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新作アルファソニックマルイカGZ その全てを大公開。

2016年 海人マルイカ150 ARゼロテン。
2017年 アルファソニック マルイカ 165XUL、150UL。

そして2022年 アルファソニック マルイカGZ 160UL、167XUL。

マルイカのゼロテンション釣法に対応するロッドとしてアルファタックルが発売した、いわば初代ゼロテンションモデルが2016年の「海人マルイカ150 ARゼロテン」、そしてその翌2017年にハイエンドモデルとして「アルファソニック マルイカ」で165XULと150ULをリリースした。その初期はゼロテン釣法を試みる人は多いとは言えなかったが、年々ゼロテン釣法は浸透し、もはや今では8割を超えるほどの人がゼロテンで釣りをしている。数年前からは、初めてのマルイカ釣りでもゼロテンという人が出てきた。そのようにマルイカ釣りの世界は大きく変化してきた。
そんな中、アルファタックルはマルイカ釣りの最前線からロッドのことを常に考え続けてきた。
「今、求められるロッドはどんなものか」
「どんなロッドを作れば、ビギナーからエキスパートまで幅広いレベルの人がたくさんのマルイカを釣ることができるのか」

そして2022年、アルファソニックマルイカシリーズの最新モデルとしてリリースしたのが「アルファソニックマルイカGZ」。ゼロテン&バーサタイルの160ULと、ゼロテンション専用167XUL。167XULでは、2017年の165XUL以来のスパイラルガイドを再び採用し、しかも今回は右巻き用RIGHTと左巻き用LEFTモデルをラインナップした。今まで積み上げてきたものを注ぎ込んだこのNEWモデルを詳しく解説する。

今回のNEWモデルは160UL(上)と167XUL(下)。
スパイラルガイドセッティングを採用した167XULでは右巻き用RIGHTと、左巻き用LEFTがある(画像はLEFT)。

今回のNEWモデルでの特徴は、ロングレングスとしたこと。ゼロテンション専用の167XULは167センチ、ゼロテン&バーサタイルの160ULでも160センチと、150センチ前後が主流となっている現在のマルイカロッドの中では長めだ。以前にも165XULというモデルがあったが、その時よりグリップレングスを50mmほど短くしているので、実質的なブランク長は167XULで7センチ長くなっており、アルファタックルの歴代マルイカゼロテンロッドでは最も長い。
長くした理由は比較的シンプルで、ロッドが長いほど、船の上下動があってもゼロテンションをキープしやすくなるからだ。もちろん、だからといって2メートルの長さにするわけにはいかない。長くするほどタタキと言われる誘いの動作がやりにくくなり、アタリも見にくくなる。激しいタタキを無理なく行うことができ、アタリもしっかり見える長さとして設定したのが167センチ。
160ULでじゃっかん短くしているのは宙の釣りでさらに激しくタタキを行えるようにしたかったからだ。

167XULと160UL。やや硬めの穂先を持つ160ULでは、ゼロテン釣法でも大きなメリットを生むことがある。
それゆえ、エキスパートクラスの人では160ULのような穂先を好む人がいる。

これまでアルファソニックマルイカの穂先素材として採用してきたチタン。金属素材であり、そのしなやかさと感度はチタンならではのものがある。
しかし、今回のロングレングスモデルでは金属であるチタンを穂先の素材としなかった。それは先端が重くなることによる、いわゆる「持ち重り」のバランスになってしまうことを避けたかったからだ。ロッドが長くなれば、その傾向は顕著になってくる。細身軽量なマルイカ竿では、実際の重量以上に持ち重りを感じてしまう。トータルで考えたとき、今回はチタンより軽量なグラスソリッド穂先のほうがメリットが大きいと考え、採用した。

上が167XUL、下が160ULの穂先。脱着式とした。
特に167XULでは、脱着式とした大きな理由がある。

グラスソリッドはこういった繊細な穂先の素材としては破損しにくいというメリットがある反面、素材そのものが持つ感度の面ではややチタンに劣る。しかし、それを補うために穂先部にトルザイトガイドをセットした。薄いトルザイトリングとチタンフレームによって非常に軽量なトルザイトガイドをセットすることで、穂先を軽量化して感度をアップした。穂先を軽量化することは、多くの人が考える以上に感度において大きくプラスに作用する。穂先のピンクカラーの部分がトルザイトガイド。穂先の先端部分だけに使用することで価格を抑えるという目的もあったが、実際にアタリを出す部分のみをトルザイトガイドにするだけで穂先部の感度をかなりアップできる。必要にして充分だ。

アルファソニックマルイカの特徴のひとつ、高い視認性を持つピンクトップ&イエロースレッド。今回のモデルではピンクカラー部分を短くしている。

※この画像はプロトモデル

ピンク部分を短くした理由は二つある。
ひとつは、それによってアタリが出る部分に意識を集中することができ、結果としてアタリを認識しやすくなること。
もうひとつは、ピンク部分をできるだけ曲がらないようにすることで、理想的な状態でゼロテンをキープする目安とできること。
上の画像は167XULにおける、ちょうど良いゼロテンキープ状態。わずかに穂先が曲がっているくらいが最もアタリが出やすい。これは160ULでも同様だ。ピンク部分より手前側まで強く曲がっているようだとゼロテンとしては曲がり過ぎになる。その逆に、ゼロテンにしようと意識しすぎると穂先がまっすぐのままになり、この場合、道糸が少し弛んでしまっている可能性があり、アタリが出ないばかりかオマツリの原因となるので注意。

160XUL、167XULのアクションカーブが上の画像。

167XULでは実際にこんな状態でアタリを待つことはないが、穂先の調子が分かる画像だ。160ULで宙の釣りを行う場合はもちろん上のカーブを描く。
両者を比較するとゼロテンション専用モデルである167XULのほうが軟らかい部分が長い。プロト段階では様々な穂先アクションを試したが、これより曲がる部分が長いと掛け遅れが多くなり、カーブの頂点を数センチずらしただけでアタリの出方が悪くなるなど、試行錯誤を繰り返して最終的な答えにたどり着いた。
穂先の根元くらいから、バット部分までは張りを強くしている。タタキなど誘いの動作が行いやすく、アワセる際にもおおげさにロッドをあおらなくてもしっかり掛けることができる。このことはゼロテンでも宙釣りでも変わらない。

160ULの穂先は、宙釣り用モデルの名作148MHの穂先をゼロテンもしやすいようにモディファイした。148MHは、宙釣り用として開発したが非常に繊細な穂先を持っており、部分的な軟らかさ・しなやかさはゼロテンションモデル同様と言えるくらいだ。当然、小さなアタリがしっかり出る。そんな148MHでゼロテンを行うと、驚くほどアタリが分かりやすい。しかし、曲がる部分が短いので慣れないとゼロテンションをキープしにくい。また、148センチと短めなので波や風がある条件ではゼロテンキープがさらに難しい。148MHの高感度をキープしながらもゼロテンション向けに曲がる部分を少し長くしたのが、今回の160ULの穂先だ。ベースが148MHなので、当然宙の釣りをこなせる。160センチという長さなのでゼロテンが非常にやりやすい。今までのアルファタックル・マルイカロッドで最強のバーサタイルモデルだと言えるモデルだ。

150UL、145UL、148MHと歴代モデルを愛用してきたフィールドスタッフ・井上直美さんをして「このロッドはなんでこんなにアタリが出るの?」「このロッドを使いだしてから今まで見えてなかったアタリが見えるようになりました」と言わしめたのが、今回の160ULだ。
2022年シーズン中盤に、160ULの製品版サンプルを渡して以来、各地の船宿で竿頭を取りまくっている彼女。それまでも充分にトップレベルだった彼女ですが、160ULを手にして以来、完全に1ランク上のレベルになっています。船上やイベントで会うことがあったら、ロッドのインプレッションを聞いてみてください。

次に167XULのスパイラルガイドについて説明したい。
167XULではメインブランク部のガイドは上の画像を見て分かるとおり135度までしか回していない。手前のバットガイドは上向き、次から45度ずつずらしている。
4個回せば180度で、通常のスパイラルセッティングはそうなるが、今回は3個で135度までにしている。

その理由は、穂先部の取り付け方によってそれぞれの釣り人にあった穂先角度にセッティングできるからだ。上の画像はどちらも同じ167XUL/LEFTモデルだが、左はメインブランク先端のガイドと穂先のガイドを直線でセットしているためトップガイドでも135度のまま。右ではメインブランクと穂先部を45度ずらしてセットしており、トップガイドはバットガイドから180度回した状態となっている。

上の画像のようにリールを斜めにしてグリッピングする人は、穂先部とバットのガイドを直線でセットする=135度までしか回さない=のが良い。リールを真上にする人は穂先部を45度回してセットして合計180度回す。どちらの場合でも、アタリを待つ状態でトップガイドが真下になるようにセットするのが推奨セッティング。
スパイラルガイドセッティングのメリットとしてラインが絡みにくいということが良く言われる。絡みにくいというより、よほどのことがなければまず絡まないと言ってもいいだろう。小さなガイドが多くタタキ動作が激しいマルイカでは、ライン絡みのトラブルがないことは非常に大きなメリットだし、ロッドの破損率も極端に下がる。
そして、スパイラルガイドと関連して語られることが少ない「感度」という面で見た場合にも、実はメリットがある。スパイラルセッティングでは、ガイドもしくはブランクのねじれによる力の分散化が極端に少ないためロッド本来のパフォーマンスが発揮できるわけだが、それはアタリの出やすさ、すなわち感度面にもプラスに作用するのだ。横方向に力が逃げず、基本的には下方向の力だけが素直に働く。下方向へ垂直にラインが出る船釣りでは、穂先部のガイドが下に向いていることはアタリの出やすさ、そしてアタリをより大きく表現することに直結する。

やや余談だが、私(テル柳沢)のグリッピングは写真のように人差し指をリールとフロントフードの間に挟み込む。これだと、かなり激しいタタキを行っても安定してグリップできる。挟み込んでいるので、力をあまり入れなくてもロッドを落とす心配がない。アルファソニックマルイカで、フロントフード部を金属ではなく軟らかい素材であるEVAにしているのは、このグリッピングに対応するためだ。金属だと指が当たって痛くなってしまう。
宙の釣りではロッドをほぼ真下に向けた状態でタタキを行うと、他の構えではできないほどのスピードで激しく誘うことができる。いっぽう、ゼロテンではそこまで真下に向けることはあまりない(潮の状況にもよる)。穂先を真下にしてタタキを行ってからゼロテン状態=水平に近い位置にロッドを戻すとタイムラグが生じ、その間のアタリを逃してしまうからだ。
極端に軟らかいハンドメイドの穂先にしている人は、穂先をラインの一部と見てアタリを捉えるのでロッドを真下に向けてタタキを行い、そのままアタリを見る場合があるが、それはアルファソニックでは向いていない(ゼロテンロッドでは、アタリの見かたやロッドの構えは穂先の調子によって異なるので、一概には言えない。あくまでもアルファソニックでは向いていない、ということ)。

グリップエンドの長さは295㎜。
上の写真のようにヒジを抜くことができ、巻き上げのときはヒジに当てることができる長さ。
従来モデルの158XUL/145UL/148MHと同じ、テクニカルに誘えるリアグリップの長さ設定だ。

この画像は2021年6月。仕様がほぼ煮詰まった頃のプロトモデル。
ここまでが長かった・・・。
2020年年末からスタートした2020-21シーズン。実際には今回のアルファソニックマルイカGZの開発はその前のシーズン(2019-20)に着手していたので、21年春には80%くらいまで出来ていたが、細かい調整にかなり手間取った。
ズバリ決まった! と一回思った穂先を「もう少し良くできるかな?」とわずかにいじったところ、大失敗。またまた戻す・・・そういったことを繰り返した。

アルファソニックマルイカGZの実釣解説動画を撮影した静岡県・宇佐美の二階屋丸さんにて。

最終仕様にしたプロトができたのは2021年も8月半ばになってからだった。撮影した宇佐美では、前週まで堅調だったのが、撮影数日前から釣果が落ちてしまい、かなり厳しくなってしまっていた。
シーズン終盤のこの時期になると、もし撮影が流れてしまうと再撮影ができない可能性がある。釣りが成立しないほど釣果が落ちてしまう場合だってある。しかし動画はしっかり成立させることができた。実釣解説動画をぜひご覧ください。

【ゼロテン】マルイカ・最新ゼロテンションモデル登場【アルファソニックGZ】


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最後に・・・

初めてマルイカ・ゼロテンションロッドを作るべく、それに着手したのは2014年シーズンの後半だった。世の中にゼロテンロッドがほぼないと言える頃だった。
湾フグ竿を使って釣果を出している人がいた。
穂先の軟らかさを試すためにクロダイのイカダ竿も使ってみた。
既存のロッドのバットと、いろいろな穂先を組み合わせてみた。
もちろん、多くの穂先を手で削った。
2014年は、そんな様々な試行錯誤で終わった。

翌2015年。アルファタックルが作るゼロテンロッドとは、どうあるべきかが見えてきた。
プロトを作り、試し、プライベートな釣行も全てがテスト。
そのシーズンの終わりに、これだ。というものができた。
そしてそれが、2016年の新生海人シリーズのひとつとしてデビューし、話題を呼んだ。
翌年2017年にはアルファソニックが登場して大人気を博し、マルイカ船でピンクトップがずらりと並ぶ光景も見られた。

そうやって大きな人気もいただいたが、その後ももっと何かできないか、常に試行錯誤した。
これでいいのか。いやもう少しやってみよう。
しかしシーズンが終わるまでに結論が出せるのか・・・そんなことを繰り返し、マルイカロッドを考え続け、いくつかの追加モデルも発売した。
ふと気が付けば2022年。
これまでの経験を盛り込んだ今回のアルファソニックGZを、ぜひ使ってみてほしい。そして使い続けてみて欲しい。1シーズンが過ぎて、ロッドを使いこなす頃には確実にワンランクアップしていると思いますよ!