挽き黒胡椒)を加えて強火で煮立てる。味醂を使う場合は砂糖の量を減らすが、各調味料の割合はあくまで目安で各自の好みで調整する。煮汁はやや多目の方が焦げ付きなどの失敗が少ない。
  3. 汁が煮立ったら灰汁を掬い、卵巣を入れて煮る。切り口から卵の粒が煮汁一面に散るので、通常身とは一緒に煮ない。
  4. アルミホイルで落し蓋をする。煮汁が上側まで回り、かつ吹き零れない様に火力を調整。灰汁を除きながら10分程煮る。
  5. 小鉢に盛って供す。用意できれば木の芽を添える。

アカムツという魚

アカムツ
スズキ目ホタルジャコ科 Doederleinia berycoides
国内の分布:青森県~九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、北海道~九州南岸の太平洋沿岸、東シナ海大陸棚~斜面域、大東諸島近海
その名の如くメタリックレッドに輝くボディと、大き目の胸鰭が印象的。口腔内と腹膜が黒く、地域により口腔内にタイノエの一種の寄生が多く見られる。下顎先端は無棘。背鰭は棘条部と軟条部の境が大きく欠損する1基で側線有孔鱗数41~49。名はムツだが、分類上はホタルジャコ科。
練り製品などの利用が主のホタルジャコ科魚類に於いて、唯一高級食材として流通する魚。日本海側での呼称「ノドグロ」はかつて関東を中心にユメカサゴ(俗称ノドグロカサゴ)と混同された時期があったが、グルメ・旅番組や有名テニスプレイヤー発言など、マスコミにより全国的に「ノドグロ=アカムツ」の認識が広まった。

雄と雌で寿命が異なり、頭の角張る雄(釣りでは稀)は寿命5年程度、成魚でも20cm~最大30cm程度と小型。対して雌の寿命は10年と雄より長く、50cm超、2kg以上まで成長する。

成魚は水深300m前後の砂泥・砂礫底が常棲帯だが、初夏~晩秋は産卵のため200~250m(北の海域では若干水深が浅く120~180m)に移動・集結。夜間はやや浅みに移動する傾向。また、若魚は100m前後と比較的浅い場所にも分布する。

秋に産卵期を迎える本種の体重は初秋の頃「年間最大」となる。このため卵巣が膨らみ始める初夏あたりから卵に栄養を持っていかれた身肉は、大型になる程「水っぽさ」が否めない傾向。もちろん産卵直後は更にコンディションが下がる。対して産卵に向け、深みで栄養を蓄える年明け~春先は脂が乗り切って水気が少なく「白身の大トロ」と称するに相応しいコンディション。「食」の真価を実感できるベストシーズンだ。

水圧変化に強く海面下まで抵抗を続ける上、口周りが脆く鈎外れし易い。稀に「浮かぶ」個体も有るが、多くは泳ぎ去るので取込時は玉網のアシストが必須。水深を変える事で周年釣る事が可能だが、夏~晩秋を釣期とする地域が多い。現在北は東北青森から西は紀伊半島~四国沖まで、本州の広い範囲で遊漁が行われ、今後更なる釣場拡大が見込まれる。今や「最もメジャーな深海ターゲット」として差し支えなかろう。



第4話 アラ
根掛りの如く踏ん張る魚を、ドラグをジワジワと締め上げ、海底から引き剥がす。ここが最初の山場にして「本命の証し」。激しい抵抗は中層まで。観念したアラが浮き始めれば、程なく細かな泡が弾ける海面に太鼓腹が飛び出す「クライマックスシーン」がやってくる。



アラの釣場
本種は全国各地の広範囲に分布。近年はスロージギング船も増えているが、本編ではエサ釣りで数kg以上の大型狙う釣船がある地域を紹介。

青森県風合瀬~白神沖
新潟県佐渡沖
茨城県波崎~千葉県銚子沖
千葉県外房沖
千葉県南房沖
静岡県東~南伊豆沖(稲取沖・白浜沖・爪木崎沖・神子元沖・石廊崎沖・子浦沖)
駿河湾(石花海周辺)
遠州灘(静岡~愛知県)
和歌山県白浜沖
京都府丹後半島沖


タックルと仕掛
現在若齢個体を専門で根うケースは稀だが、その場合のタックルと仕掛は別項オニカサゴ(標準和名イズカサゴ)に順ずるので除き、本項では数~10kg級をメインに据える「大アラ用」を紹介。

使用錘150~200号(佐渡沖・波崎~銚子沖・丹後半島沖など)
錘負荷MAX250号表記のアカムツ用・中深場用・青物用。

アルファタックル適合モデル
ディープインパクト カイザーT
ディープオデッセイ モデルT
ディープオデッセイ アカムツ220
HB アカムツ200・230

使用錘250号(外房勝浦沖・南伊豆石廊崎沖など)
錘負荷MAX300号表記の中深場用・ライト深場用・青物用。
アルファタックル適合モデル
ディープインパクト ライト220
ディープオデッセイ モデルTT

リール…「海底で踏ん張る大アラを引き剥がす」パワーは必須。軽量錘で比較的浅めを釣る船ではPE6号300mキャパシティ(3000番、500番)推奨や指定の船もあるが、通常PE6号500m以上のラインキャパシティを持つ中型電動リール(4000~6000番、750~800番)のセレクトが基本となる。

仕掛…船宿や釣場により胴突、片天、片天+胴突併用型の3パターンがあるが、手返しに難のある併用型は近年減少傾向。
胴突仕掛は3本バリが標準。ハリス10~12号1m、幹糸18~20号1.8m、捨て糸10号1mが基本パターンだが、地域によりハリス20号や捨て糸無し(下端親子サルカンにフックでオモリ直結)を指示する船も。鈎はムツ19~20号、ホタ17~18号。オキメバル仕掛の下に胴突1本を連結する変則パターンも。

「活きイカ泳がせ」の場合は1本バリでOK。鈎は下鈎がメインで大きく、上鈎はエサのキープを主目的に小振りとする「変則親孫式」に配し、下鈎はロウト付近にハリ先が外を向く様に打ち、上鈎はヤリイカ・ケンサキイカでは胴の先端を軟甲(いわゆる骨)に触れないようにエンペラと平行に刺し、スルメイカでは胴先端横のエンペラを縦方向に刺し通す。サバやマイワシは1本鈎の上顎掛けとする。尚20kg以上のイシナギが混じる釣場では鈎やハリス号数アップも考慮する。
片天仕掛は全長2mの吹き流し2本バリ。言わばオニカサゴ用のパワーアップバージョンで、ハリスや鈎号数は胴突仕掛に準ずる。
また大アラポイントイコール「ツノザメの巣窟」のケースが殆ど。一日20尾以上が鈎掛りするケースもあり、替鈎やハリスは充分に持参したい。
仕掛上端にはヨリトリ器具。250号錘使用の深場ではフジワラ「深海用リングSS」など、 軽量錘や小型リール使用ポイントではスイベル連結式「5連ベアリングスイベル6」など小振りのセレクトがベター。 

釣場の海底は比較的平坦な砂泥底や起伏の少ない根が中心(一部荒根もあり)だが、サメ禍による錘ロストも少なからず。特に船宿の指定がない場合は海底に残っても環境に負担を掛けない鉄製のフジワラ「ワンダーⅠ」使用を推奨する。 ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。

集魚ギミック…ツノザメの多さゆえに発光体使用を禁止する船長もあるが、基本的には有効なギミック。使用OKの船や地域ではサメの動向を見極めつつ、ルミカ「輝泡」や「ビット」、ミヤエポック「フラッシュカプセルLED-S」等を積極的に活用する。
今やあらゆる深海ターゲットに使用されるヤマシタ「マシュマロボールL」は鈎チモトから数cmの位置に配し、深海バケ使用の際はカラーのリンクが大前提。ニッコー化成「激臭匂い玉7Φ」一粒を鈎に刺し通すのも有効だ。
深海バケ…身エサ使用時は「フジッシャームツ毛鈎ホタ18号」がお勧め。紫、橙、緑の鉄板カラー3色に白(蛍ムラ)、茶、黒など各色持参、状況に応じて使い分ける。青森風合瀬など北の海域では紅、ピンク、赤紫などの「赤系」も忘れずに。

エサ…短冊エサはイカの縦方向カット短冊(スリット入り)、サンマ半身の斜め半割、ソウダガツオやサバ、サーモン皮など。アピール度とユメカサゴなどの「小型魚避け」を意識した長さ15~20cm(以上)と大振りが基本。
但しツノザメが極端に多い場合は敢えてサイズを小振りにする事でサメのアプローチを抑える方法もあり。
デッドベイト1尾掛は十数cm~20cm程度のマイワシ(下顎から上顎に刺し通す)や 筒イカ類(胴先端付近をエサ持ちを考慮して軟甲を貫く縦方向)など。
活エサはイカやイワシ、小サバ等。「最高のエサ」は活ヤリイカ、若しくはケンサキイカの一杯掛けでスルメイカはやや喰いが落ちる傾向。前述仕掛の項の要領で弱らせないように手早く鈎掛けするのが肝心だ。

その他のギミック

サメ被害軽減装置
ツノザメとの我慢比べとも言えるこの釣りの強い味方がサメ被害軽減装置。サメ類が捕食に使う鼻先の電気器官「ロレンチニ瓶」に作用する「海園」は海底のサメアプローチ軽減(100%回避ではない)効果も確認済み。仕掛上部に最初から接続する「Ver.2イカ直結用」をセレクトする。
※「海園」をより効果的に使用するための注意点
海水に浸かっている間だけ電流を発生(約100時間)する海園は複数回の使用が可能だが、効果的に使用するために下記の点に留意したい。

1.使用後は必ずぬるま湯での洗浄&乾燥を行う(乾燥材を入れ保管すると更に良い)
2.出力ワイヤーの先端に錆が出ると効果半減。乾燥後CRC等を塗布して錆を抑える
3.錆びが出た場合は先端部分を切り落とし、出力ワイヤーの皮膜を1cm程度剥ぐ(炙り溶かす)
直結タイプでは保管時に付属スイベルとセンサー電極が接触しないよう注意(通電し電池を消耗する)
磁石版
基本鈎数が少ないので「必需品」とは言えないが、取込時や航行時の仕掛保持にあれば便利。5本用などの短い物でOK。



実釣テクニック

アラは真っ先に鼻先に落ちてきたエサに反応し、仕掛が着底した瞬間に喰うケースが非常に多い。複数の個体が存在する場合「大型から順」の傾向が顕著。活エサの場合は「弱らせないようにゆっくり下す」も一理あるが、ことアラに関しては「スピード優先」と考える。
これでは投入が「順番」の場合は最初から勝負が決まっている様に思えるが、実際は仕掛が落ちた場所に必ずアラがいるとは限らず、どの釣座にヒットするかは「アラのみぞ知る」。ゆえに着底以降も如何に「エサが落ちてきた」状態を数多く演出するか、が肝心となる。

大アラの棚は海底から2~3m位上。ここにエサをキープすべく、マメに底ダチを取り直してアタリを待つ。
胴突仕掛は捨て糸の長さを調整すれば「底トントン」で棚を攻める事が可能。錘が海底を叩く事で身エサにイレギュラーなアクションが加わり、アピールにもなる。
片天仕掛2mハリスの場合、オモリの位置で言うなら潮が効いていれば海底から2m、潮が効かないときはやや高めの3mに設定。「やや上」を意識し、錘を海底から離す片天仕掛では海底の変化を察知するのが胴突よりも遅くなる点は否めない。海底の起伏にもよるが胴突仕掛以上に「棚キープ」に留意、頻繁に底を取り直す事、エサの動きに変化を与える事を意識して臨む。

時に10mも巻き上げて再度着底させる誘いは新しい場所に仕掛が落ちる、エサに大きなアクションを与える点では効果的。積極的に勧める船がある半面、潮具合や乗船人数により「オマツリを誘発する」として禁止する船もある。予め確認が必要。但し活エサ使用時は必要以上に大きな動きを頻繁に与える事がエサを弱らせる要因になりかねず、基本「棚の取り直し程度」に終始する。

新潟間瀬港「光海丸」の釣法
近年初夏~晩秋に大型アラを釣らせる船として関東・甲信越地区を中心に注目を集める新潟県間瀬港「光海丸」の釣法は「基本形」とは若干異なる。
船長曰く同地の大アラを「喰わせる」コツは
①真っ先に仕掛を着底させる
②1~2mの棚取り以降、誘いや棚の取り直しなどの操作は一切せずに「放置」するの2点。

「真っ先に着底」は全国共通のテクニックだが、着底直後に喰わない場合は頻繁な底の取り直しや数~10m巻き上げて再度落とすなど「動のアピール」が各地のアラ釣りに共通する、言わばセオリー。
「放置プレイ推奨」は異例と言わざるを得ないが、光海丸がこのスタイルで卓越した実績を積み上げてきたのは紛う事なき事実。釣行時全てのアラがこのスタイルでヒットしており、疑う余地はない。
ツノザメのアプローチがほぼ皆無で仕掛や推奨エサも他地区とは異なる(ワンポイントの項で紹介)が、何れにせよ「郷に入らば郷に従え」の真摯な姿勢が間瀬沖の大アラと対峙する近道と言える。

アタリ~取込み
アタリは激しく竿先を揺さぶり、高い棚のエサに飛び付いた場合は一気にロッドを絞り込むケースもある。基本的に向うアワセだが「アタリだけで掛らない」「喰いが浅く鈎外れし易い」などの渋り時にはヒラメやオニカサゴ宜しく「ロッドをスーッと誘い上げて乗せる」イメージで行うのもアリ。但し、「パチン!」とロッドを跳ね上げる様な動作は厳禁。ハリが口腔内から強引に引っ張り出され、ネムリ鈎の「鈎が口腔内をから滑り出て口元に掛る」特性を妨げ、アワセ時のすっぽ抜けや巻上初期の鈎外れに繋がるリスクとなるからだ。
一呼吸置いてリーリング開始。平坦な海底なら慌てる事はないが、岩礁底では根掛り回避のため早々に底を切る必要がある。

派手なアタリの後、本命か否かを判断する基準は「海底での踏ん張り」。巻き始めに根掛りした様に底から離れなければ(イシナギの場合もあるが)大型本命の期待大だ。海底で踏ん張る魚をハリス強度と相談しつつ、ジワジワとドラグを締めて引き剥がす事がこの釣り最大のポイント。海底形状やハリス号数にもよるが、千載一遇のチャンスを確実にモノにすべく、底を離すまでは慎重に対処したい。

以降の巻上げはドラグを充分調整し中速程度で緩急を付けず、を心掛ける。底層では激しく抵抗するが、水深の半分を過ぎれば大抵は体内のガスが膨張して大人しくなり(浅めのポイントでは上層まで激しい抵抗を見せる個体もあり)、浮き始める。こうなればほぼ勝利は確定。程なく海面下に揺らめいた白い影が見る間に金茶色へと変わり、太鼓腹が海面に飛び出す「クライマックスシーン」が待っている。

太平洋側では多くの釣場でツノザメの猛攻に閉口する事が少なからずの釣りだが、サメを嫌ったらアラは釣れない。時期や場所によっては「何十本ものツノザメの中から本命1本を拾い出す」位の覚悟が必要。 「隣がサメを釣る隙にアラを喰わせろ」の某船長コメントはジョークのようだが、実に的を射ている。
前述の通り海面近くまで巻き上げれば、例え鈎が外れても体内のガスが膨張して浮上する。落ち着いて大口にギャフを打ち込めばゲームセットだ。
むしろ注意すべきは取り込み後。鰓蓋に複数有す剣状棘は海水でふやけた手指には剃刀並みの切れ味となる。大小にかかわらず、クーラーに収める前にニッパー等で切り落とすのが無難だ。因みに背鰭の棘に有毒の報告はないが、かつて小アラの背鰭を誤って指先に刺した際には短時間ながら強い痛みと動悸を感じた事が。何れにせよ「触らぬ棘に祟りなし」。魚体の大小や生死にかかわらず、本種の取扱いには充分注意したい。

好条件下では日に複数の大アラを仕留める幸運も有り得るが基本は「数よりも型」、ボウズ覚悟の一発勝負。特に大型が幻とも言われる今日日、例え何本も釣れる場面に遭遇しても「明日のために」自制する位の余裕(痩せ我慢!?)を持って臨みたい釣りでもある。


アラ釣りに役立つ!? ディープマスターのワンポイント

特殊!?新潟県間瀬沖の仕掛とエサ
釣法の項で紹介した新潟県間瀬港「光海丸」は釣法も独特だが、仕掛やエサも他所とは若干異なる。
胴突4本仕掛はハリス20号55cm、幹糸24号1m。この太ハリスにウスメバルやマゾイが普通に喰い付くのは驚きであり、如何に同地が場荒れしていないかの証明でもある。

鈎は船長推奨の「KINRYU太地ホタ17号赤」。後述する冷凍マイワシの顎を壊さない軸径と大アラのパワーとハリス20号に折れず、伸されずの強度という相反する要素を追求。各社の様々な形状&サイズの深海バリを試して辿り着いたと言う。ハリスにはヤマシタの「マシュマロボールL夜光イエロー」か「20倍ビーズ5」を配す。上端ヨリトリ器具は「より早く着底させる」を意識してベアリングスナップ程度とするのが光海丸流。水中灯は「輝泡」など小型のものをセレクト、ブランコ式に配す。オモリは200号。捨て糸を介さず、下端の親子サルカンにフックで直結と、他地区とはかなり異なる設定だ。
付けエサは船で購入可能の冷凍マイワシ(全長16~18cm)が最も実績大。鈎掛けは下顎から上顎に刺し通すが。「2番手」はサバ短冊のチョン掛けで、各地で「アラ釣りの鉄板」とされるイカエサは短冊、一杯掛け共に「殆ど実績なし」。釣法も含めて間瀬沖はアラ釣りのセオリーが通用しない、ある意味特異な釣場なのだ。

一筋縄では行かない。気難しくも気紛れな「幻魚」のエサ選び
今や地域によっては数kg以上の個体は幻扱のアラ。ちょっとした水温の変化や潮具合で全く口を使わない反面、スイッチが入るとエサの種類も気にせず、その名の通り「アラ喰い」する事もある。一筋縄ではキャッチできない何とも気難しく、同時に気紛れな魚なのだ。

ある年の春、千葉県勝浦沖での出来事。本種の「特効エサ」と言える活ヤリイカは「資源が枯渇する」と禁じ手にする船長も有る程、アラは目が無いエサの筈なのだが。この日アラ専門仕立メンバーの一人が前日午後船に乗船、4杯の活ヤリを持参し出船前から勝負は決したかに見えた。とはいえ活イカに釣れるのは順当過ぎて記事には面白くないなぁ…と思いつつスタートすれば、船中初物4.6kgは筆者のサバ短冊にヒット。一方活ヤリイカは全てサメの餌食で終了しメンバーが引っ張り出したのはスーパーで購入した半ば干からびた塩サバ。活ヤリとは相当のギャップだが、この日のビッグワン9.5kgが選んだのはこのエサ。こうして前日からのメンバーの苦労も、「活ヤリイカで釣れたら直球過ぎて面白くない」筆者の想いも、幻魚の気紛れで見事に報われる。こんな事があるから「エサは複数持参」が理想なのだ。

胴突仕掛は2本目の鈎に一番良いエサを掛けろ!

これは筆者若かりし頃、大アラ釣りに通った千葉県勝浦・串浜の名船長の言葉。曰く、胴突仕掛のアラ釣りでは下から2本目の鈎が最も本命が掛る確立が高いので、活ヤリイカなど数の限られたエサはここに掛けろ、というもの。下から2本目の鈎位置は、基本仕掛の底トントンの設定で、海底から3m程度。片天仕掛での大アラ狙いの棚(海底から3m程度)と、見事に一致する。多くの地域でアラは短冊も含めイカエサを好む傾向が見られるため、オール短冊エサの場合も3本鈎の上下はサバやソウダ、センターにイカを配するのが「ディープマスター流」基本設定だ。

巻上開始時に「アラとサメを見分ける」ポイントは
竿先を激しく叩くアタリの時点ではアラと「税金」のツノザメを見分けることは正直困難。比較するとサメのアタリは「やや緩慢でメリハリが無く、突っ込み後に竿先を煽り、フワ付く事がある」のに対し、アラは「より明確でキレ(メリハリ)があり、突っ込み後に竿先を煽らない」のだが、これは相応の回数を見比べないと判り難い部分。両者の底近くでの抵抗も酷似しているが、初期段階で唯一見分けることが可能(と筆者が思っている)ポイントはリーリング開始時、ある程度のサイズのアラは根掛りを思わせる海底での「一踏ん張り」が有るのに対し、ツノザメはかなりの大型も簡単に底を離れてしまう点。
「アタリがあったのに根掛りだよ!」と思ったら、それはビッグなアラかもしれない。ハリス強度と相談しつつ、先ずは海底から引き剥がそう。但しイシナギも同様に海底で踏ん張るため、本命と思っていたら姿を見て溜息…の場合もあるので念のため。

「ホタ鈎」はアラ専用鈎!?
一時は生産工場がなくなり市場から姿を消したが、特殊形状で鋭い歯によるチモト切れと、口周りの脆いターゲットの外れを大幅軽減する機能が認められ、現在複数メーカーから再販されている「ホタ鈎」。
筆者がこの鈎と出逢ったのは1990年の神津島。漁師がムツ漁に使う18号を漁協で購入。その後特注生産~廃番となるが、特注品にフジッシャー加工を依頼した事で藤井商会が「16号」をリリース。「アカムツがバレ難い」が口コミで広まり他社が追従、現在に至るのだが。

「ホタ」とは関西でアラ、奄美大島ではアオダイの地方名。これを踏まえると「ホタ鈎」は「アラ専用鈎」と言う事にもなる。アラとアオダイは科が異なる「縁もゆかりもない」魚だが、両者には「アタリ後のひと踏ん張りが強烈」という共通点がある。そんな背景を踏まえてタックルをセレクトするのも「楽しみ」の内と感じる。
比較的平坦な海底で根掛りが少ない綾里沖ではアコウダイ同様に「アタリがあったら幹糸間隔分を順次送り込んで仕掛を這わせ」追い喰いを促す。故にハリス号数は12~14号と釜石沖より太めでもOKだ。
一方釜石沖は糸を送れば根掛り必至の「ガッチガチ」の沈船故、推奨ハリスは8(~10)号と一回り細め。着底後すかさず糸フケを除き、3m底を切ってアタリを待つ。竿先を注視してオモリが着底したら素早く3m切って待ち、アタったら3m巻き上げて追い食いを待つ。追い食いしたら更に3m巻き…と上へ、上へのアプローチ。「これはデカい」と確信したら単発でも早々に巻き上げるのがビッグワンを手中に収める最善策だ。

仕掛で変わるアプローチと「二兎を追う者、一兎も得ず」
千葉県勝浦沖のアラは胴突3本鈎仕掛が基本だが、オニカサゴが同棲するポイントで潮流が素直な際は片天吹き流しの2本鈎も「アリ」。
胴突仕掛のアプローチは糸フケを除いて「底トントン」と「センターのハリがメインなので一番良い餌を付ける」が基本。海底の変化に対応し易いメリットがある。対する天秤仕掛は「海底を2~3m切って流す」がアラ狙いの基本ゆえ、錘が浮いているので海底の変化が把握し難く、胴突よりも頻繁な棚取りが必須となる。
同じ天秤仕掛でも鬼カサゴは「底トントン」のアプローチが有利。双方を狙える200mラインでは大アラ一本で意地を貫くか、底を叩いて土産を確保するかは各自のスタンス次第だが、最も良くないのは中途半端に底を切るなど、狙いを絞り切れずに迷う事。喰いの立つ時間はアラも鬼カサゴも同じで、かつ短い。高棚でアラか、底叩きで鬼か。「二兎を追う者、一兎も得ず」と心得て、いずれか一方に狙いを絞るのが正解なのだ。
因みに両狙いポイントでの鈎はオニカサゴの喰いが良いに小型にして、大アラのパワーにも耐える強度を有する藤井商会「フジッシャー毛鈎改造延縄真鯛12号」やKINRYU「柄長鈎15号」など、いわゆる「鯛縄型」をセレクトする。

鰓蓋棘は剃刀並。アラは「取扱注意」の危ない奴!?
体重数kg以上のいわゆる「大アラ」は精悍な顔付きと貫禄のボディ、深海ターゲット中、特に刺身はトップクラスの(と筆者が信じる)超美味にして、易々とは手にできない垂涎のターゲットだが、一方では取り込み後や調理時は取扱い要注意な「危ない奴」の一面も。
鰓蓋周辺に有す複数の棘は剣状の先端部分が「剥き出し」となっており、水にふやけた手指には「剃刀並み」の切れ味を見せる。記念撮影はじめ船上での取扱いや調理の際には充分な注意が必要だ。クーラーに収める際か調理前にニッパーで鰓蓋棘の先端を切り落せば、誤って触れても深手を負わずに済む。
因みに背鰭の棘に有毒の報告はないが、かつて「小アラ」の背鰭を誤って指先に刺した際には短時間ながら強い痛みと動悸が感じられた。何れにせよ「触らぬ棘に祟りなし」。アラの取扱いには充分注意しよう。(画像参照)

アラは氷温で数日寝かせろ!
アラは筆者がトップランクの美味と公言してはばからない超高級魚だが、時に「硬くてゴムの様」「旨味が全く無い」などの酷評を聞く事が。しかし、よくよく聞けば何れも「熟成期間」を置かずに即日刺身にして食した際の評価。身肉の特性を知らぬために起きた、いわば悲劇(喜劇?)の類なのだ。
本種やハタ類など、極めて身の締りが良い白身魚は血抜きして鰓腸のみ除き(鱗は引かない)、腹腔内にペーパータオルを丸めて詰め込んでラッピング、チルド庫で数日間熟成させる事で本来の旨味を引き出す事が叶う。
この「熟成」は身肉に雑菌が付着するのを極力防ぐ意味から可能な限り丸のまま、氷温(0℃前後)を維持して保管するのが理想。筆者は専用のチルド冷蔵庫を使用、調理時以外は極力開閉を避け、温度変化を最小限に抑える配慮をする。一般の家庭用冷蔵庫の場合はドアの開閉頻度の高さから内部温度の変動が大きく(例えチルド庫でも)熟成期間は早まる傾向なので要注意。専用チルド庫と同期間では折角の高級食材が傷んでしまう可能性もある。



アラ料理

本種は深海ターゲット中、特に刺身では最上級の味覚を持つ魚のひとつと考えるが、かつて「アラを釣って刺身にしたが、硬いだけで美味くなかった」「ゴムを噛んでいるように硬くて味が無かった」なる声を耳にし、詳しく聞けば「釣ったその日に食べた」と言う。これは本種の特性を理解していないための典型的「失敗談」であり、勿体無い以外の何者でもない。

マハタやクエ同様にともすれば身の締りが「良過ぎる」本種故、身を熟成させて旨味を引き出すのがセオリー。鱗は引かずに鰓腸のみ除いて腹腔内にペーパータオルの「アンコ」を詰め、全体をラップで包む。小型でも3日、大型なら数日間、可能な限り「丸のまま」チルド庫(氷温)で熟成させて旨味を引き出す。丸魚のまま寝かすのは切り口が多い程外気に触れる面積も広くなり、雑菌が付着し易くなるからだ。

本種はkg辺り1万とも言われ、おいそれとは手が出ない高級魚。近年は代用品としてルックスの似たニュージーランド産のハプカ(和名ミナミオオスズキ・スズキ目イシナギ科)が店頭に並び、価格は国産の1/3~1/5程度とお手頃だが、お味の方も「それなり」なのは否めない所。
産卵後の大型は痩せてやや味が落ちる傾向だが、中小型は年間通じて「高レベル」を維持する。
熟成後の調理はゴタゴタと「小細工」はせず、素材の旨味をストレートに堪能したい。
刺身は薄造り。ワサビ醤油、ポン酢はお好み次第。頭やカマは塩焼き。中骨は潮汁。鍋(水炊き)やシャブシャブも極上。もちろん〆は雑炊。「冷やしチリ」も良い。若魚でも身肉に程よく脂肪が乗り、いわゆる「コアラ」も煮付けや塩焼きで美味だ。本項では刺身を使った飯物と刺身の際に引いた皮の料理を紹介する。

アラ茶漬け
刺身の残りを利用した一品は簡単にして美味。
材料:刺身適量/荒塩/昆布または粉末昆布出汁/海苔/山葵/白飯


調理

  1. 刺身にやや強めに塩を打って一晩置き、余分な水分を除く。
  2. 背骨など「アラの粗」と昆布で出汁を取る。
  3. 器に飯を盛り、1を好みの量並べる。
  4. 熱々の出汁を注ぎ、蓋をして1分程蒸らし、海苔と山葵を添えて食す。

宇和島風アラ飯
本来はマダイを使う高級TKG(卵掛けご飯)のアレンジ版。「超高級TKG」は深海釣師の特権だ。
材料:刺身適量/鶏卵/醤油/味醂/薬味(白ゴマ、大葉、ミョウガ、アサツキなど)/白飯


調理

  1. 鶏卵(全卵)を溶き、醤油と味醂を1:1で合わせた割り醤油(麺つゆでも可)を合わせて好みの味付けをする。刺身と鶏卵のへの味付を考慮し、やや濃い目がお勧め。
  2. 卵液に適量の刺身を浸して数分置き、味が浸みたら好みの薬味を加える。
  3. 器に飯を盛り2を掛け、混ぜて食す。

アラ皮の酢の物
皮のプリプリとした食感と旨みが秀逸。通称「アラ」のハタ類も同様に美味。
材料:皮(刺身の際に引いた物)/キュウリ/塩ワカメ/根生姜/合わせ酢(すし酢、三杯酢、土佐酢など)/塩


調理

  1. 刺身の際に引いた皮はサッと湯がいて冷水に放ち、粗熱を除きながら表面に残った鱗、裏面の身肉を洗い落す。
  2. 皮の水分を拭き取り、幅5~6mm、長さ4cm程度の小口に切る。
  3. 薄く小口にスライスしたキュウリに軽く塩を振って数分置いた後、水分を絞る。
  4. 塩ワカメは塩抜き後にサッと湯通しし、食べ易いサイズに切っておく。
  5. 2~4を土佐酢、三杯酢など好みの合わせ酢で和え、小鉢に盛る。
  6. 針生姜(根生姜の皮を剝き、薄くスライスして針状に刻み、真水でさらした物)を飾って供す。


アラという魚

アラ
スズキ目ハタ科 Nip hon spinosus
国内の分布:北海道~九州南岸の太平洋沿岸、青森県~九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、瀬戸内海(稀)、東シナ海大陸棚縁辺~斜面域
一属一種。背鰭棘条13本と前鰓蓋隅の強大な1棘でハタ科他属との識別は容易。

関西や九州ではクエやヤイトハタなどの大型ハタ類を「アラ」と総称するため混同されるケースが未だにあるが、標準和名「アラ」は目と科は同じ(スズキ目ハタ科)でも「属」が異なる全く別の魚。
前出のハタ類では数十kgの大物も珍しくないが、標準和名「アラ」は1m、十数kgが最大級。現在では5kgを超えれば充分大物と言える。
尖った口先から「キツネ」、スズキに似た外観から「沖スズキ」の他、「ホタ」(関西)「イカケ」(中国地方)などの地方名がある。
水深100~150m前後の砂泥底、砂礫底に多い若齢個体が体側に有する明瞭な暗褐色縦帯は成長とともに不明瞭となり、住処を水深200~350mとやや深みに移した老成魚ではほぼ消失する。
主鰓蓋骨(鰓蓋)に複数有する棘の先端は薄く鋭い剣状。手指に深手を負うリスクがあるので、釣り上げた際はもちろん、死魚を扱う際でも注意が必要。
海底付近での抵抗は激しいが、水圧の変化には弱い。宙層まで上げると体内のガスが膨張。最後は「白提灯」となり、海面に太鼓腹を浮かべる。


第3話 マダラ

漢字では魚偏に雪と書き冬のイメージが極めて強いが、釣期は初夏から年内一杯で数が出るのは夏場、身肉が最も美味いのは白子や眞子が未熟な盛夏、代名詞の白子は秋口の完熟以前が極上…と釣りの世界では「読んで字の如く」ではないマダラ。
派手なアタリと強い引き、最後は海面に浮かぶ白提灯は視覚的にも申し分ない釣趣に加え、魚体サイズと釣果の手堅さはこの魚の大きな魅力。オキメバルと共に北の海域を代表する深海ターゲットだ。 本編では各地で行われる胴突仕掛の釣りに限定して解説。北海道のタラシャクリや電動ジギングなど、ルアー系は除いた。


マダラの釣場

北の海を代表する深海ターゲットはその分布域で広く遊漁の対象とされるが、晩秋以降の東北日本海では出船日が限定され、自然禁漁に近い状況となる。一方ここ数年の高水温で茨城県北部~福島県南部は魚影が薄く、マダラ釣りは下火傾向。
北海道各地
青森県~京都丹後半島沖の日本海沿岸
青森県~福島県の太平洋沿岸



タックルと仕掛

ロッド
大型のパワー、数本が連なった際の大負荷に負けない強度と粘り腰だけでなく、PEラインの伸びの無さでダイレクトに伝わるショックをカバーし、バラシや糸切れを防ぐしなやかさも必須。
マダラを喰わせる「底叩き」をスムーズに演出可能なアクションを設定したグラスチューブラー素材2m前後の深海専用竿。使用錘(釣場により200号~350号)を踏まえて硬軟をセレクト。オキメバルやキンメダイでの「バラシを抑えるやや負け気味」に対し、錘号数を適合させ「底叩き」「根掛り回避」を優先させるのがセオリー。

アルファタックル適合モデル
錘200号…ディープオデッセイ モデルTT
錘250~300号…ディープインパクトLight / ディープインパクトTERUスタイルRT0 / ディープインパクトTERUスタイルS1
錘300号~350号…ディープインパクトTERUスタイルRT1 / ディープインパクトTERUスタイルS2 / ディープインパクトカイザーG

リール…
ロッド同様パワーは不可欠。大型の数珠繋ぎも余裕で巻き上げ、上層のサメ禍対策「魚が付いた状態で高速巻上」も可能な高い実用巻上力は重要なポイント。ポイントの水深からPE6~8号を400mキャパシティで釣りは可能だが、根掛り頻発のポイントでは高切れなどライントラブルを配慮して糸巻量にも余裕が欲しい。一部3000番、500番クラスを使用する船もあるが、現状主流とは言えないだろう。 ミヤエポック AC-3JPC・R800 S社6000~9000番 D社800~1200番

仕掛…
10kg超の大物や「白の提灯行列」が期待できる釣りだが、ハリスや幹糸号数は地域や釣場、船宿により異なる。
一般的には沈船や荒根など根掛りの激しいポイントがハリス8~10号50~70cm・幹糸14~16号1~1.4m。比較的平坦で送り込みOKの釣場はハリス12~14号・幹糸18~20号。ハリスと幹糸は沈船用と同寸でもOKだが、やや長めのハリス長75cm~1m、幹間隔1.5~1.8mとすると喰い渋り時は特に有効だ。
ハリは長軸&特殊形状でバレ難い、チモト付近が傷付かない、鋭い歯の並ぶマダラの口から外し易いと3拍子揃った「ホタ鈎」17~18号がお勧め。 軽量バリのセレクトは低活性時に明らかな喰いの差となって現れる。ハリ数は4~5本で充分。手返し良く、パスせずに全ての流しを投入する事が、確実な「釣果」に繋がる。

捨て糸は8~10号1mとし、錘は根掛りでのロストを考慮して多目に持参。海底に残っても環境に負担を掛けない鉄製のフジワラ「ワンダーⅠ」を推奨する。ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。
仕掛上端のヨリトリ器具は「アタリ後に仕掛を這わせて追い喰いさせる」のポイントでは中オモリの役目を兼ねるのでミヤエポックの「キャラマンリング」「ヨリトリフィン」「ヨリトリチェーン」を連結して重量を持たせ、沈船など糸送りNGポイントなら「ヨリトリ効果」のみを考慮してフジワラ「深海用リングS」などやや小振りの物をセレクトする。

集魚ギミック…マダラには「ボーっと光る緑色」が極めて有効。仕掛上部にはルミカ「ケミホタルイカ6インチ」と「ハイビット」をフックで連結して配し、各鈎のチモトにはルミカ「ルミコグリーン」とヤマシタ「マシュマロボールL・夜光イエロー」、空鈎ではニッコー化成「スーパータコベイト6インチ」やヤマシタ「パニックベイトアコウ・グリーン夜光」も併用、ド派手にアピールする。 また深海バケを含む全ての鈎にはニッコー化成「激臭匂い玉7Φ」のイカゴロエキス配合タイプを通し差し、嗅覚にもアピールする。

深海バケ…藤井商会「フジッシャー毛鈎ホタ」18号の紫、濃緑、橙の「鉄板カラー」3色に低水温時に強い、紅・ピンクを加えた計5色は必須。 

これに冬場の高水温時に「特色」となる可能性がある水色や、白(蛍ムラ)・赤紫・茶など各色を持参。 「午前中は濃緑、午後は橙のみ」「水色以外全く喰わない」など、極端なケースも多々あるので、周囲の状況や水温、過去のデータを参考に、配色はフレックスに対応する。

エサ…「たらふく喰う」の語源で、何でも腹一杯喰う悪食とされているが、最も安定しているのは後述(ワンポイントの項)する「サンマ半身を斜めに細長く半割りしたビッグベイト」。当日の食いや投入回数にもよるが、鈎5本サンマオンリーで一日釣る場合は15尾分(60枚)が持参の目安。匂いも大切な要素なので「無傷」でも2流しした物は交換したい。
サンマに比べると「ムラ」があるが肝付ゲソ半割やイカワタ、マイワシ、小イカなどが有効な場合もあり、これらをサブ的に持参するのも一手。
ワームでは集魚エキス配合のニッコー化成「スーパータコベイト6インチ」半割に「激臭匂い玉」をカットせずにスダレ掛け(画像参照)して実績あり。集魚力を維持しつつ、サンマエサ最大の欠点である「落ち難い臭い&脂汚れ」と「エサ持ちに難」を解消し手返しも大幅アップする。

その他のギミック

サメ被害軽減装置 デニズ「海園」

夏場の太平洋岸は数釣りの時期だが、中~上層でのサメ禍(奪い喰い)も頻発。入れ喰いの日に16尾連続の被害記録!?もある。これまでは「ラスト数十mの最高速巻上」しか対策法がなかったが、多点掛けや大型ほど上層での巻上げが滞り被害に遭う率も高い。強い抵抗と海面下に揺れる魚影に「当日最大」を確信しながら、目前でサメの胃袋に消えたマダラが何尾もいた。また高速巻は口切れのリスク、終盤はスプールが太くなる事でドラグ力が低下し巻上が滞る「現実」も露呈する。機種によりパワー不足で手巻アシストの場面も少なからず目にしてきた。

現在は海中で電流を発生、鼻先の電気器官「ロレンチニ瓶」を捕食に使うサメ・エイ類のみに作用し、仕掛から遠ざける効果が確認されているサメ被害回避装置「海園」を使用する事で被害は大幅に軽減可能。但し「アカムツ釣りで海園を使用するとドンコ(チゴダラ)が喰わない」のテスト結果も報告されており、アンテナ機能の髭を持つタラ類の摂餌にはある程度の影響がある様だ。故に「最初から仕掛に配す」タイプは宜しくなさそう。巻上開始時にカラビナを道糸に掛けて投入する「Ver.2海園」をセレクトしたい。

磁石版
全ての釣場で手前マツリを防止するのに極めて有効なギミック。船に設置されていない場合は持参がお勧め。基本鈎数は少ないので、短尺の物でOK。


実釣テクニック
船縁に仕掛けを並べ、合図と共にオモリを前方に軽く放り投げて投入。合図に間に合わない、トラブルで仕掛が下りない場合は、基本的に一回休み。船長の許可が無い限り、「後から投入」はナシ。 仕掛が全て海中に入ってから親指でスプールをサミングしつつクラッチを切り、バックラッシュに注意しながら一気に海底まで下ろす。

基本的な仕掛操作
錘が着底したら一旦オモリを底から離して糸フケを完全に取った後、再度フリーにして着底させたらロッドの長短・硬軟やウネリの高低、釣座の位置などを計算に入れて50cm~1m位底を切り、船の上下で錘が海底をトントンと叩く「一ウネリ一叩き」の状態をキープしてアタリを待つ。小まめに底を取り直す事が根掛り回避と同時にアピールに繋がる。

マダラのアタリは明確。竿先をガクガクと揺さぶった後、フワッと戻すのが特徴で、見落とすことは殆ど無い。小さなアタリは小型メヌケやチゴダラ(ドンコ)が主で、エサを取られる事も少なくない。エサを小振りにしてこれらを鈎掛かりさせるか、頑固一徹大型マダラのみを狙うかは各自の自由。

比較的根掛りの少ない「送り込みOK」のポイントではアタリがあったらすかさず幹糸間分のラインを送り込み、追い喰いさせるのがセオリー。これをアタリ毎に行い、次々と喰わせる。アタリの主がタラでない場合も操作は全く同じ。既に魚が掛った鈎、エサが取られた鈎にタラは喰わない。追い喰いを狙って送った結果の根掛りならば恥じる事はないので、送り込みは「魚と錘を交換」位のつもりで大胆に行う。故に、オモリは海底に残っても環境に負担を掛けない鉄製「ワンダーⅠ」の使用を推奨するのだ。ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。

沈船ポイントでの仕掛操作
沈船ポイントは大型が潜む魅力の半面、自然の根と異なる複雑な形状ゆえに気を抜いているとあっという間に根掛り、鈎掛りした魚を放置すれば障害物に潜り込み回収不能となる難所でもある。
錘が着底したら根掛りさせぬよう、即座に底を切る。海底が浅くなり錘が海底を叩いたら同様に巻上げ、根掛りを回避しつつアタリを待つ。アタリがあっても送り込みは厳禁。素早く3m巻上げて追い食いを待ち、第2信以降も同様に「上へ、上へ」を意識する。巻上は頃合いを見てor合図を待って行うが、「これはデカい」と確信するビッグヒットなら、単発でも早々と巻くのが得策だ。
※ポイントや潮況で船長から異なる指示が出た場合はそれに従う事。

根掛りの処理
根掛りした場合はいきなり「切る」のではなく、先ず「錘が掛っている」を想定して「外す」事を試みる。ロッドが充分絞られるまでリールを巻いてラインをピンと張り、スプールを軽くサミング、バックラッシュに注意しながらフリーにして一気にテンションを緩める。
これを2~3回くり返しても外れない場合はドラグを締め込んでロッドのパワーと船の移動で「切る」を試みるが、それでも切れない場合はタックルを痛める前に速やかにドラグをフリーにしてラインをリリース。船のボーズに巻く、根切器具を使うなどで処理する。但し、以上の操作はテンションが掛るとクラッチを切るのが困難なスタードラグリールでは不可能。「深海釣りにはレバードラグ優位」の理由の一つである。

巻上~取り込み
巻上げのタイミングは投入と異なり、各自自由が主流。船長の合図まで目一杯待っても構わないが、活性が低く追い喰いがない場合や、特に大型と判断できる強いアタリなら、一本を確実にキープする方向で早めに巻上げに掛るのが得策。ドラグを効かせた中速をキープするが、錘が切れている場合はややスピードアップして巻き上げる事で同乗者とのオマツリを回避する。
但し、夏季にサメが回遊して上層で魚が奪い喰われる場合はラスト数十mでドラグを締め上げ、多数や大型のハリ掛りでも最高速巻上の指示が出る事も。リールの「真の巻上パワー」が問われる場面でもある。
また、根掛りで魚も錘もない場合はオマツリ回避のため終始高速で回収、次回投入に向け準備を整える。
上層までマダラの激しい抵抗は続くが、最後は基本的に海面に浮かんでしまう。サメがいなければ慌てることはないが、錘が切れている場合にはオマツリを避けるべく、手早く取り込む事を心掛ける。
希にガスが抜けて泳ぎ去る個体もあるので、大型や掛りの悪い物はギャフでの取り込みが無難。口には細くて鋭い歯が内向きに並んでいるので鈎外しの際には要注意。
魚を鈎から外した後、エサを付けながら船縁に順序よくハリを並べていく。この時ハリスや幹糸、鈎先をチェックし、傷付いた物、甘くなった物は即座に交換し、次回投入に備える。
以上動作をスムーズにくり返し、全ての回を投入する事が釣果に繋がる。慣れない向きは「二組を交互に使用」がお勧め。

釣り上げたタラは必ず鰓の付根にナイフを入れ、バケツの海水で血抜きを施した後、海水氷のクーラーに収めて全体を冷却する。ここが後述する「味覚」を決めるポイント。血抜きをしても、氷だけのクーラーに放置では殆ど意味がない。必ず海水を注ぎ「海水氷」とする。特に夏場は充分な氷を用意して臨みたい。デッキに付着した血は放置せず、速やかに洗い流す。但し、サメ回遊時に血を海に流すのは「コマセ」同然となり厳禁。サメ回遊時期には血抜き専用クーラーや大樽を用意し、この中で放血。血抜きした海水は帰港時に捨てるなどの配慮が必要だ。


マダラ釣りに役立つ!?ディープマスターのワンポイント

マダラ特餌は味付サンマのビッグベイト
深海ターゲットにも「餌の好み」が顕著に見て取れる魚種が複数あるが、マダラもその一種でサンマ餌が圧倒的に有効。但しサンマは表皮が薄く柔らかいため、通常の短冊切りをチョン掛けすると極めて餌持ちが悪い。現場でも投入直後に海面を漂い、海鳥の餌となっているケースを度々目にする。

マダラ釣りの盛んな東北地方では「鮮度の良い生サンマを現場で切る」を推奨する船宿もあるが、入手やコストを考えると現実性が乏しいし、出船前や航行中に船上で餌を切るのは面倒でもある。筆者は専ら安価で入手し易い(近年は不漁で高騰傾向だが)解凍サンマに一工夫施して使用、実績を上げている。
サンマは胸鰭を残した状態で3枚に下したら軽めの塩とたっぷりのグルタミン酸を振る。二晩ほど冷蔵して身を締めつつ味付も施した後、水気を拭き取れば「下ごしらえ」は完了。使用前夜に肩口から斜めに包丁を入れ、可能な限り「細長い半割り」にして持参する。ポイントは「締めた半身を半割りにする」事。半割してから加工(締める)と身がチリチリと縒れてしまい「泳ぎ」が悪い、幹糸に絡み易くなり要注意。
鈎掛けは胸鰭の骨と尾の付根の硬い部分を利用する事で、投入時~降下中の脱落を解消可能。加工後水気を除いた半身をラップに包み冷凍保存、使用前日に解凍してカットでもOK。ある程度の量をストックしておけば急な釣行にも対応可能。 マダラ以外にも大ムツやアラ、オニカサゴ、コウジンメヌケなどに有効だ。
※マダラ以外の魚種ではサンマ餌使用を禁止する地区(東京都新島沖・千葉県勝浦沖など)があり、使用の際は要確認。 

ワンポイントで配す「スルメイカ肝付ゲソの半割」
時にイカワタに強く反応するマダラの仕掛に「ワンポイント」で配すエサがキンメダイの項でも紹介した「スルメイカの肝付ゲソの縦半割」。胴を外した肝付ゲソは切れ味の良い包丁で眉間から左右対称(脚5本のセンターが鰭脚となる様に)に割り、切り口を上にしてトレーに並べたらグルタミン酸をタップリ振って一晩冷蔵。絞れた水分を除いて使用する。鮮度の良い生イカがベストだが、冷凍イカを半解凍状態で加工してもOK。鈎掛けは鰭脚の付け根付近にチョン掛けすれば良い。肝の「コマセ効果」も期待!?して仕掛の中~上部に配すのがセオリーだ。

エキストラ少ないマダラはアピール最優先のグリーンライトが◎
水中灯を筆頭としたアピールグッズは各種深海ターゲットに有効だが、「諸刃の剣」の部分も否めない。 クロシビカマスを筆頭とした縄切魚や深海ザメ、ギス、シマガツオ、サバなどのエキストラが多いポイントや海域では本命より先にこれらを呼び寄せてしまう事も少なからず。状況に応じた発光カラーやサイズのセレクトは結構気を遣う部分。

午前と午後でヒットカラーが変わる!?釣果を握るフジッシャー毛鈎のセレクトとは

オキメバルの項でも詳しく振れた「深海バケのカラーセレクト」は勿論マダラでも重要なポイントだ。 茨城県北部~福島県南部のマダラ釣りが隆盛を極めた時期、数釣れる夏場の鉄板カラーは青紫・橙・濃緑の3色。配色は午前が下鈎から橙、青紫、濃緑、青紫、濃緑の順、午後は橙、青紫、橙、濃緑、青紫の順に差し替えるのが基本パターン。青紫は終日安定して喰うが、濃緑は午前、橙は午後に偏るケースが非常に多かったからだ。

ところが5~6月のシーズン初期や終盤の11月以降になると少々様子が異なってくる。晃かな低水温時には紅色やピンク、赤紫などの「赤系」が明らかな優位性を示す事が目立つ。また「冬だが水温が高い」場合は鉄板カラーも赤系も完全スルー、普段は「ドンコも喰わない!?」水色しか口を使わないケースにも幾度か遭遇。同乗者0~5尾の中、後半に配した水色バケ2本で16尾のトリプルスコアをマークした事も。

ヒットカラーを掴んだら全鈎同色に…と思いがちだが、実際にはそこまで簡単なものではない。ポイント移動などちょっとした条件の変化でヒットカラーがクルリと変わる事があり、マダラに限らず単一色の仕掛はリスクが大きいのだ。  真夏の宮城県金華山沖では自身の11kgを筆頭に船中好調だった青紫がポイント移動した途端に喰わなくなり、以降釣果はピンクに集中した経験が。投入毎にカラーチェンジする「いじり過ぎ」は逆効果になりかねないが、深海バケは各色を用意。実績と傾向を踏まえつつ、常に「次の一手」を意識しておく事が必要なのだ。

釜石沖は巻き上げ、綾里沖は送り込み。釣場で異なる追い喰いのテクニック
一部釣法解説と重複するが、筆者が定期的に釣行する岩手県越喜来崎浜港は南に綾里沖、北に釜石沖と何れ劣らぬマダラの好漁場を有すが、両ポイントの攻略法は「真逆」で翻弄される釣人も少なからず。
比較的平坦な海底で根掛りが少ない綾里沖ではアコウダイ同様に「アタリがあったら幹糸間隔分を順次送り込んで仕掛を這わせ」追い喰いを促す。故にハリス号数は12~14号と釜石沖より太めでもOKだ。

一方釜石沖は糸を送れば根掛り必至の「ガッチガチ」の沈船故、推奨ハリスは8(~10)号と一回り細め。着底後すかさず糸フケを除き、3m底を切ってアタリを待つ。竿先を注視してオモリが着底したら素早く3m切って待ち、アタったら3m巻き上げて追い食いを待つ。追い食いしたら更に3m巻き…と上へ、上へのアプローチ。「これはデカい」と確信したら単発でも早々に巻き上げるのがビッグワンを手中に収める最善策だ。

マダラ三枚下しのコツ
一度の釣行で数釣れる事が少なくないマダラ。「足が速い」魚でもあり、帰宅後のスピーディーな処理は中々大変。特に3枚下しはアバラ骨の付根が板状に繋がっている為、普通の方法では骨を断つのに苦労するし、包丁の刃も痛めてしまう。 マダラの三枚下しにはちょっとしたコツがある。

  1. 鱗を除き、鰓腸を除いて頭を落とす。
  2. 通常3枚下しと同様に背側、腹側から背骨に沿って包丁を入れる。
  3. アバラを断ち切らず、板状になっている付根部分の上を包丁の刃で擦り、身だけを切る。
  4. 尾の付根から腹腔手前までを切り離し
  5. 尾鰭を押さえて一気に身を引き剥がすとアバラが背骨に残った常態で綺麗に身が剥れる。

但し、この方法は鮮度が良い事が条件。釣行当日の処理をお勧めする。


マダラ料理

「マダラってアンモニア臭い」と思っているアナタ。それは血抜きしていないから。「白子は美味いけど、身はパサパサだよね。」それは冬場の個体だから。
流通するマダラで血抜きされた物は皆無だろう。釣上げた直後に鰓の付け根にナイフを入れて放血し、海水氷で充分に冷却して持ち帰るマダラは釣人の特権。翌日までなら刺身(ポン酢がお勧め)もOKだし、臭みが全くない上質の白身は和洋中、様々な調理にアレンジが可能。
刺身以外は三枚におろしたら軽く塩を振って2~3時間冷蔵後に水分を拭き取る。これをラッピングして冷凍すれば長期間の保存でも殆ど劣化が見られない。
我が家では「夏ダラ」の身を晩秋まで保管し、やや未熟な極上白子+プリプリ極上の身で楽しむ贅沢なタラ鍋は刺身同様、釣師の特権だ。因みに白子を採った「冬の身」も同様に処理、油を使うなど旨味を補う調理法で上等だ。

刺身

材料:柵/浅葱/紅葉おろし/ポン酢
調理

  1. 釣り上げたマダラが生きている内に鰓の付け根を切って血抜きし、冷海水でキンキンに冷やして持ち帰る。
  2. これを前述の要領で三枚に下し当日中、遅くても翌晩までに薄造りに引く。胃袋を開いて内容物を除き、湯引きして小口に切ったものを添えても良い。
  3. 紅葉オロシとタップリの浅葱小口切りを薬味にポン酢で食す。ポン酢には少量の肝を溶いても良い。因みに「タラ刺し」にはワサビ醤油は向かない。

※翌日以降の生食は昆布〆にする。こちらはポン酢よりワサビ醤油が合う。

さごはち漬け
材料:切身/さごはちの素(市販品)
調理
塩、麹、米を3:5:8の割合でブレンドした漬物用の「さごはちの素」を切り身にまぶして一晩置き、洗い流すだけで簡単に作れる保存食。市販の「塩麹」を塗布して冷蔵しても良い。西京漬け(調理はキンメダイの項参照)も美味。各種漬物は冷凍保存可能。焦さない様に焼き上げる。

白子ポン酢
材料:
白子/浅葱/紅葉おろし/ポン酢
調理

  1. 一口大にカットした白子を沸騰した鍋で湯がき、表面が透明感のない白色になったら氷水に取り粗熱を除く。(2~3分程度)
  2. 水気を拭き取り小鉢に盛り、浅葱の小口切りと紅葉おろしを添える。
  3. ポン酢を掛けて供す。

※湯がいた白子は豆腐の様に水道水を張った器に入れてで冷蔵、毎日水を変える事で数日間保存が可能。

フライ3種(ノーマル・チーズイン・梅紫蘇挟み)
材料:皮を引いた柵/パン粉/鶏卵/小麦粉/塩/胡椒/スライスチーズ/練り梅/大葉 タルタルソース用:マヨネーズ/鶏卵/玉葱/パセリ(生、乾燥の何れも可)/塩/胡椒/ピクルス(なくても可)

  1. タルタルソースを作る。鶏卵は固ゆでしてみじん切り。玉葱はみじん切りにして水にさらし、辛みを抜いてから水気を絞る。パセリのみじん切りと共にマヨネーズで和え、塩・胡椒で味を調える。ピクルスのみじん切りを加えればより本格的。食卓に出すまで冷蔵しておく。
  2. 皮を引いた柵は適当なサイズに切り分け、ノーマルはそのまま、チーズと梅紫蘇の挟みフライにする物は半分の厚さに開く。この時一辺は繋げておく事。
  3. ノーマルとチーズ挟み用には軽く塩、胡椒を振る。梅紫蘇には塩のみ。(軽く塩を振り、水分を絞った保存用マダラなら塩は振らない)
  4. チーズ挟みはスライスチーズを、梅紫蘇は開いた内側に練り梅を塗り、大葉を挟む。
  5. 小麦粉、溶き卵、パン粉の順で衣を着ける。
  6. 180℃の油で色よく揚げる。揚げ過ぎるとタラの水分や挟んだ具が油に溶け出し、はねるので注意。
  7. 挟み揚げはカットして盛り付ける。ソースは好みの物で良いが、梅紫蘇はそのまま、若しくは醤油で食す。

オーロラソース和え
材料:柵(皮付き、皮無し何れも可能)/生野菜(写真は赤と黄のパプリカとイタリアンパセリを使用)/揚げ油/小麦粉/塩/胡椒/ケチャップ/マヨネーズ/好みの洋風ドレッシング

  1. 柵を一口大にカット。軽く塩、胡椒して小麦粉を振る。(塩を振り水分を絞った保存用マダラなら塩は振らない)
  2. 180℃の油で色よく揚げ、油を切っておく。
  3. ケチャップとマヨネーズを1:1(好みで比率を増減)で合せてよく混ぜ合わせ、オーロラソースを作る。
  4. ソースに2の唐揚を加え、崩さないように和える。
  5. 5の野菜の上にオーロラソース和えを見栄え良く盛り付け、青味を散らし、完成。

※昭和40年代学校給食定番メニューのアレンジ。

唐揚げ完熟トマトソース添え
材料:柵(皮付き、皮無し何れも可能)/完熟トマト/コンソメジェル/グリーンアスパラ/塩/胡椒/乾燥パセリ/乾燥バジル/小麦粉/揚げ油/オリーブオイル

  1. 完熟トマトをざく切りにする。
  2. 塩、胡椒、乾燥パセリ、乾燥バジルを振り、オリーブオイルで合えて冷蔵しておく。
  3. グリーンアスパラを横1/2にカットし、塩水でサッとゆで上げる。
  4. 柵を一口大にカットして軽く塩、胡椒して小麦粉を振る。(軽く塩を振り、水分を絞った保存用マダラなら塩は振らない)
  5. 180℃の油で色よく揚げ、油を切る。
  6. 2のトマトを皿に盛り、コンソメジェルを添える。
  7. 4の唐揚げを盛り、グリーンアスパラを飾る。

※アツアツの唐揚げを冷たいソースで頂く一品。

シュウマイ
材料:身肉600g/ショートニング200g/玉ねぎ1個/片栗粉90g/卵1個/塩小匙2/砂糖大匙1/ 醤油小匙1/旨味調味料小匙1/白コショウ適量/シュウマイの皮(無ければ片栗粉でも可能)

調理

  1. 骨と皮を除いた身肉を粗みじんに刻み、少し叩く(フードプロセッサーですり身状にしても可)
  2. ボールに調味料を全て合わせて充分に撹拌し、身肉とショートニングを加えて練り込みタネを作る。
  3. 冷蔵庫で1時間以上(可能なら半日ほど)寝かせる。
  4. 玉ねぎをみじん切りし、タネと合わせる直前に片栗粉を加えてさっくりと混ぜる。
  5. タネと玉ねぎを混ぜ合わて餡の完成。
  6. シュウマイの皮で包む。皮が無い場合は丸めた餡全体に片栗粉を塗しても可。
  7. 強火の蒸し器で10~15分蒸し上げる。餡にカニやエビ、ホタテなどを混ぜ込む、皮に包む際にトッピングすればグレードアップ。


マダラの種類

マダラ
タラ目タラ科 Gadus macrocephalus
国内の分布:北海道全沿岸、青森県~茨城県の太平洋沿岸、青森県~山口県の日本海沿岸
頭が大きく、体長は頭長の3.2倍。背鰭3基、臀鰭2基を有す。側線有孔鱗は第3背鰭直下まで連続的で以降は不連続。
上顎は下顎よりも長く、下顎には眼径と同等若しくは長い1本の髭を有す。この髭は「アンテナ」の役目を果たすとされ、水族館の展示では斜め前方に「髭」をピンと伸ばして泳ぐ様が確認できる。大口の中には鋭い歯が内向きに並び、一度咥えた獲物は逃さない。「鱈腹喰う」の語源とされる旺盛な食欲で年に40~70%も体重が増加。10~12年で体長1mに達し、大型は20kgを超える。

マンボウ、マグロ類に次ぐ産卵数の多さと前述の貪欲さ、前述の成長の速さが大量に漁獲され続けても資源量を維持できる要因とされるが、獲れば資源量は減少し獲らなければ回復するのは東日本大震災後の東北太平洋岸の状況で一目瞭然。
成熟した白子はタチ、又はタツと呼ばれ珍重。「タラコ」は通常マダラではなく、後述するスケソウダラの卵巣を指す。

冬の魚のイメージが強いが、釣期は6月下旬~年末の約半年間。数が釣れるのは海況が安定する7月下旬~8月中旬頃。白子が膨らむのは9月下旬以降だが、身が美味なのはそれ以前。産卵が終わる年明け以降は痩せて味も落ちる。水温の関係で数十mでも大型が釣れる北海道以外は、水深150~300mの起伏の激しい荒根や沈船根を釣る。釣場によりサイズは異なるが、通常3~5kgを中心に大型は7~時に10kg超、冬場の東北では十数kgのビッグサイズも。基本夏は中型の数釣り、秋以降が型狙いとなるが、夏場も大物が混じるので、油断は禁物。

スケトウダラ
タラ目タラ科 Gadus chalcogrammus
国内の分布:北海道全域、青森県~和歌山県の太平洋沿岸、青森県~山口県の日本海沿岸
頭はマダラより小さく体長は頭長の3.7倍。背鰭3基、臀鰭2基を有す。側線有孔鱗は第2背鰭直下まで連続的で以降は不連続。

日本産タラ科魚類で唯一、上顎より下顎が突出。下顎の髭は退化的でない、若しくは著しく小さい。雄の腹鰭は雌より大きい。冬~春は産卵の為沿岸に集まり、夏~秋は分散して摂餌する。90cm超の記録もあるが、通常は大型で60cm、2kg程度。

蒲鉾や魚肉ソーセージなど「練り物」の主原料にして、タラコ&辛子明太子の親。日本の食卓を支える白身魚は単一種の漁獲対象資源としては世界最大級のボリュームとされるが、86年には歴史上最大とされる680万tあった北太平洋全域での漁獲量は90年代から減少し、近年はピーク時の半分以下。ベーリング公海では93年以降禁漁措置が取られるなど、資源の枯渇が危惧されている。

「スケトウ」の名は、「佐渡で多く獲れるタラ」が語源とされ る。「佐渡」の「佐」は「スケ」とも読み、「渡」が「ト」。「スケトダラ」→「スケトウダラ」。漢字は佐渡鱈となる。(他に「介党鱈」「鯳」の字もあり)
かつて北海道でも大量に漁獲された本種だが鮮度低下が早い上、冷凍すると冷凍変性(解凍すると身がスポンジ状になる)を起こすため練り物原料への利用は鮮魚に限られていたが、1960年に北海道水産試験場が本種のすり身に砂糖を加える事で、冷凍変性をほぼ完全に解消する技術(現在も当時のまま受け継がれている)を開発し一躍「冷凍すり身」の代名詞に。65年には船上でのすり身加工が企業化され、我が国の漁獲量は急増。72年に300万tを記録するが「領海200海里」以降は漁場規制で漁獲量は激減。現状「冷凍すり身」は輸入品や、本種以外の割合が増加している。
魚卵とすり身のイメージがあまりにも強く、他の調理イメージは希薄だが三枚下しでの歩留りはマダラ35%に対し、本種40%。スリムな外観だが可食部分は多い。新鮮な物はマダラ同様に生食も可能だが、アニサキスの仲間シュードテラノーバが寄生している場合があり-20℃以下で24時間冷凍した「ルイベ」が無難。フライやムニエルも美味。


第2話 オキメバル

最初は鋭角的なアタリが数が付くに従って次第に鈍くなり、重量感に変わって行く過程、弧を描くロッド、胴突仕掛に連なる橙色の満艦飾。キンメダイやアコウダイと共通する最大の「見せ場」。
東北地区では「大型クーラー満杯」もこの釣りのステータスだが、筆者が真っ先に上げたいこの釣りの魅力はその味覚。首の付け根がグッと盛り上がる幅広肉厚のグラマラスなボディは口から噴き出す程に腹腔内に脂肪塊を蓄え、あらゆる調理でその実力を余す事無く発揮する「究極の逸品」。
更に一歩踏み込んだ「アタリを楽しむロッド」と「オール疑似餌」をキーワードに「より価値ある1尾」を追求するスタンスもここでは提案したい。

「オキメバル」という魚
沖メバルとは浅海の黒メバル(和名メバル)に対し、沖合のやや深いポイント(数十m以深)に生息するメバル類を総称した物。「オキメバル」という名は標準和名ではなく、沿岸に棲む黒っぽい体色のメバル(クロメバル、アカメバル、シロメバルの3種。かつての標準和名「メバル」に、東北・北海道では「エゾメバル」を含む場合もあり)に対して「沖合の深みに棲む体色の赤いメバル」を指す俗称。狭義ではウスメバル、若しくはウスメバルとトゴットメバルの2種を、広義ではウケグチメバル、カタボシアカメバル、ヤナギノマイ、ヤナギメバル等も含めた中深場の「赤いメバル」全般の呼称である。

※本編では現状オキメバル釣りのメインたる標準和名「ウスメバル」に絞り解説を進めるが、茨城県の一部など軽量錘で水深数十mにアプローチする釣りは「DEEP」範疇から外れるため、取り上げていない。


オキメバルの釣場

青森県太平洋沿岸・日本海沿岸のほぼ全域
秋田県沿岸のほぼ全域(男鹿半島沖・秋田沖など)
山形県沿岸のほぼ全域(象潟沖・飛島沖など)
新潟県沿岸のほぼ全域(粟島沖・佐渡沖など)
岩手県沿岸のほぼ全域(久慈沖・宮古沖・大槌沖など)
宮城県沿岸(綾里沖・金華山沖など)
福島県沿岸(四倉沖・塩屋崎沖など)
茨城県沿岸(平潟沖・日立沖など)
千葉県銚子沖
京都府丹後半島沖


タックルと仕掛

ロッド
東北全域と新潟では200~250号錘を使用し、秋田県~山形県ではコマセ併用が主流となりつつある。福島から茨城北部では鈎数はやや少なめの傾向だが、使用錘は同等だ。これらの地区では「オモリが底トントンと叩く状態を維持してアタリを待つ」基本的釣法と「反応の手前で全員の仕掛けを下し、船を移動して反応に合せていく」スタイルがある。前者では底を叩く復原力が最初の一尾を喰わせるためのキーポイントとなり、後者では復原力よりも「追い喰いを待つ間や巻上げ中に外さない」クッション効果が優先されるが、ベタベタの胴調子ではエサの踊りが悪く、喰い付きが遅くなる事は否めない。何れの場合も喰いを待つ間や巻上時に要求される機能は全く同じだ。

これらを踏まえ、6:4アクションの専用竿をセレクト。ロッドの硬軟は各自の好みにもよるが、使用錘に対してやや負け気味のアクションセレクトがセオリー。使用オモリ200~250号に対し、150号クラスを用意する。素材は跳ねを抑えるオールグラスファイバー製が圧倒的に有利だ。

「クッション効果で外れを抑える」を最優先に以前は3.3~3.5m(以上)の長竿が多用されたが、近年はロッド性能の向上と取り回しの良さを踏まえ、(地域や船により差はあるが)以前より短めが好まれる傾向。
船の大きさや釣座で長さの使い分けが必要なケースもある。喫水の高い大型船では「クッション効果」が活用できる長竿だか、喫水の低い中小型船の胴中では初期段階から竿先が海中に突っ込みアタリが取り難い、潮の影響を受け釣り難いなどの不都合が。キーパーに椹木を噛まして嵩上する方法もあるが、限界がある。中小型船では2.7m未満の選択がベターだろう。
尚千葉県銚子沖、京都府丹後半島沖ではやや軽量(100~150号)の錘を使用するため、オキメバル専用竿は若干「強め」となる。アカムツロッドの流用がお勧めだ。

アルファタックル適合モデル
ディープインパクト カイザーT
ディープオデッセイ モデルT
ディープオデッセイ モデルTT
HBオキメバル260
スーパーディープクルーザー220オキメバル
輝テリハチメ270
銚子沖・丹後半島沖用
HBアカムツ230

リール…
東北・新潟県・茨城県北部用

水深150m前後が中心だが「良型10尾以上連なる事が前提」はもちろん、日本海側ではホッケの満艦飾でもガンガン巻いてオマツリを回避するパワー&スピードが必須。併せて口切れし易いオキメバルを確実にキャッチできる高性能のドラグも不可欠だ。ラインはPE(5~)6号がメイン。
ミヤエポックAC-3JPC、S社4000~6000、D社750が該当。
銚子沖・丹後半島沖用
アルファタックル ポラリスiv500、S社3000、D社500が該当。ラインはPE4号。

仕掛…
東北・新潟県・茨城県北部用

幹糸7~8号70cm・ハリス3~4号30cmの胴突10~15本バリ。ハリは細地ムツ14号、若しくは同号のオキメバル用毛鈎。茨城県北部では鈎数10本未満が主流。仕掛上端には藤井商会「水切板」などの小型ヨリトリ器具を配す。オモリは釣場、船により200~250号。根掛り激しいポイントならフジワラの鉄製「ワンダーⅠ」を推すが、根掛りが少ない釣場や「船で仕掛けを曳いて反応に合せる」スタイルでは「横方向の潮当たり」=糸フケの少なさを優先。鉄製より体積の小さい鉛製「スカリー」をセレクトする。
※ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。
銚子沖・丹後半島沖用
市販のオキメバル用仕掛、フラッシャーサビキなど鈎数10本未満が主流。

既成仕掛
藤井商会「フジッシャーオキメバル仕掛・丸鉛入」
風による手前マツリを回避し手返しをスムーズにする「丸鉛」を幹糸に配したオキメバル仕掛。基本の鈎数は10本と15本だが、鈎3本毎に幹糸に撚り取り目的のスイベルが配され、この部分から3本単位での増減が可能。
様々なカラーバリエーションで水色や水温など状況に応じて使い分け可能。基本データ(傾向)は低水温時に赤やピンク、高水温は青や黄緑が効果的。紫は水温に左右され難く、白は安定も突出しない、橙は突出して釣れる時がある…等。これらを踏まえつつ、各色ミックスの「パイロット仕掛」でその日の傾向を素早く読み取り「ヒットカラー」中心の配色に交換する。時間やポイント移動で「ヒットカラー」が変わる事もあるので、周囲の釣況にも目を配り臨機応変に対応する。因みに同色の細地バリと太地バリを交互に投入する検証ではキンメダイ同様「細地鈎の圧倒的な優位性」を確認済みだ。

釣座スペースが十分に取れる場合はロッド左右に2組の仕掛を並べ、交互に使用すれば手返しアップ。取り込み後の処理やエサ付けも余裕を持って行える。

深海バケ…
東北地区では前出「フジッシャー毛鈎」以外にも魚皮や羽毛、化学繊維など様々な素材を使用した沖メバル用バケ(&仕掛)が販売されている。カラーセレクトは「フジッシャー仕掛」に準じ、ホッケやサバが極端に多い場合は夜光系を避けるのが基本だ。

秋田沖オキメバルに於ける深海バケの色別使い分け
深海バケの使い分けを過去のデータを元に一覧表とした。あくまでも傾向であり、絶対ではない。

カラー高水温低水温濁り潮澄み潮摂餌傾向コメント
濃紫イカオールマイティーだが、澄み潮に弱い事も。特色となる場合有り
薄紫イカオールマイティーだが、濁りにやや弱い
濃緑小魚濁り潮に有効
薄緑小魚高水温時澄み潮に有効
水色小魚高水温時の特色だが、当り外れがはっきりしている。
アミエビ通常ワンポイントカラーの傾向だが、特色となる場合有り
小魚高水温時の澄み潮に有効
状況に関らずオールマイティーだが、特色にはならない
アミエビ低水温時・濁り潮に有効だが、宙層でホッケに捕まり易い
ピンクアミエビ低水温時・濁り潮に有効だが、宙層でホッケに捕まり易い

集魚ギミック…サバやホッケが少ない場合はルミカ「輝泡」「ビット」等の小型水中灯が有効。緑色発光と赤色発光を持参、状況を見て使い分けるのがベター。ヨリトリ器具の下に親子サルカンを接続してブランコ式に配せばスピーディーな取り外しが可能。
秋田県~山形県では「保険的意味合い」でコマセカゴを配しオキアミorアミのコマセを併用するのが主流(必ずしも必要ではないとする船長も有るが)となっている。コマセを積極的に振り出すスタイルではない(コマセを振ると群れが散るとされる)事、水中抵抗が少ない事からステンレスカゴが主流。但し使用するコマセにより網目サイズを選択する必要がある。

エサ…多用されるホタルイカ壺抜きの肝付ゲソは口から眉間をチョン掛け。手返し優先なら幅5~6mm、長さ数cmのイカ短冊。着色や味付けはお好みで。
ポイントや時期によりイカ餌よりもサバ短冊(イカ短冊と同寸)やワカサギ、ハゼ、モツゴ(下顎から上顎に鈎掛け)、シラウオ(下顎から頭頂の硬い部分に鈎掛け)などの小魚が有効なケースがあり、深海バケ同様に各種持参がお勧め。

疑似餌…近年マイブームは「フジッシャー仕掛+ニッコーベイト」のオール疑似餌で臨むスタイル。
ワームはロストしない限り終日交換の必要が無いため手返しが飛躍的にアップするが「数釣り」を推奨する物ではなく、毛鈎も含めてルアーフィッシング感覚で「魚との知恵比べ」を楽しむスタンスだ。
潮や季節、時間帯によりヒットカラーは変り、大まかな「パターン」はある物の一筋縄ではいかないのが難しくも面白い所である。
ニッコーベイトのメリットは

  1. 投入毎の交換不要で多点仕掛けの手返し抜群
  2. 壺抜き、カットなどの下準備不要
  3. 常温保存で液体も出ず、運搬楽々&クーラー不要。手指や船縁も汚れない
  4. 色や形状をセレクトし釣果に繋げる面白さ
  5. ホタルイカや身餌と遜色ない釣果

が挙げられる。

ニッコー化成
「マイクロイカタン1.8inch」

単体でエサ代りに使用するイカタン型ベイト。手返しアップはもちろん、匂いとカラー、「トリプルテイル」のアクションで身エサと遜色のない効果。エサに喰わない激渋り時に大型を複数キャッチした実績もあり。状況で使い分けるケイムラグリーン、クリアレッドフレークUV、ラメピンクUV、ケイムラオレンジ、クリアラメUVの計5色。オキアミコマセ併用時はクリアレッドフレークUVとラメピンクUVが強い傾向。
「ピンストレート1.9」
ストレートテイルのスリムなワーム。ダークブラウンゴールドフレーク、クリアレッド、パールホワイト、クリアイエロー、クリアシルバーフレーク、クリアピンク、ウォーターメロンレッドフレーク、グローホワイトの計8色。

「ダッピーホタルイカ3inch」
集魚剤超配合素材の「イカワタパーツ」を集魚剤コーティング素材で包んだホタルイカ型ワーム。大型やソイ狙いで前出ベイトに混ぜ込んで使用。グローホワイト、クリア、ホタルイカ、レッドUV、オレンジUV、モスグリーン、ケイムラドットグローレッド、ケイムラドットグローパープル、ケイムラドットグローオレンジ、ケイムラホロラメの計10色。

その他のギミック
サメ被害軽減装置 デニズ「海園」

秋田~山形県沖では盛夏もメバル自体の活性は高いが、ハリ掛りしたメバル諸共「決して安価とは言えない」オキメバル仕掛が海の藻屑と化す「サメ過」が多発し開店休業状態なのが実情。
このサメ過はポイント周辺の底曳網漁が関係するとされ「他の時期は網から零れる魚を狙って底曳き船を追うサメが、底曳き休漁期間の夏場はメバル船に付くから」だとされる。
真偽はともかくサメの被害を軽減できれば夏場の釣りが快適になるのは間違いない。 「海園」は海中で電流を発生、鼻先の電気器官「ロレンチニ瓶」を捕食に使うサメ・エイ類のみに作用して仕掛から遠ざける効果が。オキメバルの喰いには影響ないので仕掛上部に最初から接続する「Ver.2イカ直結用」のがお勧め。
磁石版
全ての釣場で手前マツリを防止するのに極めて有効なギミック。船に設置されていない場合は持参がお勧め。鈎数に応じて長さをセレクトする。


実釣テクニック
予め投入スタイル(全員一斉、艫or舳先から順番など)を船長に確認しておき、船縁の磁石板にハリを順序よく並べて投入の合図を待つ。
合図に合せオモリを前方に軽く放る感じで投入。バックラッシュさせないように注意しつつ、一気に海底まで仕掛けを落とし込む。 船長の計算通りなら着底の瞬間や棚取り直後に派手なアタリが竿先を叩くが、現実はそんなグッドコンディションばかりとは限らない。
オモリが着底したら根掛りさせないように素早く糸フケを除いて1~2m底を切り「棚キープ」が基本。
キープとは「放置」ではなく「水深が変化しても常に錘の位置(棚)を維持する」事。状況に応じて素早くリール操作(底の取り直しor巻上)を「続ける」事が肝心。カケ上がって浅くなり、オモリが底に着いて糸フケが出たら素早く巻き取り、逆に底を叩く感触が伝わらない宙ブラ状態ならラインをリリースしてオモリを着底、海底をノックする。時に数~10mも巻き上げ、再度着底させる「落とし込みの誘い」など、大きなアクションを織り混ぜて変化を付けるのも有効。

但し、操船スタイルにより「オマツリを誘発するので底の取り直しは不可」の船も有り。初乗船の際は釣法(投入や巻上のルール)やタナ取りの高さ、落とし込み誘いの可否など、必ず船長に確認する事。 秋田の筆者常宿では「着底後2m底を切ったら棚の取り直しをせずにアタリ待つ」が基本。これは魚群を散らさぬ様に反応の手前に仕掛を着底させ「仕掛を船で曳いて反応に入れる」ため。

この操船中の底ダチ取り直しは仕掛けが斜め横方向に走り「反応に入らない」「隣席以降とのオマツリ」の要因となりNG。但し仕掛が反応に入った(ラインが真っ直ぐに立った)後アタリが遅い様なら「棚の取り直し」のアピールもアリ。何れにせよ状況を素早く把握、対処する事が重要だ。

アタリは明確だが、慌てて巻き上げてはこの釣りの醍醐味は味わえない。複数繋げるべく追い喰いを待ち、促すのがセオリー。明らかな喰い上げやカケ上がりでは幹糸間隔分、若しくは糸フケ分を順次巻き上げて「上へ、上へ」と誘い上げる。逆に反応が低く下鈎しか喰わない状況ならそのままで待つ。
1尾目のハリ掛りは鋭いアタリとして現れるが、魚が連なるに従い鈍重な感覚に変化し、重量感も増して行く。 一流し一投の場合、巻上げの合図まで目一杯待っても構わないが、追い喰いの状況次第で頃合を見て巻き上げる事も必要。既に「満艦飾」なら、待ちは外れのリスクでしかない。

ロッドの硬軟にもよるが、巻上はドラグを調整した中速程度。負荷に応じて調整し「一定のペースで」を心掛ける。リールのパワーに任せた高速巻きは口切れやハリス撚れ~切れを誘発するが、極端な低速も巻上時間が長くなる事でよりハリ穴を広げ易く「外れ」の要因に。緩急のある巻上も「弛み」が出易くなりNGだ。

最後は体内のガスが膨脹して海面に浮かぶウスメバル。ズラリ連なっても取り込みを慌てる必要はない。上から順に魚を外しながらハリを磁石板に並べて行く、一旦仕掛全体を船内に取り込み(この時魚が重なり合わない様注意)上、若しくは下鈎から順に外しながら仕掛を並べる、魚をハリから外さず船縁に並べてから、の何れでも構わない。慣れた方法で「次回投入に支障が生じない」を最優先に考える。

乗船者が少なく船縁に広いスペースを確保できる場合に限られるが、仕掛の項でも述べた「仕掛二組をロッド左右に並べ、一投毎に交互投入」も手返しアップに繋がる。
また一流し一投でなく再投入可能なら

  1. オモリのみを船外に吊した状態で仕掛を取り込む。
  2. 下バリから順に魚を外し、エサ付けした鈎を順次海中に下す。
  3. 一番上まで来たらリールをフリーにして即再投入


という方法もある。



オキメバル釣りに役立つ!?ディープマスターのワンポイント

毛鈎もエサもカラーが重要。メバルとの知恵比べが楽しい。
ある年の春先。青森県の釣具店主から「赤色紫外線加工したイカ短冊を使った釣人のみ、爆釣して100尾超え、他は20尾程度」の報が。潮や季節、時間帯により毛鈎のヒットカラーは変る。大まかなパターン表はあるものの、一筋縄ではいかないのが難しくも面白い所。

同年6月の山形県飛島沖に紫と紅の「紫外線加工イカ短冊」を持参し、低水温時に有効の「赤&ピンク」と、幅広い条件をカバーする「オール紫」仕掛の双方に2色のイカ短冊を交互に配して臨んだが、釣果は毛鈎カラーにかかわらず、紫染めのイカに集中。エサのカラーには反応し、バケカラーは全く無視された格好。本種の気難しい一面を垣間見た。ウスメバルがバケ、エサの何れか、又は双方の「何処かのカラー」に反応し、釣果に差が出ている事は明白で、それを特定出来れば釣果に直結する。決して数釣りを推奨する物ではないが「知恵比べ」を楽しむスタンスも一興だ。

ホッケを制す者、オキメバルを制す。
着底と同時に周囲共々派手なアタリが竿先を叩き「オキメバル釣りはこうでなくっちゃね」と笑顔を交わしたが… ちょっと暴れ過ぎじゃない!?
不安大半に一縷の望みで巻き始めるが、予感は大体悪い方が当たるもの。東北日本海側の釣りでは「お約束」とも言えるホッケ。我々関東人は鮮度の良い物を入手するのは難しく、適量ならウェルカムなのだが。

投入毎に満艦飾では海底の本命に仕掛が届かない。ここで漫然と釣り続けるのではなく、如何にこの魚を避けるか(勿論100%回避は不可能だが)を意識したい。
「ホッケは赤系に強く反応」の傾向を踏まえて

  1. 赤色水中灯を外す
  2. バケ、餌のカラーを変える
  3. ハリ数を減らして「釣る幅」を狭める

等の改善を図る。太平洋側のサバ同様、日本海ではホッケを制す者がオキメバルも制すのだ。

身エサに負けない!?フジッシャー毛鈎+ダッピーベイト
近年釣場にかかわらずオキメバルには「全鈎疑似餌」で臨む筆者。「身エサやホタルイカと遜色ない」ばかりでなく、疑似餌優勢や疑似餌しか喰わない場面(オキメバルに限らず)に幾度も遭遇している。

印象的だったのは18年3月の山形県飛島沖。低水温で極端に喰い渋り、鉄板餌ホタルイカの壷抜きやイカ短冊使用の同乗者全員が20cm級の単発に苦笑する中、フジッシャーメバル仕掛の全鈎に「マイクロイカタン」を配した筆者だけは35~37cmの大型を複数キャッチの幸運に恵まれた。

似たようなケースは岩手県マダラや静岡県のアカムツ、キンメでも経験しており「餌で喰わない時ほどワーム優勢」の印象が。「前半ワーム、後半身エサ」とフジッシャー毛鈎のカラー同様に「時間帯で効果が変わる」ケースも有り、この辺の「奥深さ」も深海釣りに更にディープな面白さを生み出す要素でもある。

「オール疑似」のメリットは
ハリ数8~15本の「オキメバル仕掛」の手返しをスムーズに行うのはベテラン釣師でも結構大変。特効エサとされるホタルイカ肝付ゲソは船上で壺抜きに追われ、サバなどの短冊エサもハリ掛り毎に交換が必要。投入順が早い釣座ともなれば、慌しい事この上ない。加えて肝や身肉の脂や強烈な臭いが手指や衣服、船縁を著しく「汚す」のも大きなデメリット。もっとスマートでクリーンな、ゲーム性の高い「次世代深海釣り」を目指し、辿り着いたのが「オール擬似」。
手返し良く、汚れず、臭わず、加えてカラーやサイズ、形状のセレクトに試行錯誤して手にした値千金の釣果が、ともすれば「数」に走りがちなこの釣りから「もう一歩踏み込んだ楽しみ」を叶えてくれる。興味のある方は是非一度、お試しを。

バケとエサは各種持参
「オール疑似」以前のある日。当日のアタリバケは「鉄板」オール濃紫だったのに対し、付けエサの鉄板たるホタルイカ肝付ゲソは見事に「滑る」。この日最も釣果を上げたのはカツオのハラモ。身肉のセンターから2枚に削いで幅5mm、長さ5cmの短冊にカット。表皮側だけでなく腹側も使用したが、腹膜でエサ持ちよくメバルが喰っても複数回使用。大きな手返しアップに繋がった。
因みにこの日は終盤アミを吐き出す個体が増えるとヒットカラーが変わり、ピンクや茶系バケに好反応を示した。この様に1日の内でパターンが変わる事も珍しくない。日本海の釣りでは同ポイントで初日は身餌のみ、翌日はホタルイカオンリーの激変を体験した事も。故にバケやエサは実績のみに囚われず、常に各種持参がお勧めだ。



オキメバル料理

同一魚種なのに産地や市場によって価格や評価が天と地ほども違う…はよくある話。味は各自の好みもあるので断定は難しいが、少なくとも現在は脂の乗り=市場価格は動かぬ事実だろう。
本種の関東での評価はイマイチ微妙?だが、重要産業種でもある「北のウスメバル」は正に別物。フジッシャー毛鈎の「藤井商会」と知り合った当時、茨城県平潟沖の個体と銚子以南の個体が脂の乗りに大きな差がある事は周知だったが、日本海個体は未体験。
「他所とはモノが違う」と熱く語る藤井氏に釣りと食への探究心が揺さぶられ、早々に釣行を決めたが、銚子以南の個体しか知らぬ仲間達からは「オキメバル『なんか』釣りに秋田まで飛行機とは、何て物好き。」と冷ややかな反応。
果たして。飛島沖で釣り上げた、額の上がグッと盛り上がる幅広肉厚個体は船上で腹腔内の脂肪塊を噴き出す極上品。後日、「飛島沖脂噴きメバル」と勝手にブランド命名(未公認)してしまう。 帰宅後仲間に各種調理で振る舞うと一線を画す脂の乗りに「これはメバルじゃない」と驚愕。翌年の釣行に同行する豹変ぶりに苦笑した次第。
因みに庄内市場では本種がマゾイ(キツネメバル)に次ぐ高値で、次がマアジ、その下にヒラメとマダイが続くのだとか。「北のウスメバル」はかなりの高級魚だ。
かつては「黒メバルより大味で旨味が薄い」なる評価が目立ったが、近年磯の香りの強い「黒」よりも「脂が乗り、癖のない身肉」の本種を推す物が増えた。
「鉄板」の煮付けは言うに及ばず、皮付きの柵を炙りポン酢や肝醤油で食す「焼き霜造り」も絶品。拙宅で人気はブツ切りの味噌汁。中華風蒸し物の「清蒸鮮魚」(チンジョンシェンユイ)もお薦めだ。口から脂を吹く様な個体が手に入った際は、是非試して欲しい。

煮付け

材料:丸魚若しくは半割(魚や鍋のサイズ、供する状態を踏まえ選択)/濃口醤油/日本酒(又は味醂)/砂糖/根生姜(又は粗挽黒胡椒)
調理

  1. ウスメバルは鱗・鰓・腸を除き、盛付時に上となる左側に浅く切れ込みを入れる。味の滲み込み易さだけでなく、皮が破れて見栄えが悪くなる事を防ぐ配慮。 大型の場合は胴中で半割りするのも可。肝は魚と一緒に煮るので廃棄せず残しておく。
  2. 水3:醤油1:酒(又は味醂)1:砂糖1/4を合せて良く混ぜ、生姜の薄切りを加えて強火で煮立てる。生姜を粗挽き黒胡椒少々に置き換える(筆者宅ではこちら)方法も。
    味醂を使う場合は砂糖の量を減らすが、各調味料の割合はあくまで目安。サッパリ系の魚では薄く、脂の強い魚は濃い目(水を減らして酒や味醂に置き換える)が基本だが、最終的には各自の好みで調整する。煮汁は多目の方が焦げ付きなどの失敗が少ない。
  3. 汁が煮立ったら灰汁を掬い、魚と肝を入れて煮る。
  4. アルミホイルで落し蓋をする。煮汁が上側まで回り、かつ吹き零れない様に火力を調整。灰汁を除きながら10分程煮る。調理時間は魚のサイズや形状により調整する。
  5. 崩さないように皿に盛付け、生姜が薬味の際は針生姜を飾って供する。

焼き霜造り
材料:皮付きの半身、若しくは柵
調理

  1. テフロン加工のフライパンを熱して表皮を押し付け、焼き目を付ける。
  2. 表皮が縮んで反り返ったら裏返し、身側が白くなる程度に軽く炙る。
  3. このまま冷却せずに引く「焼き切り」、湯引き同様に冷却後の選択は各自の好みで。
  4. ツマを敷いた皿に盛り付け、穂紫蘇、パセリ、柑橘類などを彩りよく添える。
  5. ※サッパリと食すなら小口切り万能葱と紅葉おろしを薬味に加えたポン酢、濃厚に味わうなら醤油にメバルの肝(刻む、若しくは擦り潰す)を加えた「肝醤油」がお勧め。

ブツ切りの味噌汁
材料:
ブツ切りの身/昆布出汁(粉末昆布)/味噌/浅葱(又は万能葱)
調理

  1. ブツ切りの身を昆布出汁を加えた水で、灰汁を除きながら煮る。
  2. 身が煮上がったら好みの量の味噌を溶き入れ、椀に盛る。
  3. 浅葱、若しくは万能葱をあしらって供す。

清蒸鮮魚(チンジョンシェンユイ)
材料:丸魚/長葱/香菜(パクチー)/根生姜/サラダ油(胡麻油でも可)/塩/胡椒
掛けダレ用:醤油/オイスターソース/砂糖
調理

  1. 鱗と鰓腸を除いた丸ごと一尾の盛り付け時下面に隠し包丁を入れて熱の周りを良くする。
  2. 塩、胡椒を振ってやや深めの皿に盛った丸魚を長ネギ、生姜と共に蒸器で8~十数分(魚のサイズで加減)程蒸す。ラップを二重に掛けてレンジ調理(600Wで7~8分目安)でもOK。
  3. 水100ccに対し醤油30cc、オイスターソース10cc、砂糖2.5gの割合で併せて沸騰させ、掛けダレを作る。
  4. 蒸し上がったら皿に溜まった汁と長葱、生姜を除き(崩さない様に別皿に移しても可)白髪ネギをタップリ盛る。
  5. サラダ油(又は胡麻油)大匙1程度を煙が出る程熱し、ネギの上から魚に回し掛ける。
  6. タレを掛け、香菜を添えて供す。

※画像はユメカサゴの調理


メバルの種類

ウスメバル
スズキ目メバル科 Sebastes thompsoni
国内の分布:北海道~相模湾の太平洋岸、北海道~対馬の日本海沿岸
大型は40cm、1kgを超す「オキメバル」のメイン種。体側に輪郭の不明瞭な5本の茶褐色横帯を有し、第5条は尾柄にある。新潟~東北の日本海で大量に漁獲され、市場価格も高い重要産業種。ハチメ、テリの俗称も。
釣りは銚子以北の太平洋、青森~新潟県沖の日本海が有名だが、関西でも専門に狙う場所(丹後半島沖の浦島グリ)がある。また神奈川県三浦や静岡県伊豆半島でも本種を釣る事は可能だが、北の海域に比べると魚影は薄く中深場五目の1ターゲットとしての色合いが強い。
釣期は東北太平洋岸ではマダラが終盤となる年末頃から始まり、仔魚産出の(メバル類は卵胎生)後期から産出後の4~5月上旬を最盛期に、5月末~6月上旬まで。日本海は海況もあり3月下旬スタート、梅雨前後と秋口、二度の山場があり、海が荒れ出船困難となる10月に閉幕の流れ。こちらも産後は荒喰いし桁外れの釣果をマークする事も。ハリ数10~15本の胴突仕掛けにズラリ連なる様は正に壮観。

トゴットメバル
スズキ目メバル科 Sebastes joyneri
国内の分布:函館、青森県~高知県柏島の太平洋沿岸、愛媛県伊予
ウスメバルより暖海性で、南寄りに分布する。橙の体側に鮮明な輪郭の6条横帯を有し、第6条は尾柄にある。最大25cm程度。
「何だ、沖メバルか」橙色の小魚を海に放つ釣人。「ハリスが撚れちゃうんだよなぁ。」などとボヤく内にカモメが飛んで来て、海面に漂う魚を「ご馳走様」…伊豆方面のコマセ釣りではよく見かける風景だ。ウスメバルに比べかなり冷たい仕打ちを受けている本種だが、東京湾口では専門の釣りが盛んだった時期も。水深30m程の浅場から、150mダチまでの岩礁域をメインに棲息し最大でも25cm程、浅所では十数cmがメイン。ウスメバルと比べて見劣りが否めないが関東以西の太平洋では数が圧倒的に多く、代表的な「オキメバル」と言える。
40年以上前、静岡県西伊豆の船宿兼民宿のパンフレット表紙は本種の満艦飾。「観光のお客さんが短時間遊ぶにはこの魚が一番簡単で、お土産も堅いんだ。君には物足りないだろうけどね。」と笑ったのを覚えている。取込み後は殆ど暴れずアジやイサキより扱い易い事も「ビギナー向き」な理由の一つでした。
近年メインに据えた釣りは「ほぼ絶滅」状態ながら、やや深みのコマセ釣りでは「定番」とも言える本種。やや硬質で淡白な身肉は骨離れが良く煮付けやムニエル、エスカベッシュ(洋風南蛮漬け)など、「充分オカズになる」事を知って欲しい。

ウケグチメバル

スズキ目メバル科 Sebastes scythropus
分布:青森県~土佐湾の太平洋沿岸
ウスメバルよりもやや深所(300mライン)まで棲息する。特徴的な主鰓蓋骨の横帯状大型楕円形黒斑から関東では俗称「パンダメバル」。大型で30cm程度。黒潮海域個体は食の評価が低いが、親潮海域個体は「脂の乗り」が明らかに異なり、総菜魚として上等。

カタボシアカメバル
スズキ目メバル科 Sebastes kiyomatsui
分布:相模湾~和歌山県那智勝浦沖の太平洋沿岸
かつて「ウケグチメバルの深所型」とされたが、三浦周辺の釣船では「アコウメバル」と呼び、ウケグチメバルと区別していた。主鰓蓋骨の黒斑は小さな円形。ウケグチメバルより深所に棲み、アコウダイ釣りなどで混獲される。サイズは25~30cm前後。「沖メバル」としてはトゴットメバル同様に南寄り分布の種。 他の「沖メバル」と比べ数がまとまらない、生息域の関係で脂が乗らないなどの理由で釣魚としての評価は低い。

関東では「パンダ」の俗称で呼ばれる事が多い「ウケグチメバル」。大きな黒斑の形と位置が「ジャイアントパンダを彷彿させる」が語源なのは想像に難くないが、パンダが黒いのは頬ではなく目の周り。もっとも標準和名も「受け口じゃないメバルって?」で、どちらも「突っ込んでくれ」と言わんばかりの「脇が甘い」ネーミングだ。

そんな本種、筆者が20代で入手した文献には「深所型」「浅所型」の2型が有ると記述され、それぞれの写真が掲載。当時既に「双方の型」と幾度と無く対面していたが、この2型は体色のみならず「斑紋」が全く異なり、素人目にも到底同じ魚とは思えず「本当に同種?」の疑問を拭う事は出来なかった。

それから20余年が経過した2004年2月25日、京都大学の中坊教授らの論文により「これまでウケグチメバル深所型とされた物は別種で新称はカタボシアカメバル」と報告された際に驚きの感情はなかった。それまで「浅所型」「深所型」とされてきた2型は斑紋(最も簡単な識別ポイント)が明らかに異なる事、 自身が水深250m前後の同ポイントで同日に双方を釣り上げた事が幾度もあったからだ。

「カタボシアカメバル」との初遭遇は70年代中頃の東京湾口アコウダイ乗合。 当時から三浦地区の船長達はアコウダイ釣場に多く斑紋もアコウダイに似ている本種を「アコウメバル」、やや浅所に多いウケグチメバルは「パンダメバル」と呼んで区別した。

両種の簡単な識別法は主鰓蓋骨の黒斑。ウケグチメバルでは横帯状(魚の斑紋は頭を上、尾を下に置いた状態で縦・横と表現。故にイシダイの縞は「横」、カツオは「縦」となる)の大きな楕円形なのに対し、カタボシアカメバルは「小さな円形」となる。

「生息水深による2型」は消滅したウケグチメバルだが、水深により若干の体色変化が見られ、鬼カサゴ釣場など比較的浅所(150~200m)で採集される個体は体色の橙の黄色みが強く背の褐色横帯はやや緑色掛る傾向、250mラインでは体色の赤味が強く横帯は赤や焦げ茶色に近くなる。

ヤナギメバル
スズキ目メバル科 Sebastes itinus
国内の分布:北海道日本海・太平洋沿岸、岩手県~駿河湾の太平洋沿岸、新潟県、兵庫県香住
背面は暗緑色、体は黄色を帯びた暗赤色。尾鰭後縁は暗色。頭部背面は鼻棘のみ有す。下顎は突出し、体高は低い。下顎と主上顎骨は全て鱗で覆われる。名前は「メバル」だが、大型は3kg以上とサイズ的には「メヌケ類」に近い。
本種は側線有孔鱗数が60近く(53~57)有る点で、他の日本産メバル属魚類と容易に識別されます。(海外のメバル属には60近い種もあり)
水深200~350mに棲息し、かつては銚子~北関東海域でも大量に漁獲、中でも銚子沖では「メヌケ釣りの保険的存在」として知られた。

俗称「アンポン」の語源は、メヌケが喰わない時でも簡単に鈎数繋がり、誰にでも釣られてしまう「アンポンタンな魚」なる、失礼極まりない内容。そんなウブな魚ゆえ乱獲され激減し、これらの海域では「幻の珍魚」に。本種はライトタックル化を筆頭とした「次世代深海釣り」のスタンスを考える上での「キーマン」ならぬ「キーフィッシュ」的な存在と言えよう。
ウスメバルに似た肉質&味覚だが、大型の調理は「アコウダイ」に準ずる。現在は中々手に入らない魚ゆえ、「余す事無く堪能して」欲しい。

ヤナギノマイ
スズキ目メバル科 Sebastes steindachneri
国内の分布:北海道オホーツク海沿岸、北海道~新潟県の日本海沿岸、北海道~岩手県の太平洋沿岸、 神奈川県三崎、石川県能登半島、鳥取県
体色は淡い橙色だが黄色、褐色の強い個体も。側線の上に斑紋がなく「明瞭な淡色線」となる。頭部背面は鼻棘のみ有す。涙骨の棘は目立たない。下顎には鱗がない。側線有孔鱗数は30前後。サイズは大型でも35cm程度。
水深100~150mに多く棲息。標準和名は漁師が「ヤナギ」と呼ぶヤギ類(サンゴの仲間)が茂る場所に群れる事から「ヤナギの前」。これが訛って「ヤナギノマイ」。日本海や東北太平洋の「オキメバル釣り」ではポピュラーな「混じり物」で、数がまとまる北海道では専門の遊漁も存在する。

東北地区の「大本命」ウスメバルに比べると肉質はやや硬く、脂の乗りも劣る傾向。かつて訪れた山形県の庄内市場ではウスメバルがタイやヒラメよりも高値を付けるのに対し、本種は「雑魚」として別のスチロール箱へ詰め込まれて二束三文(漁獲数の関係もあろうが)。
とは言え「良く締まった白身」は洋食や中華食材で上等。「一手間掛けて」味わって欲しい。

ハツメ
スズキ目メバル科 Sebastes owstoni
国内の分布:北海道オホーツク海沿岸、北海道~山口県の日本海沿岸、北海道~福島県の太平洋沿岸、房総半島沖、相模湾(稀)
体高は低く体は細長い。体色は淡黄赤色。背面に4条のやや暗色で不明瞭な横帯がある。背鰭棘数14本。涙骨の棘が顕著ではなく、頭頂棘を有す。
日本海釣行十数年目で初対面と個人的には疎遠ながら、新潟県の遊漁船では「全然普通に釣れる」と言われ、青森県ではスーパー店頭で目にする日本海のメジャーな総菜魚。細長い体形と「背鰭棘14本」で他種との識別は一目瞭然。体色は雄が黄色を帯びるのに対し、雌は赤色。ほぼ無縁のアカイサキ(ハタ科)との類似は面白い所。

地域により「ハチメ」「アカスイ」「ウグイス」「キンギョ」など様々な俗称を持ち、中には「アカハタ」「ヤナギノマイ」と他種標準和名と被り混乱を招く物も。
他のメバル類に比べ水分が多い柔らかな身肉は煮崩れし易く、焼き物や干物がベターとされる。また、他のメバル種よりも「足が速い」ため、産地周辺での消費が中心となり、東京近郊に出回る事は殆どない。
とは言え「良く締まった白身」は洋食や中華食材で上等。「一手間掛けて」味わって欲しい。

アカガヤ
スズキ目メバル科 Sebastes minor
国内の分布:北海道オホーツク海沿岸、北海道~山口県の日本海沿岸、北海道~福島県の太平洋沿岸、房総半島沖、相模湾(稀)
体高は低く体は細長い。体色は淡黄赤色。背面に4条のやや暗色で不明瞭な横帯がある。背鰭棘数14本。涙骨の棘が顕著ではなく、頭頂棘を有す。
日本海釣行十数年目で初対面と個人的には疎遠ながら、新潟県の遊漁船では「全然普通に釣れる」と言われ、青森県ではスーパー店頭で目にする日本海のメジャーな総菜魚。細長い体形と「背鰭棘14本」で他種との識別は一目瞭然。体色は雄が黄色を帯びるのに対し、雌は赤色。ほぼ無縁のアカイサキ(ハタ科)との類似は面白い所。
地域により「ハチメ」「アカスイ」「ウグイス」「キンギョ」など様々な俗称を持ち、中には「アカハタ」「ヤナギノマイ」と他種標準和名と被り混乱を招く物も。
他のメバル類に比べ水分が多い柔らかな身肉は煮崩れし易く、焼き物や干物がベターとされる。また、他のメバル種よりも「足が速い」ため、産地周辺での消費が中心となり、東京近郊に出回る事は殆どない。

エゾメバル
スズキ目メバル科 Sebastes taczanowskii
国内の分布:北海道オホーツク海沿岸、北海道~石川県の日本海沿岸、北海道~宮城県の太平洋沿岸
北海道でガヤ。体色は茶色で全体に淡い黄色の斑紋。尾鰭の後縁は白い。側線有孔鱗数は40~49。頭頂棘はない。涙骨下縁棘が無い。主上顎骨には狭い鱗域があるが下顎は無鱗。
本種は褐色で厳密には「沖メバル」の括りから外れるが、「ウスメバルと同所で釣れる事がある」を踏まえて紹介。
東北の沖メバル釣りでやや浅め(水深100m前後)の根を流すと、25cm級の茶色いメバルがズラズラッと繋がる事があるが、体表全体に淡い黄色の斑紋があり尾鰭の後縁は白い。いわゆる「黒メバル」こと標準和名アカ、クロ、シロの3種のメバル何れにも、これらの特徴は当てはまらない。このメバルは標準和名「エゾメバル」でその名の通り北海道に多い。
「ガヤ」の俗称は「ガヤガヤと数がいるから」と何とも直球だが、その位の普通種と言う事だろう。浅海に多く河口周辺でも見られる一方で、中深海の「オキメバルフィールド」にも棲息。岩手では本種を「黒メバル」とも呼ぶ。関東では知名度の低さから多量に入荷するも値は安く、苦肉の策か「メバル」の名で本種が店頭に並ぶのを目にする事が。「黒メバル」に比べて味が薄いとされるが大型は中々の美味。但し鮮度が落ち易いのが難点だ。



第1話 キンメダイ

キンメダイという魚
釣師のみならず世間一般にも広く知られる高級魚にして、深海釣りの象徴的存在。十数本以上の多点仕掛にズラリ連なる魚を仕掛ごと持ち上げる「お約束ショット」や大型クーラー満タンの画にはやや時代錯誤の感も否めないが、その部分も含めて入門者からベテランまで、幅広い層に人気を誇る。
眼球内部に反射板を有し、光を受けると眼が金色に輝く事が和名の由来。釣り上げた際のピンク掛った背の朱色、紫が射す腹部の銀色の見事なコントラストは釣師のみが目にできる「生時限定」のカラーである。 「キンメダイ釣り」は標準和名キンメダイをメインに同科のフウセンキンメ、ナンヨウキンメもターゲットに含まれる。



キンメダイの釣場
キンメダイは釣師のみならず、世間一般でも広く知られる美味な高級魚。
重要産業種であるがゆえに年々遊漁に対する規制は年々厳しくなっており、釣船に解放されている釣場は分布海域のごく一部に過ぎない。

ライトタックルの代表的な釣場
東京湾口 洲ノ崎沖~沖ノ瀬
神奈川県城ヶ島沖
神奈川県真鶴沖

ヘビータックルの代表的な釣場
東京都大島沖
東京都新島沖
和歌山県白浜沖
高知県室戸沖



タックルと仕掛

①ライトタックル(LTキンメ)
中型電動リールで鈎数5~10本、300号以下の錘を使用する比較的ライトなスタイル。
ロッド…全長2~2.3m。チューブラー素材のLT深海専用ロッド。

アルファタックル適合モデル
ディープインパクトLight190・220
ディープインパクトTERUスタイルRT0
スーパーディープクルーザー0
リール…水深と縄切り禍を考慮し、水深の2倍≒PE6号700m以上のキャパシティが理想。
ミヤエポックAC-3JPC、S社6000以上、D社750以上が該当。
仕掛…ハリ数5~8本のベーシックな胴突仕掛け。ハリは細地ムツ15~16号か、特殊形状でムツやクロシビカマス(スミヤキ・ヨロリ)の鋭い歯によるチモト切れを防ぐ「ホタ鈎」16号がお勧め。
ハリス8~10号70cm~1m、幹糸12~16号1.5~1.8m。捨て糸は8号を1~1.5m程度。上端にはPEラインの縒れを解消すべくフジワラ「深海用リングS」等の小型ヨリトリ器具を配す。オモリは海底に残っても環境に負担を掛けない鉄製のフジワラ「ワンダーⅠ」を推奨。ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。

既成仕掛
アルファタックル
DEEPMASTER 深海仕掛 ライトキンメ10本枠付 (ホタ16号・ハリス10号・幹糸18号)
集魚ギミック…ルミカ「輝泡」などの赤色小型発光体が有効だが、サメやサバ、縄切り魚が極端に多い場合はフレックスに対応する。ハリスにはヤマシタ「マシュマロボールL」を配し、浮力とフォール時の抵抗を利用してアピール。深海バケと併用の際は双方のカラーをリンクさせる。また各鈎にニッコー化成「激臭匂い玉7Φ」を配すのがディープマスター流。
深海バケ…藤井商会「フジッシャー毛鈎ホタ16号」がお勧め。紫系が◎だが、定番の橙、緑や低水温時に強い赤やピンク、高水温時に効く水色など、各色用意しておけば万全。
エサ…船宿用意はイカやサバの短冊が主で、時にカタクチイワシも。短冊のサイズは幅1cm、長さ12~13cm程度で、自作の場合もこのサイズを参考に。鈎掛けは中心線上のなるべく端をチョン掛け。ニッコー化成「ロールイカタン」など擬似餌も同様。カタクチイワシは下顎から上顎のセンターに刺し通す。

②ヘビータックル
大型電動リールでハリ数10本以上(地域によるハリ数規制あり)、オモリ1.5~2kgを使用する本格的深海釣り。

ロッド…アコウダイ用よりもやや胴に乗るアクション、若しくは使用オモリに対し「やや負け気味」となるグラス素材の深海専用ロッドをセレクト。 巻上時の復原力を抑え、口切れに配慮するのがセオリー。 口切れを抑えるクッション効果と、竿が絞られる見た目の面白さは長い程優れるが、捨てオモリ式の新島沖では上潮が速いと取り込み時にラインが前方に流れ、ロッドが長いと「ラインを掴むのに一苦労」する場合が。これら条件を踏まえ、2m程度がベストレングスと考える。

アルファタックル適合モデル
ディープインパクト カイザーG
ディープオデッセイ モデルG
ディープインパクトTERUスタイルRTⅠ
ディープインパクトTERUスタイルSⅠ
スーパーディープクルーザーⅠ

リール…高強度PE10~12号を1,000m以上巻いた大型電動リール。ミヤエポックZ9~Z15サイズが基本。

仕掛…ハリ数は各地域の規制に従い、少ない分には問題なし。船や釣場によりハリスや幹糸の太さ、長さに若干の違いはあるが、ハリス12~14号0.8~1m、幹糸24~30号1.5~1.8m、細軸ムツバリ18~19号(若しくはホタ鈎16~18号)で殆どの釣場をカバー可能。
個人的には専ら「ホタ鈎」を使用。軸部分が長い特殊形状のネムリバリで、ハリスが魚の口元に当り難い。同ポイントで混じるクロムツやクロシビカマス(スミヤキ・ヨロリ)など歯の鋭い魚がハリ掛りしても、軸部分が口元にあたるのでチモトからのハリス切れはほぼ皆無。ハリ先のネムリが深く、幹糸に引っ掛ると通常ネムリバリほど簡単に外れないのが難点だが、裏を返せば「魚が外れ難い」長所。口周りが脆いキンメには極めて有効と言えよう。

掛枠に巻き込んだ物を投入回数分持参し、出船前に2~3組(もちろん投入回数分でも良い)に餌付けを済ませておく。(掛枠への巻き方は図を参照)
捨て糸は釣場や船宿により指示が異なるが、12号を3~9mと通常深海仕掛よりもかなり長め。14号を使用する場合は捨て糸を切り易い様、ダンゴ結びでコブを1箇所造っておく。これ以上太い号柄は捨て糸をカットする際、リールのギアやロッドに無用な負荷を与えるだけなので、使用しない。

上端にミヤエポックヨリトリWベアリング」「キャラマンリングⅡ型」などの大型ヨリトリ器具+ヤマシタ「ゴムヨリトリ」5mmφ1mを配す。因みに深海釣りでクッションゴム使用を推奨するのは「巻上時の口切れ抑制」を最重要ポイントに据えるこの釣りのみ。尚アコウダイとの2本立ての場合は「アコウダイを喰わせる底叩き」に配慮すべく転向の際に「ゴムヨリトリ」をナイロンライン40号1mに差し替えるのがポイント。オモリは船宿用意の鉄筋、若しくは船宿指定重量のフジワラ「ワンダーⅠ」を使用する。ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。

既成仕掛
アルファタックル
DEEPMASTER 深海仕掛 キンメ10本枠付 (ホタ16号・ハリス12号・幹糸24号)
DEEPMASTER 深海仕掛 キンメ15本枠付 (ホタ16号・ハリス12号・幹糸24号)
DEEPMASTER 深海仕掛 キンメさがり200本 (ホタ16号・ハリス12号・幹糸24号)

集魚ギミック…ルミカ「クアトロレッド」等の赤色発光体を仕掛け上部、若しくはセンター付近に配すと同ポイントで混じる大ムツやアコウダイを含め有効だが、潮の動きが鈍い際にはカラスザメを引き寄せる事も。状況に応じたフレックスな対応が必要だ。ライトキンメ同様ハリスにはヤマシタ「マシュマロボールL」を配し、浮力とフォール時の抵抗を利用してアピール。深海バケと併用の際は双方のカラーをリンクさせる。また各鈎にニッコー化成「激臭匂い玉7Φ」を配すのがディープマスター流。
深海バケ…ライトキンメ同様の藤井商会「フジッシャー毛鈎ホタ」が適合するが、一投使い切りスタイルの釣りでは一釣行最低でも100本近くを用意する必要があり、現実的とは言えないかも。
エサ…用意のある船ではイカ短冊かカツオ腹モが主体。エサ持ちが良く、複数回使えるサーモン皮を用意するケースも。短冊中心線上なるべく端をチョン掛けとする。各自持参の場合は上記の他にサバやソウダガツオ。
ニッコー化成「ロールイカタン」などの疑似餌も実績あり。常温保存で「汁」も無いので扱い易く汚れず、手指や衣服に臭いが残らないのも嬉しい。

出船前に船上で準備するのが面倒(早くキャビンで横になりたい)なら、幅1~1.5cm、長さ15cm程度(中小型では10cm)の短冊を用意し、事前に2~3組(もちろん全てでも良い)にエサ付けしておく。
2kg超の大型や大型クロムツが期待できるポイントでは下バリ数本に幅1.5~2cm、長さ2cm前後にカットしたサバ短冊やスルメイカ肝付ゲソ等、大振りのエサを配して余禄を狙うパターンもアリ。(大ムツに効果大のサンマエサは新島沖など使用禁止の地域があり、事前に要確認。)



実釣テクニック

ライトタックル

エサ付けを済ませた仕掛けは順序よく船縁に並べ、投入の合図を待つ。船縁磁石が無い船では磁石板やフックキーパーの持参がベター。船長の合図に従い、オモリを軽く前方に放り投げる。
この際に注意すべき点は
①仕掛けの絡みや自らの足による幹糸部の踏み付け等がない事を確認。

②オモリを投げる時、船縁から身を引き、仕掛けから離れる。(ハリが衣服や手に引っ掛かる可能性あり)

③仕掛け全てが海中に入ってからスプールをサミングしつつクラッチを切り、スプールフリーにする。(フリーで投入するとヨリ取り器具やチェーンの重量で道糸が先に出て手前マツリ、投入ショックでバックラッシュの可能性などがある。) の3点。

オモリが着底したら一旦海底を離れるまで巻き上げて(竿先が大きく曲がってから戻る)完全に糸フケを取り、再度着底させる。
ここからが本当のタチ取り。ウネリによる上下動でオモリが海底をトントン叩く状態を設定すべく、海況、釣座、ロッドアクションなどの条件を考慮して50cm~1m程度巻き上げる。
その後もマメに底を取り直し、底叩きを維持してアタリを待つのが基本だが、「着底後5m巻け」など船長から具体的な指示がある場合はそれに従う。

エサの動きにより大きな変化を持たせるなら、時に2~3m巻いて落とすイレギュラーなアクションを織り交ぜれば良い。クラッチのON・OFFと瞬動巻上を駆使すれば、敢えて「手持ち」で誘う必要はない。 カケアガリを流れると順次水深が浅くなり、オモリが海底に着いてラインに弛み(糸フケ)が出る。岩礁底で放置すれ根掛りするので、素早く糸フケを除く。逆に下って深くなれば仕掛けは宙ぶらりん。とんでもない上層を釣らぬよう、海底を叩く竿先のサインが消えたらクラッチを切ってオモリを着底させ、底ダチを取り直す。 アタリは明確かつシャープ。基本はそのまま、喰い上げる様ならハリ間隔分ずつ、海底が「かけ上がる」なら糸フケ分ずつ順次巻き上げながら追い喰いさせる。

巻上自由なら頃合いを見計らい、「船長指示で」なら合図を待って巻上開始。
「口元が脆くバレ易い」「水圧変化に強く海面下まで抵抗、外れると泳ぎ去る」の2点を念頭に巻上はドラグを効かせた「低速気味」設定が基本。 強引はもちろんだが、遅過ぎや緩急付けたリーリングも厳禁。一定スピードとテンションで巻く事を念頭に置き、ウネリで船が上がった際や魚が引き込んだ際に巻上げが滞る程度のドラグ設定をする。この時スプールが逆転する様だと、かえって「外れ」の原因となる。ウネリが大きい際にはキーパー仰角を下げ、ロッドを水平に近付けて復原力を抑えるのも口切れを防ぐテクニックだ。

取込みは不用意に抜き上げず、玉網のアシストを。1~2尾のハリ掛りなら取り込みながら仕掛を船縁に並べる事も出来るが、連なった場合は一旦仕掛け全体を重ならない様、船縁と並行に取込み、ハリを外しながら並べて行くのがスムーズだ。
ハリスや幹糸に傷が無いか、ハリ先が甘くなっていないか、素早くチェック。エサ付けを済ませて「振り出しに戻る。」後は最初から繰り返せば良い。

ヘビータックル

投入…基本的に掛枠での投入。船長の合図に従い、舳先、又は艫から順に仕掛を下ろす。
合図と同時に投入できるよう、全ての準備を整えておく。船長は潮の流れと人数を計算して投入ポイントを設定するが、ここには「モタ付き、失敗によるロスタイム」は基本的に含まれていないから、合図で投入できない場合は「一回休み」を厳守する。

投入の遅れは自身だけでなく、「後から投入する同乗者の仕掛けが着底時にポイントから外れる可能性がある」事を忘れずに臨んで欲しい。

投入時は片手で握った掛枠を海面に対し45度程度に構え、合図と共にオモリを「落とす」(放り投げると捨て糸が切れる場合有り)。これで仕掛けはパラパラと順序良く海中に投入される。
この時、リールはフリーにせず、仕掛けが全て海中に入ってからスプールをサミングしつつフリーにするのがポイント。予めフリーにすると投入のショックでバックラッシュする、ヨリ取りの重さで道糸が先に海中に入り、手前マツリするなどのトラブルとなるからだ。投入時のトラブル軽減にヨリトリ器具ホールド用クリップを活用するのも一手だ。

アタリ~追い喰い… 船長の計算通りに着底すれば直後、時にそれ以前(この場合は「喰い上げ」となる)にアタリが出るが、そうは上手くは行かないのが現実。アタリが無ければ速やかに糸フケを除き、オモリが海底を船の上下でトン、トンと叩く状態をキープしてアタリを待つ。竿や海況による底の切り具合や底を取り直す頻度など、一尾目を喰わせる誘いのテクニックが各自の腕の見せ所、釣果に差が付くポイントだ。但し東京都新島沖などでは潮が速い際「ラインを張らずにどんどん送る」の指示が出る事も。
アタリをキャッチしたらすぐに船長に合図、も忘れてはならないポイント。どの辺りで喰って来たか、どんな反応で喰ったのか、次回投入の判断材料となるからだ。
アタリ後の操作はポイントや潮況、操船スタイルにより異なる。

大別すると
パターン①
「そのままの状態を維持」…斜面を登らず、横方向に流すスタイル。オモリを宙に浮かせず、さりとてラインは弛めずにキープ。糸フケ分は巻き取り、深くなったらその分だけ落とし込んで追い喰いさせる。

パターン②
「アタリ毎に幹糸間隔、又は糸フケを順次巻き上げ、常にオモリは海底から1m程浮かせておくイメージ」…LTキンメと共通するカケ上がりに正面からぶつけるスタイル。

パターン③
「オモリを着底させ、テンションをキープしつつ船の移動分道糸を送り続ける」…いわゆる「新島沖釣法」。アタリが出たらクラッチを切ってラインをリリース。オモリを着底(根掛り)させ、「海底に対して30~45°の角度でラインを送り込み、より多くのハリを反応の中に入れる」のが新島キンメ追い食いの基本テクニック。竿先のテンションを維持した状態で船長の巻上、若しくは糸送りストップの合図が出るまでラインを送り続けるが、テンションが強過ぎると仕掛けが移動して反応から外れてしまうし、オモリが根掛りしていれば捨て糸が切れて仕掛けが浮き上がり、早々に回収となる可能性が。(捨て糸が切れて仕掛がフケた所で喰うケースもあり、潮況次第では捨て糸が切れても巻上合図までそのまま待て、の指示が出る事もあるが) さりとて闇雲にラインを送り込んで仕掛が海底を這ってしまうとアナゴやソコダラなどが喰い付き本命の追釣が望めない、複数のハリが根掛りし仕掛が回収できない等、トラブルの要因にも。
竿先が一定の角度で曲がりつつ、ラインが張った状態を維持して送るのが基本だが、潮の遅速やポイントにより「弛め気味」「伸ばすな」など、投入毎に船長から細かな指示が出るケースもあり、アナウンスを聞き洩らさぬ様留意したい。

例えば「壁」と呼ばれる断崖絶壁ポイントでラインをリリースすれば、仕掛が斜面に貼り付き、100%回収不能。底トントンでアタリをキャッチしたら決してラインを送らずに船長の合図を待ち、根掛りさせたオモリだけを捨てて巻き上げる。6m以上の捨て糸はこのポイントでハリの根掛りを防ぐための設定だ。
何れにせよ、アタリ後の糸送りで釣果が決まる、としても過言ではない。糸送りは「新島釣法」の要と心得て、船長のアナウンスを聞き逃さず、確実に実践する事が肝心。指示と異なる仕掛操作は自身の釣果のみなず、オマツリ誘発など同乗者に多大な迷惑が掛るため、決して行ってはならない。 

巻上…投入同様、船長の指示に従って行う。基本的にオモリが付いるパターン①&②は最初からドラグを充分調整した低速気味で、緩急を付けず一定のペースで巻く。但しオモリが切れている場合はある程度スピードアップし、オモリが無いための「糸フケ」や魚が自由に泳ぎ回る事で発生する同乗者とのオマツリを防ぐ配慮を。

パターン③は「先に巻き始めた仕掛けを追い越さない巻上速度設定」が回収時のオマツリを軽減するが、捨て糸が切れた場合はラインが「立つ」まではある程度の速度で巻上げ、以降スローダウンする。巻上開始時は実水深より余分にラインが出ているのを踏まえ「巻上時間を短縮して効率を上げる」と、オモリが無い事によるオマツリの軽減を意識した物。この釣法でもオモリが残っている場合は最初からドラグを調整した低速気味で緩急付けず一定のペースで巻くが、オモリが無くても極端な早潮で終始前方にラインが走っている(若しくは同等の操船)ケースでは「オモリ有り」同様に終始低速気味で行う。また、巻上中に次回投入する仕掛を準備しておく事も忘れずに。

捨て糸の切り方… 意図的に根掛りさせる③新島釣法の場合、巻上は捨て糸を切る事からスタートする。
先ず糸フケを完全に巻き取り、ロッドが絞られた状態で一旦巻上をストップ。ドラグを目一杯まで締め込み、船の移動で捨て糸が切れるのを待つ。仕掛けを這わせ過ぎてハリが根掛りし、容易に処理できない場合はタックルを傷める前に速やかにラインをリリース。船のボーズなどに巻き付けて切る。リールの巻上力に任せて強引に引き千切る行為はギアやロッドを傷める、キーパー脱落等のリスクを有し、厳禁だ。

取り込み…多数がハリ掛りしたら基本的に仕掛の再使用は考えない「一投使い切り」。効率優先のスタンスであり、この部分はライトタックルよりも簡単と言える。
玉網のアシストを受けつつ、仕掛をどんどん船内に引き上げたら、速やかに新しい仕掛をセットして次回投入に備える。
魚の処理は投入準備が整ってから、若しくは投入後に行う。血抜きは各自判断で良いが、「海水氷」のクーラーに収めて「全体を万遍なく冷却する」は必須。但し、必ずビニール袋で魚体を包んでから収納し、氷(クラッシュタイプは特に)が直接魚体に触れない様に配慮する。
魚を包まずに海水氷のクーラーに収めると、移動時などの「揺れ」で氷が体表を擦って鱗を剥ぎ、以降も長時間の摩擦で身肉が水を喰うなど、劣化してしまう。極上の味覚を「台無し」にしないために、魚の多少にかかわらず、必ず行いたい一手間だ。



キンメ釣りに役立つ!?ディープマスターのワンポイント

①新島キンメには緑!? この日「効いた」エサとギミックは
深海釣りで常に意識するのがフジッシャー深海バケを筆頭としたギミックの「カラー」。仕掛の消耗が激しい新島キンメでは基本フジッシャーは使用しないが、ロールイカタンなどワームやチモトのマシュマロボールなど、ギミックのカラーには常に気を配る。因みにある日の釣果は殆どがビッグサバ短冊へのアプローチながら、マシュマロボールのカラーはイエロー(黄緑)、ヒットしたロールイカタンのカラーは青緑。

またこの日20枚を超えた舳先の二人が使用したのは近年新島キンメのトレンドとなりつつある「青緑」に着色した身餌で、カラーに「整合性」が取れていた。これらを見ると「新島キンメは緑が◎」となるのだが、「ヒットカラー」は状況次第で変わるのが常。ギミックも染めエサも「オンリー」での持参はリスクも大きいと認識したい。

②ロングハリス&幹糸設定「ジャイアントキンメ専用仕掛け」
ある年の初夏、船中が目を見張る結果を残したのが自作のロングハリス&幹糸の10本バリ仕掛。ホタ18号にナイロンハリス14~16号を1.5m、幹糸は24~30号を3m。一般的キンメ仕掛の倍の長さを取る代わりにハリ数は10本に抑える。通常仕掛と同じ幅を探りつつ、ジャイアントキンメや大ムツに有効な「サルカンや縦糸からより離れた位置で、よりナチュラルにベイトを漂わせる」を意識した「数より型」を狙うスタイルだ。ハリスにヤマシタ「マシュマロボール」を配すのは発光による集魚力ではなく浮力や潮受けアップでベイトの動きを期待する設定故、無発光タイプ「マシュマロボール アカムツSP」をセレクトする。

③「大キンメ&クロムツにお勧め!肝付イカゲソの半割エサ」

ベニアコウ用イカ短冊製作時の「廃品活用」だが、真鶴沖大ムツ狙いでは以前より船長お勧めの特エサだ。
胴を外した肝付ゲソは切れ味の良い包丁で眉間から左右対称に割り、切り口を上にしてトレーに並べ、グルタミン酸をタップリ振って一晩冷蔵。絞れた水分を除いて使用する。鮮度の良い物を用意できればベストだろうが、当日持参したのは冷凍イカを半解凍状態で加工し、再度冷凍保存した物。「生」より肝の持ちは良くないが、期待に違わぬ(以上!?)の効果を発揮してくれた。

④やっぱり「効く!」フジッシャー毛鈎とマシュマロボール
「捌きが難しくなり、手返しが落ちる」「現場でのメンテナンスが手間」「価格面が…」などの難点?から、特に入門者がしり込みしがちな「フジッシャー毛鈎+マシュマロボール」。高活性時には大きな差が出ない場合もあるが、某所のLTキンメでは朝一の好機に4名が仕掛けを下ろし、使用した3人はパーフェクト、未使用の一人だけがノーヒットと極端な差が出たケースも。因みにマシュマロボールのカラーは毛鈎とリンクさせるのが基本だ。

⑤フジッシャー毛鈎にマシュマロボールを簡単セット。富士工業「ラインスレッダーLTM-M」
近年深海釣りの必須ギミックとしても過言ではないヤマシタの「マシュマロボール」。空バリの場合は針先から通し刺して簡単にハリスにセットできるが、筆者愛用にして効果抜群の「フジッシャー毛鈎」は魚皮やフラッシャーモールがセットされており、針先からの装着は不可能だ。
そんなフジッシャー毛鈎のハリスにマシュマロボールを簡単にセットできるのが富士工業の「ラインスレッダーLTM-M」。本来は小型ガイドに道糸をスムーズに通すための道具だが、画像の要領でマシュマロボールに刺し通し、ハリスの端を挟んで引き抜けばセット完了。「ハリスをサルカンに結んでいない状態」の制約はあるものの、フジッシャー毛鈎とマシュマロボールの相乗効果がよりイージー、かつリアルとなるのは間違いない。
使い方はこちら

⑥サメ対策とイルカ対策

巻上時中~上層でのサメ禍(奪い喰い)対策はサメやエイの電気感知器官であるロレンチニ瓶(ロレンチーニ器官)を電流で刺激し、回避行動を促すサメ禍軽減装置「海園」の使用がお勧め。

  1. LTキンメ…「海園Ver.2イカ直結用」を最初か水中灯宜しくヨリトリ器具の下に接続して使用すれば、 宙層の奪い喰いだけでなく、海底でのツノザメアプローチ軽減効果が期待できる。
  2. ヘビータックル…捨て糸をカットし巻上開始の時点で「海園Ver.2」のカラビナを道糸にセット(引っ掛ける)して海中に投下する。LTキンメと同じく「海園Ver.2イカ直結用」をヨリトリ器具直下に配してもOKだが、特に「根切り前提」の新島沖では根切時の仕掛ロストやライン切れリスクを考慮した「巻上時セット」が得策だろう。

イルカの奪い喰いを軽減するギミックは現状販売されていないが、ヒントになる話を二つ紹介する。

  1. 北茨城干潟沖のキチジ(キンキ)釣りの際、巻上時にイルカの群れが襲来。折角の釣果をみすみす奪われたくないので船内を見回せば、根切用の金属パイプが目に入る。音波に敏感なイルカゆえ、もしかしたらとパイプを海中に差し込んで錘でカンカンカン!と叩くと、イルカの群れがパニック状態となり散り散りに。全員が無事超高級魚を手にする事が叶った。
  2. かつて東伊豆で行われていたイルカ漁にはイルカを港に追い込むための専用器具があった。内部をオイルで満たしたクラリネット状パイプで、叩くと独特の音が出る。漁の際はこれを海中に差し込んで音が出て、これを嫌って逃げるイルカの群れをコントロール、最終的に港に追い込み捕獲したと言う。
    何れも「音」がキーワードなので最終的には音波発生装置と言う事になろうが、「長めの金属パイプを用意して鉄錘で叩く」だけでもイルカ被害の軽減は期待できそうだ。



キンメダイ料理

釣人のみならず、世間一般に広く「高級魚」と認知されるキンメダイ。静岡県稲取では古くから祝魚として用いられ、現在は釣りでも、観光でも「伊豆の代名詞」的存在としても過言ではない。
脂の乗った白身で真っ先に連想されるのは「煮付け」だが、刺身(中型はゼラチン状になる表皮の食感と、皮と身の間に脂が残る「湯引き」仕立てが美味)や鮨、焼き物(塩焼き以外に塩釜焼・腹に香草を詰め、オーブンで丸焼き等)、味噌仕立ての鍋、西京漬けや干物等の保存食と様々な調理が可能。
脂の乗りが今一つならムニエル、アクアパッツァ、ブイヤベース、シーフードカレー等の洋風仕立てや、空揚げして甘酢あんかけやチリソース和えなど中華風に調理しても良い。
ここではディープマスターお勧めのキンメダイレシピ4種を紹介する。

①湯引き
材料:皮付きの半身、若しくは柵/山葵/大根(ツマ)/人参(ツマ)/大葉

  1. 柵は表皮を上にしてまな板に置く。
  2. 表皮にまんべんなく熱湯を掛ける。この時布巾を掛けると均等に熱が回る。
  3. 氷水にくぐらせて粗熱を除いて水分を拭き取り、冷蔵。
  4. 充分に冷えた所で皮ごと引いて盛り付ける。
    ※皮を引かないので身との間にある脂を落とさず、脂の乗りが未熟な個体を生食する際にお勧めの調理。ゼラチン状になる表皮の食感も秀逸だが、あまり大型だと脂が強過ぎる、表皮が厚く口に残るなど「イマイチ」の場合も。

②塩釜焼
材料:丸魚(オーブンに入るサイズ)1尾/荒塩/卵白
調理

  1. 丸魚は鱗、鰓、ワタを除いた丸ごと1尾を用意する。切身では塩が効き過ぎ、この調理には向かない。
  2. 荒塩に卵白を混ぜ、ペースト状に練り上げる。塩1㎏に対して4ヶ分の卵白が目安。
  3. 天板にアルミホイルを敷き、ペーストをのばす。魚を置いたらホイル端を魚なりに絞り、上から残りのペーストを被せて魚を塩釜で包み込む。
  4. 更にアルミホイルを被せ、230℃のオーブンで30~45分(魚のサイズで調整)焼く。
  5. 塩釜のまま食卓に出し、食べる直前に釜を崩す。松葉等を添えると更に引き立つ。柚子やカボスを絞って食す。

③西京漬け
材料:
切身/西京味噌/味醂/日本酒/塩

調理

  1. 切身に軽く塩を振り、3時間冷蔵する。
  2. 西京味噌500gに酒・味醂各50ccを加えて練り上げ、味噌床を作る。
  3. 切身の水気を拭き取り、味噌床に漬け込む。直接漬け込んでも構わないが、味噌・ガーゼ・身・ガーゼ・味噌の順に挟んで漬け込めば味だけが染込み、焼く時に味噌を落とす手間が省ける。
  4. 2〜3日漬けると食べ頃。味噌床から出して(直漬けは味噌を洗い落とし、水気を拭いて)1枚ずつラップに包み、冷蔵、または冷凍保存。
    ※キンメダイのみならずベニアコウ、アコウダイ、クロムツ、アブラボウズなど脂のある魚、メダイやマダラなどアッサリ系、何れも美味な「深海ターゲットにお勧め」の調理法。

④煮付け
材料:丸魚、切り身、兜の半割など、鍋のサイズや供する状態を踏まえて選択/濃口醤油/日本酒(又は味醂)/砂糖/根生姜又は粗挽き黒胡椒調理
調理

  1. 丸魚は鱗、鰓、腸を除き、盛付時に上となる左側に浅く切れ込みを入れる。味の滲み込み易さだけでなく、皮が破れて見栄えが悪くなる事を防ぐ配慮。肝は一緒に煮るので捨てずに残す。
  2. 水3:醤油1:酒(又は味醂)1:砂糖1/4を合せて良く混ぜ、生姜の薄切りを加えて強火で煮立てる。 生姜を粗挽き黒胡椒少々に置き換えても良い。味醂を使う場合は砂糖の量を減らすが、各調味料の割合はあくまで目安。 脂の乗ったキンメダイでは濃い目(水を減らしその分を酒や味醂に置き換える)が基本だが、最終的には各自の好みで調整する。煮汁は多目の方が焦げ付きなどの失敗が少ない。
  3. 汁が煮立ったら灰汁を掬い、魚と肝を入れて煮る。
  4. アルミホイルで落し蓋をする。煮汁が上側まで回り、かつ吹き零れない様に火力を調整。灰汁を除きながら10分程煮る。調理時間は魚のサイズや形状(丸・切身・兜)により調整する。


キンメの種類

キンメダイ

キンメダイ目キンメダイ科 Beryx splendens
分布:釧路沖以南~インド・太平洋域。大西洋、地中海
眼球内部に反射板を有し、光を受けると眼が金色に輝く事が和名の由来。
幼魚は背鰭の第2軟条が糸状に著しく延長する(画像参照)が、体長15~20cm程度で消失。 釣り上げた直後の体色は冒頭の美しいコントラストだが、時間が経過すると店頭で見慣れた全身緋色に変化する。他2種と区別するため、敢えて「本キンメ」と呼ぶケースもあり。
フウセンキンメとの識別は「後鼻孔が溝状で細い」点(画像参照)。
3種中最大となり、伊豆諸島沖では60cm以上、4kg超の個体も採捕される。

因みに本種水揚げ日本一の静岡県下田漁港では本種を
地キンメ…伊豆大島や新島周辺の特定海域など、神津島より北で日帰り一本釣り個体
島キンメ…神津島周辺から八丈島周辺の特定海域の日帰り一本釣り個体
沖キンメ…主に大型漁船(キンメ船)が八丈島沖~青ヶ島で数日間漁をし、水揚げする個体

と漁場により3種に区別(価格も異なる)するが、学術的には同一種である。

フウセンキンメ

キンメダイ目キンメダイ科 Beryx mollis
分布:相模湾以南~沖縄諸島
キンメダイと同一種とされていたが1959年に新種記載。一旦無効(キンメダイと同種)とされるも、93年に改めて別種と認定された「第3のキンメダイ」キンメダイよりやや体高が高く、 釣り上げた際に腹が膨れるのが「フウセン」の由来だが、確実な識別点は「後鼻孔が楕円形で大きい」点(画像参照)。
2尾が並んだTOP画像は「典型的な」フウセンキンメでキンメダイと識別は容易。対して1尾の画像は東京湾口沖ノ瀬で採捕した「鼻孔は間違いなくフウセンキンメだが、体高が低目で、腹鰭も短めな感じ」と京都大学の博士が画像に違和感を示した個体。この日は複数の同型を採捕したが、後日画像での「発覚」のため、DND検査には至らず。「今度採捕したら」の約束だが、この手に「あるある」の以降巡り合う事無く今日に至る。最近他魚種で取り沙汰される「ハイブリッド」の懸念も持ちつつ、再採捕を期す。
本種は神奈川県三浦半島では「アブラキンメ」と称しキンメダイと区別する船長もあるが、現状「フウセンキンメ」若しくは「トロキンメ」の名で明確に区別し、専門に狙うのは和歌山県南紀地区のみ。
キンメダイよりもやや深みに多い傾向で、反応(魚群)幅もキンメダイに比べて狭い印象。市場でキンメダイと区別することは殆ど無いが1kg未満でも脂の乗りがよく、トロ系白身好きには堪えられない美味。

ナンヨウキンメ

キンメダイ目キンメダイ科 Beryx decadactylus
分布:南日本以南。インド・太平洋域、大西洋、地中海
他2種より体高が高く側偏し、鱗も大きい事で識別は容易。その体型から釣りでは板キンメ、 若しくは平キンメの呼称が一般的。 鼻腔下に牛の角のような顕著な鉤状棘を有す(添付画像)ことから「角キンメ」と称す地域も。 やや浅みの250~300mに多く棲み、大型でも45cm・1.5kg程度。 現状専門に狙う事は少なく、中深場五目や深場アカムツ、アラなどのゲスト的色合いが強い魚。 他2種のキンメダイがピンク色で柔らかい肉質なのに対し本種はやや硬質の白身。基本的に食感が異なり食の評価は人それぞれだが、個人的には1kg以上の脂が乗った個体は評価に値すると考える。