ライトタックルの「タックル」を考える
前回まで「ライトタックルフィッシング」の概要を解説してきましたが、この辺りで具体的な「タックル」についてお話したいと思います。重複しますが、「ライトタックルフィッシング」は従来よりも細い道糸を使う事でリールが小型となり、それに伴ってビシ、若しくは錘が軽量化。その結果としてロッドもライトになる、という仕組みです。私達は「道糸2号以下」や「専用ビシを使う」でなくとも、従来よりも各タックルが軽量化されていれば「ライトタックル」と呼んで差し支えないと解釈しています。さて、タックルを語るにあたり、外す事が出来ないのが「LTフィッシング」の立役者と言えるPEラインの存在です。今回はPEラインについてお話しましょう。 PEラインとは
「高分子量ポリエチレンライン」がPEラインの正式名称です。原糸の商品名は「ダイニーマ」。オランダのDM社と日本の東洋紡が共同で登録商標を持っており、現状国産PEラインは100%この素材で生産されています。沖釣り用のPEは「8本角打ち」が基本ですが、細物は「4本」で編まれているのが主です。PEラインの強度表示はメーカーによって若干の差が有ります。同じ原糸、同じ製法で製造する糸が、なぜメーカー毎に強度表示が異なるのか。これは単位長さあたりに何回交差して組み上げるか(基準は1インチ)という「ピッチ」(回数が多いほど硬くなり、少ないほど強度が落ちない)と、メーカー毎の表示方法(テスト平均値・最強値どちらを表示するか)によるものです。これとは別に、現在販売されているPEには「SK60」と「SK71」の2種のダイニーマ原糸で製造された物があります。前者はノーマルタイプ、後者はLTフィッシングで話題となっている高強度タイプです。参考までにあるメーカー発表の直線強力を掲載すると、SK60の1号が6.8s、1.5号9s、2号で13s。SK71ではそれぞれ8.5s・11.4s・13.2s。数値的には大物釣りにも充分対応できる強力を持っています。
PEラインの特性
次にPEの特性を箇条書きで示してみましょう。この中には道糸としての「長所」「短所」がそれぞれ含まれています。
@従来の2〜2.5倍の直線強度
1デニールあたり(9,000mで1gになる繊維の細さ)の直線強度・g/D(グラムパーデニール)がSK60で30g以上(東洋紡の公表)、SK71ではSK60の20%以上強力アップ。この数値が「従来の2〜2.5倍の直線強力」のベースです。PE自体の基本的強度ももちろんですが、PEは比重が軽いのでチップ1gの体積が大きく、その分1デニールの太さも太くなるという「トリック」的部分もあるのです。例えば、最高級ナイロンのg/Dは10g。比重1.72のフロロカーボンでは6〜7gと意外な数値になります。反面、結び目を作ると強度は極端に低下し、直強力に対して最大65%のダウンとのデータもあります。しかし、現実問題として道糸にはリールスプールへの接続と先端部分、最低2ヶ所の接続ポイントが必要となります。そこで重要なのが「結び方」です。
PEラインの接続方法
スプールへの接続は、そこまで糸が出たら現実的に釣りにはならなので、乱暴な言い方をすればラインが解けさえしなければどんな方法も良いのですが、先端部分は可能な限り直線強力を維持する「結節法」を選択しなければなりません。最も直線強力を維持できるのは別糸を編み付けて先端に輪を造る「蛇口加工」です。先端部分の輪になった部分が別糸でガードされ、接続金具を脱着する際にもPE本体が傷付きません。但し、製作には網針と、それなりの時間も必要です。道具不要で、強度ダウンの低い方法は糸を絡めて固定する「三つ編みチチワ」です。慣れれば現場でもスピーディーに対応できます。先端部分に製作時の切れ端を編み付けて「摘み代」を造ってやれば、接続金具脱着がスムースで、ラインを傷付ける事も有りません。この「摘み代」はライン本体に結び目は造っていない(輪に潜っているだけ)ので、チチワ部分の強度には全く影響しません。もう一つの「結び」の必要性はライン足し巻きを含む「道糸切れの接続」です。「足し巻き」に関しては上記の「三つ編みチチワ」を両端に造り、「箱掛け」するのが強度的には高いのですが、ラインスプール、若しくはリール本体を潜らせる事が可能なサイズの「輪」を造らなければならず、道糸にダブルライン部分が出来てしまうのが欠点です。又、釣りの最中に仕掛が海中にある状態でラインを接続しなければならないケースではこの方法は使えません。「三つ編みチチワ」に比べると強度はダウンしますが、「編み付け電車結び」がスピーディー、かつ安心な方法です。先ず「電車結び」で接続しますが、この時両端を長めに取っておき、結節後に十数回程編み付けを施します。最後に編み付けの端を焼き固める事で、Dで述べる「滑りの良さによるスッポ抜け」を抑える事が出来ます。 Aほとんど伸びがない
底ダチ、アタリとも明確となり、ナイロン・テトロン道糸とは異次元の世界です。しかし、糸自体にクッション効果がないので、従来の感覚で巻き上げると口切れなどの「バラシ」に繋がってしまう事、根掛りを竿で煽るとダイレクトにショックが伝わり、竿にダメージを与え、最悪破損させてしまうリスクもあります。特に注意したいのは根掛りの処理です。ゲージが細く、高強度な事もあり、素手で引っ張ると手指を切ってしまいます。必ず指サックやグローブ、根切り器を使用し、決して手指にラインを巻きつけない事が肝心です。
B水分を吸収せず、染色できない
水による劣化がない、は釣糸として理想的です。但し、糸を「染色」ができず、「着色」するしかないので色落ちが顕著なのはデメリットです。色落ちした塗料が別色部分に被ってマークが見難くなる場合、ロッドのグリップ部分を汚す場合があります。 C紫外線・塩分による劣化がない
海水使用のラインとして理想的。但し乾燥して結晶化した塩分が繊維の間に溜まった場合にはヤスリの作用をして強力ダウンの原因になる可能性があるので、使用後は速やかにリール(特にスプール部)を真水で洗浄するなどの手入れが大切です。 D滑りが良い
糸同士を接続する際、単純な電車結びやブラッドノットでは抜けてしまう可能性が有ります。先糸の使用に問題があるのは、この点と@の結接による大幅な強度ダウンが原因です。先に述べた「結び方」を参考にして下さい。 E比重が軽い(0.97)
比重が軽いため、「糸フケが出る」「降下時間が遅い」が発売当初デメリットとされました。しかし、従来よりも細い号柄が使えるために実釣での差は感じられず、現状は比較対照するラインが使用・販売されなくなってこの件は話題にも上らなくなりました。 Fしなやか
しなやかというのは、逆に言えば「腰がない」ため、絡みやすく手釣りには不向き。バックラッシュやオマツリした際など、解き難いのがデメリットです。PEに限らず、絡んだ糸は水を掛けると解き易くなります。 G融点が低い
PEの融点は120〜150℃。実釣時には何ら問題ありませんが、リールに新品のラインを巻き込む時には注意したいポイントです。ラインに直接テンションを掛ける場合は濡れタオルで掴む、水を掛けながら、などを心掛けて下さい。 次回はLTロッドについてお話したいと思います。 |